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諜報の天才 杉原千畝 の商品レビュー

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25件のお客様レビュー

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2011/07/07

ナチスから逃れるユダヤ難民を助けた日本人外交官・杉原千畝については、幸子夫人のご著書をはじめとして、すでに数多くの作品で語りつくされています。しかし、本書は人間・杉原千畝を新しい視点からみたとても興味深い一冊です。人道的な偉業はもちろんですが、千畝の情報収集能力や開かれた視野など...

ナチスから逃れるユダヤ難民を助けた日本人外交官・杉原千畝については、幸子夫人のご著書をはじめとして、すでに数多くの作品で語りつくされています。しかし、本書は人間・杉原千畝を新しい視点からみたとても興味深い一冊です。人道的な偉業はもちろんですが、千畝の情報収集能力や開かれた視野など、その外交官としての優れた能力にも注目しています。大学生にもぜひ読んでみてほしい一冊です。 (↓朝日新聞書評より) ■情報収集と分析に優れた才能  1990年代のある時期、第2次大戦中にユダヤ人を救ったことで知られる、外交官の杉原千畝にまつわる本が、続々と刊行された。その数の多さに、いささか辟易(へきえき)した覚えがある。すべてを読んだわけではないが、必要以上に杉原の業績を持ち上げたり、逆に過小評価したりする傾向があり、それが不満だった。情緒的な取り上げ方が多く、本来必要な学術的なアプローチが、おろそかになっていた。  その点、本書の著者はきわめて客観的な分析を行っており、等身大の杉原像を描き出すことに成功した。ユダヤ人へのビザ発給問題もさることながら、杉原が携わった諜報活動に論点を絞り、その業績を具体的に明らかにしたのは、従来欠けていた部分を補う意味で評価できる仕事である。  ここでいう諜報は、地道な情報収集・分析活動を意味している。それこそ、海外駐在の外交官の主たる仕事といってよい。杉原はその方面で優れた才能を発揮し、やがて〈諜報の杉原〉として、省内に知られる存在になる。たとえば、満州国外交部に在籍した34年前後に、北満鉄道譲渡に関して諜報活動を展開し、交渉相手のソ連をうろたえさせたという。  おそらくそのために、のちにソ連勤務を発令された杉原を、ソ連側は〈好ましからざる人物〉として、受け入れを拒否する異例の措置に出た。そのおり、杉原から事情聴取した外務省の記録「杉原通訳官ノ白系露人接触事情」が、外交史料館に残っている。著者は杉原研究の過程で、70年近く眠っていたこの史料を発見し、本書を書くきっかけをつかんだという。杉原幸子夫人をはじめ、関係者への取材も精力的に行い、わずかに残された外交電信にも、目配りをきかせている。  純粋の学術書ではないが、従来のやや偏った杉原像を正したところに、本書の価値があるだろう。

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2011/06/12

現在の外務省の役割が戦前とはかなり異なるからか、あまり多くの感慨はない。日本の官僚には本来「顔」がないため、杉原氏のような功績がある人物であっても、その行動原理から探求しようとすると無理があるのかな、などと感じた。 私には一文が長く、読みにくさが払拭できなかった。

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2011/05/06

「諜報の天才」という煽りはどうかと思うが、インテリジェンス・オフィサーとしての杉原千畝に焦点を当てた著作。 彼の不遇はビザ発給の件で閑職に追われたことではなく(むしろ前線勤務)、関係国に睨まれながらも得た情報を本国が活かしてくれなかったことなんだろうな。

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2011/04/03

ヒューマニストとしてではなく諜報のプロとしての杉原氏の仕事を「命のビザ」を中核にして分析する、という内容。学校で習う世界史だとあまりたくさん出てこないポーランドやバルト三国の当時の情勢や日本との関係が出てきたのが新鮮でした。諜報についてはもともと(当たり前だけど)詳しいわけではな...

ヒューマニストとしてではなく諜報のプロとしての杉原氏の仕事を「命のビザ」を中核にして分析する、という内容。学校で習う世界史だとあまりたくさん出てこないポーランドやバルト三国の当時の情勢や日本との関係が出てきたのが新鮮でした。諜報についてはもともと(当たり前だけど)詳しいわけではないので、私の理解が足りているかが悩ましい。

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2011/03/31

1939年、ドイツのポーランド侵攻を機に、欧州大戦が勃発した。リトアニアには多くのポーランド系ユダヤ人が逃れており、反ユダヤ思想の強いソ連において非常に危険な事態におかれていた。その状況下において、日本を通過してアメリカなどに逃げれることを希望した避難民に、数千通もの通過ヴィザを...

1939年、ドイツのポーランド侵攻を機に、欧州大戦が勃発した。リトアニアには多くのポーランド系ユダヤ人が逃れており、反ユダヤ思想の強いソ連において非常に危険な事態におかれていた。その状況下において、日本を通過してアメリカなどに逃げれることを希望した避難民に、数千通もの通過ヴィザを発給した人物、それが杉原千畝である。後に「命のヴィザ」と称されたその功績は、国際的にも高く評価され、イスラエルから日本人として唯一の勲章が贈られたという。本書はそんなヒューマニストとして名高い杉原千畝を、諜報家としての側面から分析した一冊である。 ◆本書の目次 プロローグ:杉原の耳は長かった 第一章  :インテリジェンス:オフィサー誕生す 第二章  :満州国外交部と北満州鉄道譲渡交渉 第三章  :ソ連入国拒否という謎 第四章  :バルト海のほとりへ 第五章  :リトアニア諜報網 第六章  :「命のビザ」の謎に迫る 第七章  :凄腕外交官の真骨頂 エピローグ:インテリジェンス・オフィサーの無念 「諜報」とはインテリジェンスの和訳であり、「地道に情報網を構築し、その網にかかった情報を精査して、未来を予測していく。そしてさらに一歩踏み込んで予想される未来において最善な道を模索する」ということである。「謀略」と誤解されることが多いが、「謀略」は未来を都合の良い方向へ強引にねじ曲げるものであり、「諜報」とはむしろ正反対にある。 杉原を一躍有名にした「命のヴィザ」については、今を持って謎が多いという。外務省と杉原との電報のやり取りに不可解な点があまりにも多いのだ。数の不一致、一度ヴィザが発給された人物への謎の照会、返信までの間隔の開き。そして、その謎は、当時ドイツとの同盟関係にあった日本の外務本省を欺くための「アリバイ工作」であったことが本書によって導かれる。彼のインテリジェンス活動の本領は、自国の官僚組織に対して発揮されたのである。 それにしても、そこまでの危険を負いながらも、杉原をビザ発給へと決断させたものは何だったのだろうか。重要なヒントが「決断 外交官の回想」という手記に記されている。 曰く、全世界に隠然たる勢力を有するユダヤ民族から、永遠の恨みを買ってまで、旅行書類の不備とか公安上の支障云々を口実に、ビーザを拒否してもかまわないとでもいうのか?それが果たして国益に叶うことだというのか? この文面が示すのは、杉原がユダヤ人というものの未来を的確に予測し、最善な道を模索したということに他ならない。省益より国益を考え、個人でリスクを取って決断した杉原千畝、その恩恵は百年近く立った今でも、我々が預かっているものである。百年先の国益を考えた決断ができるか、個人でリスクを取った判断ができるか、今こそ、彼のインテリジェンスに学ぶところは大きい。

Posted byブクログ