連続討論 「国家」は、いま の商品レビュー
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杉田敦編、石川健治、市野川容、重田園江、萱野稔人、新川俊光、住吉雅美、諸富徹『連続討論「国家」は、いま 福祉・市場・教育・暴力をめぐって』岩波書店、読了。21世紀における国家の役割とは何か。国家と市場、そして市民社会の関係を、福祉・市場・教育・暴力という観点から多様な専門の論者たちが構想する。 派遣村、学力テスト、戦争の民営化など具体的なトピックから、「<福祉>連帯を育む政治をどう創るか」、「<市場>市場の暴走を管理するのは誰か」、「<教育>教育の分権化は国民の平等を掘り崩すか」、「<暴力>国家を国家たらしめているものは何か」を論じる。 福祉:「日本国憲法をいくらひっくり返しても、日本が共和国であるという規定は、残念ながらどこにもない。しかし、その前文は、確かに主権在民を謳っている。その第二五条も、この前文に帰属する。福祉国家を動かすのは結局のところ、民主主義」(市野川) 市場:「国境を越えて利潤を求める市場の論理の野放図な展開に歯止めをかけると同時に、過去からの国家統制の遺産を整理し市場へと開放する」(重田、市場や国家に対する楽天的信頼を更新することで、新しい役割を賦与できるのではないか。 教育:公教育が教会からの自立という経緯に眼を向ければ「公教育の成立と『国家』の成立は、同じ効果の表と裏の関係である。そうした意味でも、『教育』は、たしかに国家論の核心をなしている」(石川。国家の意義を認めた上での新しい自立が必要か。 暴力:ネグリ、ハートでさえ国民国家の存在を否定できない(正統性と権威の拠点)、とすれば今後注目すべきは「グローバル化の進行の中で、スリム化する国家と切り離された暴力はそれぞれどのような道を進むのだろうか」(住吉 「企業という組織形態が能率的ですぐれたものと見なされる一方で、政府が非能率の極みとして侮蔑されている時代」だが、果たしてそうなのか。政府の責任放棄と民間万能論を退け、そのイメージを更新することで国家は本来の役割へリソースを注ぐべき。本書はそのたたき台になる一冊。
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とりわけ批判的に論じられがちな「国家」について、さまざまな研究者の視点から論じられる座談会。最初の「福祉」は面白かったけど、次第に息切れがしてきた。
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福祉・市場・教育・暴力についてその筋の専門家と杉田氏たちの討論 個人的には暴力と教育がたいへんよかったと思う。
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