カンポ・サント の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
いつものようにエッセーとも批評とも小説ともつかない掌編たち。 かつてのフォークロア的な死から、加速度的に消費され、記憶が失われていく現代の死まで、輪郭のはっきりしないぼんやりとした文章で綴られる表題作にはほとんど慄然とする。 ゼーバルトが綴るこの文章こそが、死後の世界から届く彼岸からの便り。 それこそが我々の最期の望み。
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住む人がまばらで、製造したモノはわずかばかり。それでも空間だけはたっぷりとあった時代――。著者のドイツ人作家は想う。そのころ人は、だれであれ、死者となったのちも欠くべからざる存在であったと。 イタリア語で墓地を意味する、「カンポ・サンド」。原義は「聖なる場所」という。表題作...
住む人がまばらで、製造したモノはわずかばかり。それでも空間だけはたっぷりとあった時代――。著者のドイツ人作家は想う。そのころ人は、だれであれ、死者となったのちも欠くべからざる存在であったと。 イタリア語で墓地を意味する、「カンポ・サンド」。原義は「聖なる場所」という。表題作は、世界遺産の入り江をもち、フランスで最も美しい村といわれるコルシカ島ピアナの、死者を葬る一角を訪ねた散文作品。どの人も等しく絶え間なく撫でていくそよ風のような息の長い文章は、砕けた台座、乱雑な墓石、といったものを映し出したのち、胡散臭いものも描くようになる。多彩な造花。そして葬儀の風習に欠かせなかった、嘆き女たちの奇妙な感情のこもらなさなど。 遺作『アウステルリッツ』より前に書き上げた、コルシカ島をめぐる四つの散文に加え、使者とともにいる生者を描いたカフカやナボコフについてのエッセイも味わえる。 (週刊朝日 2011/6/17 西條博子)
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コルシカ島の4作品が特に好き。http://www.cafebleu.net/blog/archives/2011/04/post-281.html
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