チェスをする女 の商品レビュー

ベルティーナヘンリヒス【著】,中井珠子【訳】

2019/12/04

チェスをする細やかに働く客室係の女性の話

マイルドヤンキーの夫と二児をもつ中年の主婦が初めての趣味でウキドキときめき、
教養とか知的文化を馬鹿にされて夫婦の危機を迎えるけど大会頑張る！みたいな話
日本でもまんまありそうだよねぇ

2019/05/21

エレニがチェスを始めたことで、彼女と世界が変わっていく。

島の産業が観光、という伝統的な島に住むエレニ。仕事はホテルの清掃で、自動車整備業の夫、息子と娘がいる。ある日、客のチェス盤に興味を覚えたエレニは、チェス盤を手に入れたことから、そのゲームにのめりこんでいくがーー。変わらない日常をほんのささやかに変える大事件を静かに優しく描いた作品。

ほんのささやかな変化が、一人ひとりにとっては大きな変化。エレニの行動は、最初夫には受け入れられなかったが、彼女の挑戦が夫の考え方を変える。学校の先生であり、チェスの師にもなったクロスは、エレニのために旧友コスタとの交流を復活させる。それはクロスだけでなく、コスタも変えた。変わらないことで距離を感じてしまった友人カテリナ、変わらないが実はエレニを受け入れてくれたホテルのオーナーのマリア。地中海の明るい日差しのイメージもあって、とてもさわやかでからっとした読了。

2017/07/18

小川糸「こんな夜は」でのおすすめのご縁で読む。普通の主婦エレニと老教師クロスの両方に自分を投影できておもしろかった。

2016/03/31

平易な文章（訳）で書かれており、長さもそれほど長くないので気軽に読める。チェスシーンも沢山あり、チェスファンにはオススメの一冊。

2011/12/01

チェスに興味があるので題名に惹かれて読んでみると、かなり面白いことが判明。
単調で静かな島での暮らしを送っているホテルの客室係の女性がチェスの才能を開花させていくお話。
静かな語りで特に大きな出来事もないのに、いつのまにか夢中になっています。
チェスをやってみたい気持ちがふくらんできます。

2011/11/06

　中年を過ぎた平凡に生活してきた主婦が、チェスに魅せられて夢中になる。田舎の生活と家庭を犠牲にするかもしれないほどの挑戦だ。そのようなことが私にも起こる可能性があるのだろうかと考える。そしてそのような運命ともいえる出会いが今後訪れるのだろうか。几帳面な性格などは私に似ていることもあり、人ごとに思えず、興奮して読了。他の登場人物も、周囲に存在しているような人々である、舞台がギリシアであるにかかわらず。

2011/04/22

　地中海と、アポロン神殿の遺跡と、空の絶景。魅惑のナクソス島を舞台に、在仏のドイツ人作家が島に暮らす人びとを、詩的な表現の交じる小説にした。

　主人公の女性は四十二歳で、ホテルの客室清掃係として働いている。夫は夕食を終えると出かけていき、二人の子どもは手がかからない。心の中にはほのかな、フランスへの憧れがあったのだが、パリから来た若いカップルの部屋にチェス盤を見つけてひらめいた。そうだ、夫の誕生日にチェスを贈ろう。一緒にゲームを覚えればいい。

　しかしのめり込んだのは、彼女ひとり。夫に気兼ねしてチェス盤を冷凍庫（！）に隠す。島はひどく小さい。チェスのよろこびを分かち合いたいあまりに友に口を滑らせ、港じゅうの笑いものに。ところがトーナメントに出るためにアテネに行く土壇場に、今度は島の素朴さが味方するのだ。読了感がいい。

（週刊朝日　2011/4/22）

2011/07/16

フランスで発表されベストセラーとなり映画化もされた作品だが、ドイツ生まれの著者ベルティーナ・ヘンリヒスがフランス語で書いた小説だ。派手なロマンスもなければ、大きな事件が起きるわけでもない。ただ、島の中年女性がチェスに目覚めるという話が何故人を惹きつけるのか？疑問を抱きながら読み始めたのだけれど、気がつくと先へ先へとページをめくる自分がいて驚いた。さまざまなパターンの人間心理を緊張感を持って描くところにその魅力があるようだ。最後に用意されているハッピー・エンドだけではないギリシャらしい展開がこの物語の良さかもしれない。