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渡邊二郎著作集(第11巻) の商品レビュー

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2021/11/10

『歴史の哲学―現代の思想的状況』(1999年、講談社学術文庫)と『現代人のための哲学』(2005年、ちくま学芸文庫)のほか、九編の論考を収録しています。 『歴史の哲学』は、放送大学の講義にもとづく内容で、西洋の歴史学者や哲学者たちが、歴史についてどのような思想を展開してきたのか...

『歴史の哲学―現代の思想的状況』(1999年、講談社学術文庫)と『現代人のための哲学』(2005年、ちくま学芸文庫)のほか、九編の論考を収録しています。 『歴史の哲学』は、放送大学の講義にもとづく内容で、西洋の歴史学者や哲学者たちが、歴史についてどのような思想を展開してきたのかということをていねいに解説しています。ただし、さまざまな学説をならべただけではなく、超越的歴史観から内在的歴史観へ、さらに実存的歴史観へと、著者自身の立場にもとづいて整理がなされています。 まず著者は、「歴史」ということばについての考察をおこない、ドイツ語でGeschichteと呼ばれる「客観的」な歴史と、ドイツ語でHistorieと呼ばれる「主観的」な歴史の二義性があることに着目して、「実際に起こった出来事」と「記述としての歴史」の関係について哲学的な考察を展開しています。その後、ヘーゲルやマルクスの歴史観が解説され、それらのうちにキリスト教以来の超越的歴史観が生きつづけていることを指摘したうえで、ディルタイや新カント学派が歴史学を自然科学からどのように区別したのかということが論じられます。さらに著者は、ニーチェによって実存的歴史観が提示されたことに触れ、ハイデガーの存在の歴史についての考察についての簡単な紹介をおこないます。最後に、サブタイトルである「現代の思想的状況」というテーマにそって、ヤスパースの議論が解説されています。 『現代人のための哲学』で、哲学と自然科学とのちがいや、人生にかかわる哲学上の問題などがわかりやすいことばで解説されている、哲学的エッセイというべき内容の著作です。

Posted byブクログ