義姉さんは僕のモノ の商品レビュー
大人の、大人による、大人のための官能とドラマ
さすがの草凪作品と言うしかない。尊大な兄の侮辱的な振る舞いにも耐えて懸命に“おつとめ”に励む健気な兄嫁(義姉)を見かねて一時の略奪愛に燃える弟のココロとカラダの奮闘記である。緻密に構成された大人のドラマをほろ苦くもきっちり描いた作者の手腕には改めて舌を巻く。お見事な官能物語である...
さすがの草凪作品と言うしかない。尊大な兄の侮辱的な振る舞いにも耐えて懸命に“おつとめ”に励む健気な兄嫁(義姉)を見かねて一時の略奪愛に燃える弟のココロとカラダの奮闘記である。緻密に構成された大人のドラマをほろ苦くもきっちり描いた作者の手腕には改めて舌を巻く。お見事な官能物語である。 序盤で弟が覗き見てしまう兄夫婦の一方的かつ偏執的な夜の営みが始まり。憧れ的恋慕の情を抱く義姉の哀れな“ご奉仕”が軽い寝取られ感を伴って描かれる。 しかし、前半は義姉と始めた移動販売で出会った人妻2人との展開となる。ここに、かつての職場で高嶺の花だった先輩の結婚後を挿む巧みさを見せつつ刹那の「昼下がりの情事」が続く。そして、ここで人妻達に義姉と同様の悩みと悔しさを盛り込んでいる点がさらに巧みである。“釣り上げた魚に餌を与えない”夫が妻に強いる自己中心的なご奉仕。これが前半のテーマである。タイプの異なる美女達が若干のコスプレ要素をも纏いながら迫ってくる艶っぽい展開である。 人妻達の共通項を学んだ弟が、これを義姉にも当てはめ、実践し、癒し、解放させようと試みるのが後半。遂に本懐を遂げる破壊力が前半を遥かに凌ぐ官能的筆致で綴られる。この契機ともなった兄の本性をコミカルに挿みつつ、それでも貞淑さを失わない清楚な義姉が肉欲に墜ちる決壊振りが素晴らしい。女にも秘めた本性があることを兄(夫)との対比で描く趣深さもある。ここから情事を繰り返す弟と義姉の爛れたエスカレートが淫猥極まるが、終盤への転機が義姉の心の内にあるところが何とも言えない切なさを誘う。 常に先を行くエリートな兄に憧憬と畏怖と劣等を味わい続けてきた弟の憤りが頂点に達した刹那の行動。それが皮肉にも弟が望まないのに望ましい結果を招くところに世の無情のような、人と人との難しさみたいなやり切れなさを内包しつつドラマが動く終盤はほろ苦い。序盤とは全く様相を異にする寝取られ感を味わいながらも自らの役目を終え、極めて現実的な収束に向かう展開には、昨今の願望ファンタジー重視の非現実な作風に対する一種のアンチテーゼのようであり、大人が読む大人のための官能小説の真髄を示してくれているようでもある。好みの分かれる結末ではあるが、上質な映画を観たかの心地良さも得られよう。淫らに開花しつつも最後まで優しい「いい女」を描き切った素晴らしさに溢れている。
DSK
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