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両隣の未亡人 の商品レビュー

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極めてオーソドックスな内容がもたらす安心感

1988年から活躍し、フランス書院文庫から出されたデビュー作の通し番号が“0180”という大ベテランを本作で初見なのはお恥ずかしい限りだが、凌辱作品も手懸けるところにこれまでどこか触手の伸びなかった理由があるかもしれない。本作は、両隣に未亡人を配する新味を醸しながらも極めてオーソ...

1988年から活躍し、フランス書院文庫から出されたデビュー作の通し番号が“0180”という大ベテランを本作で初見なのはお恥ずかしい限りだが、凌辱作品も手懸けるところにこれまでどこか触手の伸びなかった理由があるかもしれない。本作は、両隣に未亡人を配する新味を醸しながらも極めてオーソドックスに展開する作品だった。余談だが、野中昇氏の手による洋装喪服が魅惑的な表紙カバーイラストに反して、作中に喪服を着るシーンは無い。 作者付きの読者層を少し意識したかのような35歳の美菜と43歳のみどりという2人の未亡人がヒロインである。アカデミックな雰囲気の美菜と家庭的なみどりと違いを出しつつ16歳の主人公僚太とは母子に近い関係性を持たせている。実際、みどりには女子大生の娘(彩香-20歳)がおり、幼馴染みとしつつサブヒロインにもしている。小悪魔チックなお姉さん風味で、若干焦らしつつも主人公と関係を持つ彩香が序盤の牽引役である。ただし、隣家に越してきた当初から主人公が仄かに想いを寄せる美菜も出てくる。後半はみどりと美菜の展開となる。美菜を主軸に据えてみどりと彩香の母娘が絡んでくる流れとも言える。許されないほどの、あるいは我が子同然の少年と関係する不貞の憂いから、久しかった空閨への疼きを満たす快楽へ、そして「女」を思い出させてくれた僚太への愛情へと昇華していく心と体の描写が、軽い嫉妬心や対抗心を交えて悩ましく、そして艶めかしく描かれている。 しかし、この僚太を中心にした甘い関係にあって、昨今の風潮よろしく非現実ながら夢の願望ファンタジーが満載なクライマックスにはならないところが本作の特色であろう。過去に纏わる背景を盛り込んだり、本来の立ち位置を維持しつつ別の許されない関係に自らの責任において踏み込んでいくようなドラマ性には、最近だと弓月誠作品に近いような、それでいて少し違うような、何とも言えない現実味のあるテイストを感じた。逆に年の差を超えて僚太にメロメロになっていくヒロインもおり、少しのほろ苦さが却って甘さを引き立てているかのようである。ただ、惜しむらくは結末に至る流れが性急かつ尻切れトンボに感じたことか。気が付ついたら紙面が尽きてしまい、慌てて纏めた印象である。

DSK