「妹」の運命 の商品レビュー
大塚英志の立論は、大雑把すぎるのではないか、と思うような飛躍や、「えっ、今こことここを繋げるの?この説明だけで?」というような謎のくだりが出てきたりと、正直な読み味は直感だけで筆が動いているのではないか、というところもあるのだけれど、その直感が素晴らしいので読まざるを得ない。男た...
大塚英志の立論は、大雑把すぎるのではないか、と思うような飛躍や、「えっ、今こことここを繋げるの?この説明だけで?」というような謎のくだりが出てきたりと、正直な読み味は直感だけで筆が動いているのではないか、というところもあるのだけれど、その直感が素晴らしいので読まざるを得ない。男たちが脆弱な「私」を少女の内側に見出し、彼女らに自己投影しながら彼女たちに近代的な「私」を与え、しかしそれによって女たちが自我を持ち出した瞬間に他者となって自分の前に現れるため、男たちは逃走する。まったく私が昔から感じていた、いわゆる男性作家による近代文学の傑作への違和感が見事に書かれていた。ところで、女の「私」は本当のところ、どう作り上げればいいのだろう。最後のほうはそのことばかりを考えていた。
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近代文学(自然主義文学)に設定された「妹」。言文一致体によって「自我」のテンプレートを与えられた近代の女性像。しかし、それはあくまでも作家の都合によって与えられた人格で、本来の自我を持とうとすると作家によって言葉を取り上げられたり、狂気に陥れたりさせられる。水野葉舟、田山花袋、盟...
近代文学(自然主義文学)に設定された「妹」。言文一致体によって「自我」のテンプレートを与えられた近代の女性像。しかし、それはあくまでも作家の都合によって与えられた人格で、本来の自我を持とうとすると作家によって言葉を取り上げられたり、狂気に陥れたりさせられる。水野葉舟、田山花袋、盟友の柳田國男、田山の「蒲団」のヒロインのモデルとされる永代美知代、その夫の永代静雄等の著作を手がかりに近代文学の「萌え」を読み解こうとする文学評論。あとがきによれば著者による一連の「柳田國男論」のスピンオフであり「サブカルチャー文学論」の「註」のようなものと位置づけられており、「少女民俗学」から連綿と続くものになるけれど、ここではサブカルチャーではなくてメインカルチャーたる純文学の評論である。読んでる時はワクワクと面白く読んでいたけれど、多分6割も理解できていない。でも面白かった!
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