原爆被爆者三世代の証言 の商品レビュー
本屋で見かけて、図書館にリクエストしてたら、購入じゃなくて、ヨソからの相貸で届く。著者は、ホロコースト生還者への聞き取り調査をやってきたという人らしい(『夜の記憶―日本人が聴いたホロコースト生還者の証言』という本になっている)。ホロコースト生還者の研究から、原爆被害も「世代間にわ...
本屋で見かけて、図書館にリクエストしてたら、購入じゃなくて、ヨソからの相貸で届く。著者は、ホロコースト生還者への聞き取り調査をやってきたという人らしい(『夜の記憶―日本人が聴いたホロコースト生還者の証言』という本になっている)。ホロコースト生還者の研究から、原爆被害も「世代間にわたる影響のあるトラウマ体験」であろうということで、三世代の聞き取り調査を始められたらしい。 被爆者ご自身+その子ども+その孫というインタビューを10家族ほどしたうち、この本には3家族の話が載っている。それぞれの人が話された内容は、貴重なものだと思った。 ただ、その話についての著者の分析は「はじめに枠組みありき」という感じで、その設定した枠組みにあてはめるように「はっきりとは語られなかったが、きっとこうだろう」と推測を重ねていく記述は、私にはずっと違和感がのこった。多く参照したのはリフトンの研究らしく(たぶん『ヒロシマを生き抜く―精神史的考察』だと思われる)、インタビュー記録のなかから、そのリフトンの研究に「合う証言」を探しているようにさえ思えた。 山本太郎さんの「広島の原爆資料館でも、原子力の平和利用というコーナーがあったんですよ」(p.228)という話には(今はそのコーナーは撤去されているそうだが)、びっくりした。私も何度か広島の資料館へ行ってるけど、そんなんあったとは知らなかった。 もう一点「汚染の運び手としての被爆女性」という、Todeschiniが打ち出した概念の話が気になった(Todeschini,M.:Bittersweet Crossroads:Women of Hiroshima and Nagasaki.Dissertation Abstracts International,Section A:Humanities and Social Scienses,Vol.60,in Sawada,A.,Chaitin,J.,Bar-On,D.,:Surviving Hiroshima and Nagasak-Experiences and Psychological Meanings,p.46,Psychiaritry,76(1),Spring,2004←巻末資料の注[24]p.342)。 放射能の子孫への影響についての分からなさが、偏見や差別をうみ、被爆者が結婚の忌避を受けることもあったというのは他の本でも読んだことがある。この本では「被爆者の娘の結婚に際しては、今もさまざまな偏見が存在するために、被爆者の親はそれを怖れて何かと気苦労を重ねてきた事実があった」(p.279)とか、「[被爆]二世が女性の場合、結婚時がそうした偏見や差別の機会となりやすい」(p.285)とか、「ことに、子供が女性である場合、被爆者側にとっても世間の側にとってもその怖れは極に達した」(p.312)とある。 ことさら女性がというのは、子どもは誰しも女性から生まれてくるということからくるのか?「世間の側も、原爆で汚れていない自分の家に『悪い血』が入ることを怖れて、被爆者の子供との結婚を敬遠するようになった」(p.312)という発想は、被爆への差別にかぎらないと思うが、「血」を忌むココロはどこからやってくるのだろう。
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長崎新聞2011.02.28。 《長崎、広島の被爆者とその子、孫にインタビューし、被爆体験の心理的影響などを分析した》 《被爆しても必死に生き抜こうとするその姿勢から2世、3世は多くを学び、自らの励みにする傾向は多くの事例で見られたと指摘。》
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