ソーシャル・キャピタルのフロンティア の商品レビュー

稲葉陽二,大守隆,近藤克則,宮田加久子,矢野聡【ほか編】

2018/07/11

・社会関係資本にもよいものと悪いものがある。どのように区別するかが現在研究課題。
垂直型-水平型、ボンディング型-ブリッジング型etc
・社会関係資本の負の側面に関する研究はまだ少ない
・社会関係資本計測ツール：SOCAT、SOCAP IQ
・古典的な狭義の社会関係資本はミクロでローカルなものだが、国家的制度もマクロな社会関係資本、とするのが、近年の流れ。ゆえに政治への信頼と豊かな社会関係資本、よきガバナンスは相互に関連している。

2013/12/22

社会関係資本に関する研究を分野別に整理した論文サーベイ。概念の広さや錯綜っぷりから取っ付きづらい社会関係資本について、これまでの研究と現時点での課題がうまくまとめられている。とく分野別に纏められているのがとても使いやすい。4章が経営学分野、ネットワーク理論に関する話題で、MBAの人ならここと序章を読めばいい。参考になりそうな論文がたくさん見つかるし、章の終わりには簡単なリーディングガイドが付いているので書籍の方も押さえられる。研究論文書く前に読んでおけば、研究の到達点も違ったかもしれない、などと思ったり。やはりしっかりとした文献レビューは研究の最低条件ですね。

ただ、ブックオフで初版第1刷を買ったからか、誤植が酷い。超がつくほど重要な用語を何カ所も誤るなど、ざっと一読するだけで見つかるような誤植がごろごろある。なんらかの理由で校正がほとんど行われないまま出版されたと思われる。中身はとても役立つ本だけに、この誤植の多さは残念。

2013/04/07

社会関係資本に関する最近の研究動向を知るおすすめの一冊。
内容は、政治や経済における社会関係資本の影響、社会関係資本の形式化、分析方法、そして社会関係資本を促進するための組織化（NPOなど）とそれらの応用に関してである。応用では、犯罪、教育、情報通信、健康と具体的な話題に触れられている。
私はICT関係者なので具体的な方法論に興味があったのだが、このような場合には安田雪さんのネットワーク分析に関する書籍を並行して読むと良いと思う。

2011/06/16

学問的な厳密性の課題と、感覚的に理解し易いという狭間で、行きつ戻りつの概念「ソーシャル・キャピタル（社会関係資本）」。
政治学、社会学、行動経済学、NPO論などが入り乱れ、興味深い。

「ソーシャル・キャピタル」の定義は様々だが、稲葉（2005）は「心の外部性を伴った信頼・規範・ネットワーク」と定義し、公共財、私的財、クラブ財に3分類。
⇒共通項は、人々や組織の間に生まれる協調的な行動を分析するという課題に取り組んでいること

この「ソーシャル・キャピタル」という”マジックワード”について、浅く広く、正の面・負の面から、全体を俯瞰できる一書。