上海ガール の商品レビュー

ヴィヴィアン・ヤン(著者),杉田米行(著者)

2012/08/28

「S.G.上海ガール」
文化大革命で迫害され死んだ父親が残した言葉とたった40ドルを胸に少女・シアフェイは新天地のニューヨークに降り立った！中国とアメリカ、自由と機会と束縛が1人の少女の人生に大きな影響を与えていく。

本作の著者であるヴィヴィアン・ヤン氏はこの作品でニュージャージー州芸術評議会文学賞を母国語を英語としない作家として初めて受賞しました。彼女は上海で英語とジャーナリズムを専攻し、アリゾナでコミュニケーションを、更にコロンビアとニューヨークでクリエイティブ・ライティングを学びました。その努力が結びついた作品の1つが「S.G.上海ガール」です。

主人公・シアフェイは大学で教鞭を振るっていた研究者を父の下に生まれました。その頃の中国は文化大革命で混乱の最中にあり、その混乱はシアフェイの家族の下にも及んで来ます。そして、父親はアメリカで培った優秀な経歴から国の敵と疑われ、逮捕されてしまいます。後に父親は解放されますが、その後間もなく他界、シアフェイは尊敬すべき父親を失ってしまいます。悲しみにくれるシアフェイ、しかしそんな彼女の目の前に現われた人物は彼女の人生を狂わせる悪であり・・・

といった所が物語の軸になっています。この展開の後に、束縛しかない中国を脱して機会と自由があるアメリカ（シアフェイはそう信じている）に行こうとするシアフェイに何が待っているのか、そしてシアフェイは父がかつていたアメリカで自分自身を変えることが出来るのか、ということが描かれています。

読んだ感想としては、アメリカと中国の描写が非常に綿密に描かれていると感じました。例えば、外から見れば華やかなニューヨークだけれど、実際はニューヨーク全てが素晴らしいというわけではなく、アメリカ人以外が体験する劣悪な環境もしっかり登場しているし、異文化の違いも反映されています。

また、シアフェイの心の揺れはノンフィクションのよう。すべてが希望に満ちていない中、最初の覚悟徐々に恋愛に逃避していき苦しむ所は人間の弱さを感じます。だからこそ応援したくなります（最終的に色々ありましたが、ハッピーエンド）。

ニューヨークはやっぱりニューヨーク。