1,800円以上の注文で送料無料

法然行伝 の商品レビュー

5

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2011/09/06

音無しの構え鋭く,ザックリ罪なき相手をきり捨てご免の、連続辻斬り犯こと机竜之介が主人公の伝説の名作『大菩薩峠』の作者である中里介山のことは、卒業までのちゅうぶらりんの1か月ほどの高3の最後の休みの日々に、没頭して読み切ったときから気になっていました。 机竜之介のあの底知れない虚...

音無しの構え鋭く,ザックリ罪なき相手をきり捨てご免の、連続辻斬り犯こと机竜之介が主人公の伝説の名作『大菩薩峠』の作者である中里介山のことは、卒業までのちゅうぶらりんの1か月ほどの高3の最後の休みの日々に、没頭して読み切ったときから気になっていました。 机竜之介のあの底知れない虚無感は、単なる設定でそうなったのか、それとも作者自身の思想的投影なのか。 心の隅に澱のように、漠然としたふに落ちなさを残したまま十数年がたったわけですが、過日、書店で平積みにされた本書を見たとたん、暗闇からゆっくり首を持ちあげて来た疑問という名の魔物に操られて読むはめになりました。 ・・・・・法然上人は美作(みまさか)国久米(くめ)の南条稲岡庄(なんじょういなおかのしょう)の人である。父は久米の押領使(おうりょうし)漆(うるま)の時国(ときくに)、母は秦氏(はたし)である。子の無いことを歎いて夫婦が心を一つにして仏神に祈りをした。母の秦氏が夢に剃刀(かみそり)を呑むと見て身ごもりをした。父の時国が云うのに、お前が孕(はら)める処定めてこれは男の子であって一朝の戒師となる程の者に相違ないと。・・・・・ 冒頭から尋常ではない書き方ですが静寂そのもの、でも、これからいかにも魔物である法然の物語が展開するのだというワクワク感がヒートアップ寸前です。 これは、法然の姿を借りて中里介山が自分自身を吐露した伝記小説だといえるでしょうか。こんなにも、キリスト教に通じ、社会主義思想に共鳴し、行き着いた果てに仏教の中に真理を見出したという、まるで修業僧のような人が中里介山だったなどとは思ってもみませんでした。

Posted byブクログ