へうげもの(文庫版)(四服) の商品レビュー

山田芳裕(著者)

2020/10/01

「政治と文学」の関係は、近代以降ぼくたちの理念に根ざした大きな命題なわけですが、本作はそれにどのように向き合っているかは非常に懐疑的である。
古田織部の奇抜な振る舞いと、羽柴秀吉の機転のきいた振る舞いのどちらが芸術的で、どちらが政治的かなんて判断がつかない。
「わび」という新たな価値を日本に根付かせたい千利休と、そのために妥協ができない山上宗二は確かに芸術家だと思う。ただ古田織部は政治家であり芸術家ではないのではないか。
彼は「数寄の天下一」を目指すだけで、利休や宗二のように理念はない。だが本作は利休や宗二と同列に古田織部を並べてしまっている。これから変わるのかもしれないが、いまのところ何とも違和感だ。

2020/04/26

独特の歴史観を持ったへうげもの。
秀吉が、信長を暗殺した説である。
信長のお供　弥助が目撃をした。
弥助は、それを　織部に伝え、そして千利休に問うた。
信長の暗殺に、千利休は手を貸したのかと。
千利休は、信長の泊まる本能寺に、大量の爆薬を寄進した。
それで、本能寺が粉々になった。
待庵の暗黒性がよく出た　弥助とのお茶。

それにしても、なぜ信長の暗殺に、千利休が関わったのか？
もともと、秀吉に対して、違和感があったが、
信長との関係では、良好ではなかったのか。
少なくとも、本能寺の変では、千利休は秀吉とつるんでいた。

織部は、秀吉に　お茶の席で、信長を殺したことを聞く。
あまりにも、あっけらかんとした告白に、
「乱世に生きるものとしての非情さに感服する」と敬服し、
秀吉に従うのである。秀吉は、「非常さではなく努力といえ」という。
織部は、秀吉の孤独を「頂に登る人間の宿命」と理解するのだった。

マンガワールドのへうげもの的歴史観が炸裂するのが面白い。

安土城を黒から白に塗り替えた　光秀。
それを見た千利休。光秀の侘びを知る。
そして、白となった安土城を燃やせと主張する。

徳川との和解交渉に、望んだ織部。
飯が山盛りに驚く。伊賀焼の小皿に目をつける。
家康に、織部の存在感を見せつけることになる。
織部は、功により、３万5000石となる。
そして、織部十作として、陶器職人のパトロンとなった。

千利休は、朝顔の一輪にて、
秀吉に　信長を真似てもしょうがないと諭す。
秀吉は、黄金の茶室を作り、それが移動式なことに織部は驚く。

秀吉が、「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」

歴史を編集しながら、その人物に新たな解釈を加える。
実に面白い趣向だ。

2018/12/11

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2011/06/14

古織がひょうげている間に（？）秀吉は九州に兵を進め、キリスト教を禁じ、大茶湯を開く・・・小中学校の歴史の授業ででさえ習うだけに、「教科書の中のできごと」として知っているだけの戦や事件がいろんな人の感情を伴うモノであると体感出来てみごと。