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リトル・ブラザー の商品レビュー

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2011/05/19

過剰なテロ対策措置の敷かれるサンフランシスコが舞台。テロ容疑者として過酷な尋問を受けた少年ハッカーが主人公。ゲーム機を用いたネットワークを構築して、自身と友人の仇であるDHS(国土安全保障省)に反逆する。 タイトルは『1984年』を意識したもの。ただし、作品の性格は大きく異なる...

過剰なテロ対策措置の敷かれるサンフランシスコが舞台。テロ容疑者として過酷な尋問を受けた少年ハッカーが主人公。ゲーム機を用いたネットワークを構築して、自身と友人の仇であるDHS(国土安全保障省)に反逆する。 タイトルは『1984年』を意識したもの。ただし、作品の性格は大きく異なる。津田大介氏による推薦文が示すとおり、「痛快な青春小説」としての色彩が強い。リスペクト元に充満する、「不気味」としか言いようのない空気とは異なる。どちらかと言えばジュヴナイル寄り。極端なハナシ、『ぼくらの七日間戦争』や『チョコレート戦争』などを彷彿させる。 とは言え、わざわざ津田氏に推薦文の依頼がいく作品である。ジュヴナイルよりの作品として充分な技術解説が本文中に盛り込まれている一方で、「子どもによる大人への反逆」という性格は薄い。主人公は少年だが、合衆国における憲法的価値の存在を信念として、強大な権力に立ち向かっていく。また、本書を紹介したSFマガジン誌でも指摘されているとおり、市井のハッカーが検閲体制に抜け道を用意するという事象は、現実の現代社会においても起こっている。世を騒がすハッカーなる存在が、どのような信条をもって行動をしているのか、その一端を知ることもできる。 そうした功利的な評価も高く付けられるが、やはり何といっても、楽しんで読むことができる作品である。一押し。

Posted byブクログ