国破レテ 失われた昭和史 の商品レビュー
著者は大正12年生まれ。広島陸軍幼年学校、陸軍予科士官学校、陸軍士官学校を卒業し近衛歩兵連隊に配属、後に信州の陸軍士官学校に転任し同地で終戦を迎えている。外地に出征することなく終えたあの戦争とは何だったのか、復員後は出版された関連書を貪るように読んだが、「日本人だけが特別馬鹿で、...
著者は大正12年生まれ。広島陸軍幼年学校、陸軍予科士官学校、陸軍士官学校を卒業し近衛歩兵連隊に配属、後に信州の陸軍士官学校に転任し同地で終戦を迎えている。外地に出征することなく終えたあの戦争とは何だったのか、復員後は出版された関連書を貪るように読んだが、「日本人だけが特別馬鹿で、戦争になると日本人だけが格別残虐なことをする」という実体験とはかけ離れた読後感しか得られなかった。そこで、「極東軍事裁判史観」や「唯物史観」などのイデオロギーを排し、昭和の日本人を世界史、人類史の中でできるだけ客観的に描こうと自ら執筆して成ったのが本書である。物語は日本が世界に人種差別撤廃を訴えたパリ講和会議に始まり、世界恐慌と政治的混乱の中で呻吟しながらついに一敗地に塗れ、再び国際社会に復帰するまでを一気呵成に描く。抑えた冷静な筆致だが、その裏には真実を明らかにしたいとの情熱が迸っている。高校時代に読んだ時には、まさに目の前の霧がようやく晴れたような気がしたものだ。出版元のサイマル出版会は既に廃業したが、2009年に二玄社から復刊されている。
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