艶肌おんな社長 の商品レビュー
オフィスを舞台にした人情味のある物語が心地良い
良い話。この一言に尽きる心地良さがある。オフィスを舞台にしながら同じ雑居ビルに住まう歯科医院や小料理屋が機能的に華を添えており、街中の片隅に見られるような程良い人情味を作品に加えている。28歳の歯科助手や38歳の小料理屋の女将がサブヒロインとして25歳の主人公に絡んでくる格好の設...
良い話。この一言に尽きる心地良さがある。オフィスを舞台にしながら同じ雑居ビルに住まう歯科医院や小料理屋が機能的に華を添えており、街中の片隅に見られるような程良い人情味を作品に加えている。28歳の歯科助手や38歳の小料理屋の女将がサブヒロインとして25歳の主人公に絡んでくる格好の設定でもある。肝心のオフィス方面も28歳の先輩と29歳の若き女社長と申し分無い布陣。このオフィスでもちゃんとドラマがあるため、これらの要素がキャラ頼みに陥らない構成の妙として土台をしっかり築いている。こうした同居人的連帯感を醸し出すのは、作者のデビュー作『人妻恋慕』のファミレスの店員達や2作目『叔母とぼく-甘美な同棲』のマンションの住人達にも通ずるものがあり、5作目(本作)を以て作者の得意とする世界観が1つ出来上がったようでもある。 ヒロイン達のキャラ設定も良好。小悪魔風味から母性的な熟女まで。他にも快活としたコスプレ好きや生真面目でツンデレ気味な照れ屋さんといった豊かな個性がそれぞれのエピソードを彩っている。そして、実はもう1人、この雑居ビルとは一見無関係なところで中盤から出てくる20歳のヒロインがおり、これを年下の生娘とすることで官能的な違いを演出し、クライマックスへの橋渡しとすることでストーリーに起伏を生み出してもいる。 計5人もの大所帯なため、ヒロイン毎の描写がやや希薄になってしまったのと、何よりメインヒロインが若干喰われてしまったのが少し勿体ないのだが、サブヒロイン達とも程良く愛情を織り交ぜた関係性を持たせて胸キュン要素を盛り込んでいることと、チェリーでもない大人な主人公が責めることで淫らに乱れたり、逆にこらえ切れない愉悦を感じさせられたりする魅惑の情交描写でこれを補っている。というか、補って余りある。 いろいろな要素をかなり詰め込んだ印象ではあるのだが、結果的にはいい思いし過ぎだろとツッコミたくもなる好青年な主人公と、それを包み込むヒロイン達の愛情が交錯して、最後にはいい感じに落ち着く読後感の良さが素敵な作品である。 欲を言えば、最後の「その先」をもう少し堪能したかったかな。美野作品の真骨頂とも言える、めくるめく官能と愛情の連続が始まる直前に紙面が尽きた印象でもあり、やはり少々詰め込み過ぎたかもしれない。
DSK
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