沈黙の宗教 の商品レビュー
日本人の考え方のルーツを儒教の宗教的側面から論じている ○儒教はとにかく"家"を大事にし、それ故他者に宣伝することも教団をもつこともしない ○仏教が輪廻転生を説くのに対し、儒教の根核は孝であり、孝とは"生命の連続"を自覚することである。...
日本人の考え方のルーツを儒教の宗教的側面から論じている ○儒教はとにかく"家"を大事にし、それ故他者に宣伝することも教団をもつこともしない ○仏教が輪廻転生を説くのに対し、儒教の根核は孝であり、孝とは"生命の連続"を自覚することである。 →日本人は孝の考えが根付いているが故に臓器移植に抵抗を覚える (連続性が断たれることへの嫌悪) 一方で、輪廻転生の国々から大量の臓器提供が行われることは、その死生観からは不思議でない。 (輪廻転生するのであれば、現世の肉体は不要となる) →天皇家は"生命の連続"の代表的表現となるため、守り継がれるべきである ○「儒教の祖先祭祀は"自己の永遠化"願望からくるものだ」とする説は、ドーキンスの『利己的な遺伝子』における考えとも一致する 自分の考え方、価値観の一部にも確かに儒教が根付いているなと思った 現代の日本は、欧米の個人主義的な考えが浸透してきている一方で、根底に儒教の教えが流れているのは否めない だが20年前に書かれたこの本で、著者はとにかく儒教を大事にすべきだ、個人主義はいずれ廃れるに違いないと述べていたが 20年前たった今むしろより強固になっているのではないか ただ、子孫の繁栄を望む上では儒教の考え方は尤もであり、そこは安易に切り捨てるべきではない (それを元に著者は「儒教は"共生の幸福論"である」とという) また個人主義と言っても、本当に個人主義の意味を理解できているのか、宗教を教えない日本の教育を見ると疑問を持つのも妥当だと思う "当たり前"という感覚が人の思考を鈍らせることを再認識するいいきっかけになった ✏新宗教の稚拙な教義の中に一貫して流れているものは、儒教や仏教の本質をかぎとり、それを抜き取って組み立てている凄さである ✏利己主義には大いなる道理に基づいての自律もなければ、自立もない。あるものは自己の利益の追求だけであり、利益に依存する受け身なものである。 真の自立した個人主義者であるならば、己の論理に忠実に従い、時には尊い生命を捧げることもありうる
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日本人を含む東北アジアの人々のアミニズム的伝統が投影された儒教は、その後、西からもたらされた仏教や西洋文化の移入の仕方にも影響。 位牌、仏壇、墓が日本人の心にとってどのような意味があるのかから始まり、最終チャプターは書き下ろしではあるものの、個別の論説のような印象。
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第1章 儒教の深層―宗教性 第2章 儒教の構造 第3章 儒教の表層―道徳性 第4章 儒教の世界像 第5章 儒教から見た現代
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孔子以前の儒教において中心的であった、「宗教性」を核に儒教を解釈し、その上に構築された道徳性の本来の在り方を探るという本書の試みは、儒教に対する知識が不足していることもあってか、非常に新鮮であり、中国文化全体に対する印象、ひいては日本文化を考察する上での基盤の全てが覆される思い...
孔子以前の儒教において中心的であった、「宗教性」を核に儒教を解釈し、その上に構築された道徳性の本来の在り方を探るという本書の試みは、儒教に対する知識が不足していることもあってか、非常に新鮮であり、中国文化全体に対する印象、ひいては日本文化を考察する上での基盤の全てが覆される思いであった。中でも、第5章における現代問題に対する儒教からの解答は、(著者の弁に多少独善的でマッチョな部分があることは否めないとしても)非常に切れ味鋭く、複雑な問題を解きほぐし、その宗教的側面に対してに対して解決の足がかりとするに十分な視座を与えてくれる。 そもそも儒教に対する理解が、キリスト教や仏教のような宗教で、孔子の言葉に弟子が後から解釈を付け足していった結果成立したのだろうなという程度のものであったので、実は孔子が教祖でなかったという事実だけで驚きであった。孔子以前の儒教における、現在生きている人間によって体現される祖先崇拝をとしての孝を中心とした道徳観、日々の生活やそこでの人間の付き合いを重視するという世界観はなるほど、今日の東アジアにおいても受け継がれている。著者は何度も礼は自然な感情に基づいていると指摘するが、そもそも自然に感じるということ自体が、我々に深く深く儒教が染みついているということが言えるであろう。 個人的には、墓と仏壇の関係に着いての著者の見解には胸のすく思いがした。日本の仏教が何だかよくわからないのはその通りで、それはそれで探求すべきなのだろうが、もともとの出自をたどるのが非常に強力な手法であることを思い知らされた。
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