日本人のためのアフリカ入門 の商品レビュー
毎日新聞のアフリカ(サハラ以南)専門家による、ちょっと変わった入門書。というのは、網羅的に地理・歴史・政治・経済などを記述しているのではなく、日本人が一般にイメージするアフリカに対するアンチテーゼ的な視点で記述。 著者自身のアフリカに対する愛情から、アフリカを色眼鏡でみるのでは...
毎日新聞のアフリカ(サハラ以南)専門家による、ちょっと変わった入門書。というのは、網羅的に地理・歴史・政治・経済などを記述しているのではなく、日本人が一般にイメージするアフリカに対するアンチテーゼ的な視点で記述。 著者自身のアフリカに対する愛情から、アフリカを色眼鏡でみるのではなく、透明なメガネでみて欲しいという思いから、内容がこうなったとの事(実際は彼の色眼鏡ですね)。 私も、観光による2回のドライブ旅行で、南アフリカとボツワナを観てまわりましたが、それ以来すっかりアフリカの魅力に取り憑かれ、機会があればまた行きたいと思っている方ですが、彼の著作は、今のアフリカをある面、的確に表現できているとは思います。 今のアフリカを知りたい人、まずは、この本を手にとって、更に彼自身が最後に紹介してる本、そして彼自身による他の著作「ルポ資源大陸アフリカ」などを読むと、よりアフリカに対する理解が深まるのではないかと思います。 僕自身、この本を読んで一番興味深かったのは、アフリカ諸国との関係を通じた中国の日本に対する様々な妨害行為です。大学時代、中国文化が専攻で、北京に短期留学した時、第3世界のリーダーシップ国を自認していた80年代の中国は、多くのアフリカの留学生を受け入れるなど、中国とアフリカとの関係は深い。 特に中国は政治体制が中共独裁ということもあり、アフリカに多い独裁国家との親和性が高いことから、日本をライバル視した様々なアフリカ諸国に対する対日妨害工作が本書には描かれており、この点はちょっとビックリでした。 二番目に興味深かったのは、アフリカに対するアフリカ・スキーマ。大学時代の講義で孫文の著書「建国方略」を読んで、彼の云う三民主義の民主という意味「支配者(孫文)の被支配者(中国人民)に対する視点」は、まさに日本人のアフリカ人に対する視点「アフリカスキーマ」と一緒なんですね。民度の低い中国人民のために、彼らがちゃんと生きられるように中国を変えなけれないけないというのが、孫文の視点。つまり、西洋的な個人の自由や自立から発した民主主義ではないんです。 白戸さんが警告するアフリカを無意識的に対等の立場でなく、援助すべき可哀想な国々の人たちという視点、つまりアフリカスキーマに陥ることの危険性を彼は訴えているのが印象的でした。
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多くの日本人の「遠い場所」「援助対象」「とかくネガティブ」なアフリカ観を中和しようとする本。 サハラ砂漠以南のアフリカのことをよく知らないひとにとっては、最初に読むと中立的な視点を持てるかも。 著者のおだやかな文体も参考になります。 ただ、第1章で『あいのり』の捏造を批...
多くの日本人の「遠い場所」「援助対象」「とかくネガティブ」なアフリカ観を中和しようとする本。 サハラ砂漠以南のアフリカのことをよく知らないひとにとっては、最初に読むと中立的な視点を持てるかも。 著者のおだやかな文体も参考になります。 ただ、第1章で『あいのり』の捏造を批判しておきながら、結局著者自身もアフリカの少年に2次被害を与えてしまっている点は、けっこう残念でした。。
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アフリカに対して貧困とか紛争とかの固定観念が定着しすぎていて、アフリカの現状に意識が追いついてない面に気付かされ、目から鱗でした。 アフリカという所にはいつか行ってみたいと考えて勉強しているつもりでしたが、まだまだ頑張れることはいっぱいあるんだなと思えました。
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アフリカといえば,貧しい,部族対立が深刻,遅れているという固定観念がある。毎日新聞の特派員として4年間ヨハネスブルクに勤務した著者が,こうした負のイメージの誤解や誇張を検証。 第一章で,人気番組「あいのり」のエピソードを検証。なんだか限りなくやらせに近いようだが,結局記事にす...
アフリカといえば,貧しい,部族対立が深刻,遅れているという固定観念がある。毎日新聞の特派員として4年間ヨハネスブルクに勤務した著者が,こうした負のイメージの誤解や誇張を検証。 第一章で,人気番組「あいのり」のエピソードを検証。なんだか限りなくやらせに近いようだが,結局記事にするのは断念したらしい。エチオピアの孤児院で,男の子が「あいのり」メンバーの女子学生を見て,故郷の姉を思い出し,家を探すという話。孤児院から故郷までの距離が誇張されていたことに,アフリカ通の著者らが気付き,その男の子を探して放映された映像を見せる。それで,女子学生を見て姉を思い出したことも,両親が銃撃戦で亡くなったというナレーションも,事実無根であることがわかった。 アフリカについては,80年代から始まったメディアによる貧困撲滅キャンペーンの影響が尾を引いて,日本人の間に貧困・紛争という固定観念が定着している。こういった番組も,それを強化する方向で編集される傾向がある。孤児院の先生の指示で撮影に協力することになったにすぎない男の子に,「笑顔のない少年」とレッテルを貼り,4時間あれば着く故郷までの道のりを2日かかると誇張。そうやってアフリカの人々の不遇,悲惨さを強調することで視聴者の歓心をひく。その根底に,アフリカを見る視点の非対称性がある。援助されるべきかわいそうな存在。そこにはアフリカの現実を真摯に見つめようとする姿勢はみじんもない。 日本ではそもそもアフリカの報道が少ないが,ときどき急にまとまった情報が入ったりする。これはどうもアフリカと歴史的つながりの深い欧米のメディア(アフリカを注視してる)が,大きな事件などがあって盛り上がると,それに追従して日本でも報道が行なわれるせいらしい。ジンバブウェのムガベ政権の圧政が取り上げられたのも,旧宗主国のイギリスのメディアが,英国系住民の既得権が脅かされるのを看過できずに大きく報道し,それをイラク戦争などで借りのあるアメリカも支持,英米での扱いが大きくなったことで国際問題になったそうだ。 またアフリカの紛争の原因はよく「部族対立」という語で括られるが,これも二重の問題をはらむ。「部族」という未開を連想するコトバを用いること(筆者は「民族」とする)と,背景にある政治的な権力闘争という側面を捨象してしまうことだ。民族の違いだけでは襲撃・暴力は起きない。 今世紀に入って,アフリカはその埋蔵する資源をベースに,急速な成長へ向かっている。改革開放の中国をはじめ,アジアや中南米の国々が80年代から劇的な経済成長を遂げるが,そのころのアフリカはまったく停滞していた。長い間,飢餓と貧困の大陸だったアフリカが,世界の資源供給地として注目を集めてきている。その大きなプレイヤーとして,中国が伸びてきている。日本のアフリカ外交も正念場。
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収穫は、記者は素晴らしくても会社側が悪い体制ならばよい記事が提供されない、と分かったことである。重要な記事であっても本社は拒否して必要な情報は得られないのである。記者はしっかりしている。問題は新聞社である。新聞社の古い体制が無難で、都合の良い記事しか載せない。これを気づかせてくれ...
収穫は、記者は素晴らしくても会社側が悪い体制ならばよい記事が提供されない、と分かったことである。重要な記事であっても本社は拒否して必要な情報は得られないのである。記者はしっかりしている。問題は新聞社である。新聞社の古い体制が無難で、都合の良い記事しか載せない。これを気づかせてくれたので、読む価値があった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
心を病んでしまう人も多い昨今の日本について考え込んでしまった。 アフリカに長く駐在した毎日新聞記者による愛情あふれたアフリカの実情レポート。まさに「目から鱗」。とかく「開発途上」「貧困」「紛争」「人種差別」など悲惨なイメージが先行するアフリカだが、住んでみると決して不幸ではなく、みんな楽しく暮らしいている。端的に表すのが先進国で物のあふれている日本の自殺率は10万人当たり25.8人(2009年統計、世界ワースト5位)。ところが常時銃声爆音が響いているようなソマリアでの民間人の紛争による死亡率が同19.04人。平和な日本で自ら死を選ぶ人の方がドンパチだらけの紛争国より高いというこの現実!一般のアフリカ諸国では自殺率は推定わずか0.7人。助け合いの精神が根付いていてそもそも自殺という概念すらないみたい。アフリカに行きたくなった.....
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日本人は昔からアフリカというと、無意識のうちに援助、啓蒙の対象で貧困。 アンゴラは中国と最も緊密な関係を築いている国。 アフリカ経済の中で中国のプレゼンスが大きくなってきている。 官民が一体となって、運かの如くアフリカに押し寄せる中国パワーはすさまじいものがある。
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のっけから『あいのり』の「やらせ」批判で始まる本書。僕もあの番組が心底ニガテなので、楽しく読ませてもらった。 ―というのは、もちろん本題ではない。筆者が批判の対象とするのは、『あいのり』の中に見られる、アフリカに対する日本人の「偏見」である。 「常に援助の対象であり、啓蒙≪しなけ...
のっけから『あいのり』の「やらせ」批判で始まる本書。僕もあの番組が心底ニガテなので、楽しく読ませてもらった。 ―というのは、もちろん本題ではない。筆者が批判の対象とするのは、『あいのり』の中に見られる、アフリカに対する日本人の「偏見」である。 「常に援助の対象であり、啓蒙≪しなければならない≫アフリカ」、そんなアフリカイメージがわれわれの中にはないだろうか。『あいのり』のアフリカ編(?)には、そんなイメージに基づいたやらせ編集が行われていた疑いがあったというのだ。 どういうことかというと、「かわいそうなアフリカ人」を演出するために、事実と異なる情報を番組を作り上げるために盛り込んだというのである。「恋人探しを脇に置いて、親と戦争で行き別れて孤児院に送られた子どもを、2日かけて親戚の家に届ける。」そういう話なのだが、実際は行き別れた原因は戦争ではなく、親戚の家は車で4時間程度で着く場所にあったということだ。 「アフリカには内戦・飢餓・貧困が蔓延し、解決のために援助が必要である」ということは、もちろん事実だ。しかし、この『あいのり』報道から読みとれるのは「アフリカは援助の対象でなくてはならない。そうでなくては楽しくない。」といった、おしつけがましいイメージである。 このような傾向は様々な場面で見られる。例えば町で良く見かけるアフリカ支援を呼び掛けるポスター。それに悪意が込められているというわけではないが、こういう見かたをあおっているのは確かである。(ただ、寄付文化が日本に根差すべきだとも考えてるので、きっかけを作るためには、ああいう宣伝の仕方も大事かとも思う。悩ましい。) このような見かたがなぜ問題なのかというと、アフリカを合理的に見ることができなくなるということ、ひいては日本人が自分を客観的に見る目を失っていることを示す(と思われる)からだ。 アフリカは負の面が目立つ、しかし正の面も相応に持っている。ここを見落とせば、アフリカ―日本が相互に協力して成長してゆくという観点もなくなる。また日本が盲目的にアフリカより自分たちが幸福であると信じることは、「アフリカのようにはなりたくない」といったような(ある種消極的で)硬直した幸福感が日本を支配するという心配がある。 筆者が特に強調するのは後者だ。今日日本には「閉塞感」がただよっていると良く言われるが、その正体は硬直した幸福感にあるのではないかと、日本人のアフリカイメージを通して推測する。単純比較はナンセンスであるということは筆者も認めるところだが、アメリカから経済を学ぶように、スゥエーデンから福祉を学ぶように、アフリカから学ぶことがあるのではないかと提言をするのである。 「アフリカから学ぶことってなんだろうか。」僕はジャンベというアフリカの民族太鼓のサークルに、幽霊メンバーとして参加しているのだが、あるような気がする。それははっきりという事が出来ないのだが、ビデオを通して見たアフリカ人達が音楽を楽しむ姿は、なんというか楽しそうなのである。 いわゆる先進国の音楽と決定的に違うのは、彼らは音楽を「囲む」のだ。輪になって聞く。一方我が国などは基本的に演奏者と観客が対になって聞く。どちらがいいということではないのだが、直感的に「ああ、いいな。」と思うのだ。その違をよく観察することで、成長につながる感覚を得られないか。 ここでは僕の私怨のせいで『あいのり』の話ばかりをしたが、それだけでなく、本書ではアフリカ現代史に基づく分析がなされてある。非常にわかりやすい文書なのだが、『入門書』というには筆者の主張が色濃く出すぎている(筆者も認める)。しかし、アフリカ知識へのリテラシーを高める上で、良書といえるだろう。
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最初は「あいのり」のやらせ暴露本か!?と思ったが、著者の言うところにはそうだな~と納得。日本人のアフリカに対するイメージというものはかなり固定化されているところがあるのは事実。現に私もそう。アフリカって結構未知な世界。ということで、もっとアフリカについて知りたいと思った。 この本...
最初は「あいのり」のやらせ暴露本か!?と思ったが、著者の言うところにはそうだな~と納得。日本人のアフリカに対するイメージというものはかなり固定化されているところがあるのは事実。現に私もそう。アフリカって結構未知な世界。ということで、もっとアフリカについて知りたいと思った。 この本の中で印象深かったのは「アフリカの毒による解毒」のところ。日本の自殺率の高さと、アフリカの自殺率の低さについて、これが原因だというものは解明しないものの、日本の社会の在り方について考えさせられた。日本以外の国について知ることは、いい面も悪い面も含めて日本、そして自分の周りの社会、生活を見直すよいきっかけになるのでは。
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