近代日本における読書と社会教育 の商品レビュー
「読書」という行為を「教育」の視点から改めて問い直している点で意義のある本。多くの文献調査やフィールドワークに基づく考察に裏付けられた「教育における読書」の2つの側面についてのまとめはとても説得力があり、読書というものを根本から考え直す契機にもなった。特に著者が最も力を入れて調査...
「読書」という行為を「教育」の視点から改めて問い直している点で意義のある本。多くの文献調査やフィールドワークに基づく考察に裏付けられた「教育における読書」の2つの側面についてのまとめはとても説得力があり、読書というものを根本から考え直す契機にもなった。特に著者が最も力を入れて調査を行っていた下伊那の婦人文庫の話では、農村女性の読書行為への参入の過程、そして読書行為に徐々に意味・価値を見いだしていく過程が、彼女たちの手記やインタビューを通じて浮かび上がってきて、非常に興味深かった。
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2011 8/21読了。筑波大学図書館情報学図書館で借りた。 「日本の近代化過程における読書の教育的位置づけを歴史的に検討する」ことを目的に、1900-1960年代の読書・社会教育について扱う本。 第2-3章、日露戦争後の内務省・文部省による、国民統合政策下での通俗教育(社会教育...
2011 8/21読了。筑波大学図書館情報学図書館で借りた。 「日本の近代化過程における読書の教育的位置づけを歴史的に検討する」ことを目的に、1900-1960年代の読書・社会教育について扱う本。 第2-3章、日露戦争後の内務省・文部省による、国民統合政策下での通俗教育(社会教育)のための図書館推進、という話(いわゆる『思想善導』につながっていく話)がめちゃめちゃ面白い。 単なる思想善導批判ではなく、社会教育/生涯教育の目的として、国民教育が当然の前提に置かれている状況下での図書館の役割を果たそうとすれば・・・ということを文献に基づいて記述している。 そもそも図書館政策について文部省より先に内務省が乗り気であるとか、教化の目的でこそ図書館設置が増えた・・・というあたりが面白いし、善導される先の思想の中身を「豊かな人間性」とかに置き換えれば今だってそう変わっていない(が、意識されていない)ように思う。 以下、メモの写し。 ・黙読普及装置としての図書館 ⇔・図書館は音読が禁止されているので敬遠された・・・という文脈で見ていたが、あーそうか、黙読を普及させたという方向でも見ることはできるのか。 ・読む対象を自ら選び、批判的な態度を持って読む≒黙読と、与えられたものを正しいとし、身体化する音読あるいは素読の対比 ⇒・個人が自己の思想・価値観を構築するという近代と黙読の結びつき ・明治・日本における小説の悪影響についての言説の存在(p.50) ⇒・「教育無き読者」は(最低の行いを)模倣する? ◎「地方改良運動」(推進者:井上友一、内務省) ・日露戦争後・・・内務省が国民統合政策(民衆の精神面の掌握)の観点から、学校教育外で行われる教育に注目=通俗教育(社会教育) ⇒・図書館事業が重要視される ⇒・模範はアメリカ ⇒・文部省とも感心が一致 ⇒・図書館数・・・38 (1899)⇒3,900 (1925) ⇒・図書館への国家統制の強化・・・「思想善導」 (そのためにこそ図書館は整備された?) ⇔・同時に個人の要求に応じた学習機会の提供という「デモクラシー的志向」も(矛盾なく)存在 ・「思想善導」の枠では捉えられない東京市立図書館(今澤慈海)の精力的活動 ⇔・今澤辞職後は東京市立図書館も教化の方向へ ⇔・そもそも今澤の理念自体、「思想善導」にも通じうるものである ⇒・「良書」が何かを決めるのはあくまで図書館員 ⇒・社会教化に通じうる方針・・・「生涯的教育」の目的として「国家による国民の教育」は当時の当然の前提としてある
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教育者と被教育者の関係性のなかで、「読書」はどのようにして「教育」に転化していくのか。わが国において読書が普及し始める1900年代から大衆化する1960年代までを対象とし、読書行為の普及を近代日本教育史の視点から跡づける。性差・階層差・地域差の問題をも視野に入れつつ、教育への関心...
教育者と被教育者の関係性のなかで、「読書」はどのようにして「教育」に転化していくのか。わが国において読書が普及し始める1900年代から大衆化する1960年代までを対象とし、読書行為の普及を近代日本教育史の視点から跡づける。性差・階層差・地域差の問題をも視野に入れつつ、教育への関心から読書行為の意義を捉えかえすアプローチを通して、「近代教育」の問題性にもおよぶ意欲的研究。〔読書論・社会教育〕 「読書」はいかにして「教育」に転化していくのか…。1900年代から1960年代までの読書政策、図書館活動や読書運動の歩みを近代日本教育史の視点からあとづける。
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