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ブラッドベリ年代記 の商品レビュー

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3件のお客様レビュー

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2012/10/14

・サム・ ウェラー「ブラッドベリ年代記」(河出書房新社)は ブラッドベリやその関係者が協力してなつた伝記である。筆者は初対面で「レイ・ブラッドベリとぼくは、たちまち意気投合した。」 (同13頁)といふ。そこから「レイ自身の私的な貴重品保管所を調査する過程においても、彼はいちどとし...

・サム・ ウェラー「ブラッドベリ年代記」(河出書房新社)は ブラッドベリやその関係者が協力してなつた伝記である。筆者は初対面で「レイ・ブラッドベリとぼくは、たちまち意気投合した。」 (同13頁)といふ。そこから「レイ自身の私的な貴重品保管所を調査する過程においても、彼はいちどとして口をはさまず」(「序 文」19頁)といふほどの信頼関係が生まれた。だからこそ本書は「レイのお墨付きをもらった」伝記となりえたのである。本書は公 認ではなくとも、ほぼ公式の伝記と言つて良い。筆者は本書を「二十世紀の偶像、多くの世代に愛された男の叙事詩的物語」(19 頁)といふ。この評は筆者の己惚れや自慢的言辞ではない。本書は確かに優れた叙事詩である。年代記と題されたのもむべなるかなと 思ふ。邦訳本文は二段組みで370頁ほどある。大冊と言へようか。私は何日もかけて読むのがいやなので、本書を買ひはしたもの の、そのまま積ん読でここまで来た。たまたままとまつた時間がとれたので、今回やつと読んだのである。さうしてほぼ一気に読了で ある。読み易い。そもそも伝記といふもの、その性質からほとんど考へることを要求しない。記述内容をそのまま事実として受け入れ ていけばよい。それでも内容によつては難渋する。ところが本書にはさういふところがない。実に素直に読める。おもしろい。本書は 年代記と題されてゐる。きちんとした編年体になつてゐないが、伝記的事項についてはもちろん、ブラッドベリの人となりについても よく分かる。いや、伝記的事項がその人がらを語ると言ふべきか。序文にこのやうにある。「彼は名声や大金には目もくれない。“有 名人”という言葉は大嫌いだ。彼の燃料は賞賛と感謝。見知らぬ人が近づいてきて、『あなたのおかげで人生が変わりました』と告げ ると、しばしば彼はうれし涙に暮れる。」(13頁)更にかうもある。「めったに悪態をつかない代わりに、レイ・ブラッドベリは泣 く。しばしば。喜びの涙。悲しみの涙。(中略)ときには一日に何 度も泣く。彼は胸の内をさらすことを恐れない。臆面もないセンチメンタリストだ。」(18頁)さう、ブラッドベリは涙もろいので ある。本文は更に具体例を記す。かういふ人なのだと思ふ。だからあのやうな作品が書けた。私がひとまとめして叙情性といふものの 原動力、いや源泉はここにあつた。あれはかういふ感傷癖のある精神から生まれたのである。意外ではない。むしろやはりといふ感じ である。ダグラス少年の物語、「たんぽぽのお酒」を郷愁、ノスタルジーといふ語だけでは評しきれないのはこれがあるからなのだら う。納得である。ちなみに、このダグラス少年の姓名の由来も本書から知れる。伝記的事実に止まらず、ブラッドベリにはかういふと ころがあるらしいと知るのもまた伝記の楽しさである。 ・実は本文をほとんど読み直さずにこれを書いてゐる。それでもこれくらゐは書ける。それはブラッドベリの伝記だからである。ただ し、本書巻末に(原本付載の)索引(の邦訳)、原注、参考文献、作品リストが載る。私はこれを少しばかり使つた。役に立つ。うろ 覚えでもある程度探せるのが嬉しい。私のやうに本文を読み直さずにすませようなどと思はなくとも、かういふのは伝記のやうな資料 的価値の高い書には是非とも必要である。さうして本文の伝記的事実、この検証は読者にはできないが、ブラッドベリの記憶の検証は 筆者によつてなされてゐる。伝記的事実もまた信頼がおけるものなのである。その意味で、本書はブラッドベリの伝記としてほぼ完璧 にしあがつてゐるのではないかと思ふ。準公式伝記の準公式たる所以である。

Posted byブクログ

2011/07/26

レイ・ブラッドベリ氏はてっきり冥界の人だと思い込んでいたが、 現在も御活躍中の様で驚いた。 彼の誕生からナショナル・メダル・オブ・アーツを ブッシュにより 2004 年に授与されるまでの 数多のエピソードをそれはそれは丁寧に 次々と読めせてもらえた。 仕事熱心でパワフル、そして子...

レイ・ブラッドベリ氏はてっきり冥界の人だと思い込んでいたが、 現在も御活躍中の様で驚いた。 彼の誕生からナショナル・メダル・オブ・アーツを ブッシュにより 2004 年に授与されるまでの 数多のエピソードをそれはそれは丁寧に 次々と読めせてもらえた。 仕事熱心でパワフル、そして子供っぽさも持ち合わせた魅力的な人だ。 数多くのビッグネームとの交流に時代を感じる。 訳者あとがきにあるように、 「ブラッドベリという個人を通して見たアメリカ大衆文化史」としても非常に興味深い側面を持った作品。素晴らしい。

Posted byブクログ

2011/04/20

とても面白かった。用の無いときはほとんどこれを読んで3日間で読了。今年読んだ本の中では一番の出来映えか。豊富な参考文献と何百時間に渡るブラッドベリとの対話によるものが大きいのか。ブラッドベリが好きな人は必読。

Posted byブクログ