1,800円以上の注文で送料無料

近世日本思想の基本型 の商品レビュー

4

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    1

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2020/06/12

相良亨のもとで日本思想史を学んだ著者の論文集です。 本書は二部構成となっており、第二部は本書のタイトルになっている近世の思想家たちにかんする論文が収録されています。とりあげられているのは、伊藤仁斎を中心に、太宰春台、大塩中斎、荻生徂徠となっています。 第一部は、ザビエルらのイ...

相良亨のもとで日本思想史を学んだ著者の論文集です。 本書は二部構成となっており、第二部は本書のタイトルになっている近世の思想家たちにかんする論文が収録されています。とりあげられているのは、伊藤仁斎を中心に、太宰春台、大塩中斎、荻生徂徠となっています。 第一部は、ザビエルらのイエズス会と日本の僧とのあいだで交わされた「山口の討論」や『沙石集』などにおける「正直」の概念、『甲陽軍鑑』における「天道」の概念などの検討がおこなわれています。「正直」や「天道」といったテーマは、著者の師である相良亨が精力的に論じた問題で、著者の議論もその枠組みを引き継ぐものになっているように思います。 第二部では、伊藤仁斎の性善説解釈や「恕」の解釈を通して、その思想の中心へとせまる試みです。このほか、大塩中斎における「帰太虚」についての論考でも、著者の議論におけるある一定の志向が認められるように感じられます。それは、日常において生きて働く倫理の場にどこまでも寄り添いつつ、それを突き抜けるような契機を見いだすことといえるように思えるのですが、はたしてこうした理解がどこまで著者の意図を正しくつかんだものであるのか、やや自信がもてずにいます。 徂徠の学問の方法について論じた論文は、内田樹の教育論にも通じる考え方が見られるように感じました。

Posted byブクログ