まつろはぬもの の商品レビュー
信頼できる 「本の読み手」の友だちから ーこの一冊、おもしろいよ と 手渡された 読み始めて すぐに なんと記憶力のずば抜けた人なのだろう と思わされた 幼少期のエピソードが微に入り細を穿って 綴られていく その臨場感たるや に 驚嘆してしまう そして その当時が太平洋戦...
信頼できる 「本の読み手」の友だちから ーこの一冊、おもしろいよ と 手渡された 読み始めて すぐに なんと記憶力のずば抜けた人なのだろう と思わされた 幼少期のエピソードが微に入り細を穿って 綴られていく その臨場感たるや に 驚嘆してしまう そして その当時が太平洋戦争の時代へと 話が移っていくにつれ 面白いのには面白いのだけれど ノンフィクションのはずなのですが どうしても 冒険談に聞こえてしまう まぁ 半生の自伝ということもあり そうなのでしょうが… もう少し第三者の視点が入ってくると なお 迫ってくるものがあるのでしょうが… それても 数奇な人生を過ごされた 「道のりの書」として 最後まで 読ませてもらいました
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北海道の売店で、「松岡洋右の密偵となったアイヌ少年」という帯のあまりのインパクトに、即購入決定。これは北海道に旅行しなかったら出会えない種類の本でしたね。 和人の父とアイヌの母の間に生まれた著者のシクルシイ(和名・和気市夫)氏は、幼少時から天才として知られ、その才能に目をつけた当...
北海道の売店で、「松岡洋右の密偵となったアイヌ少年」という帯のあまりのインパクトに、即購入決定。これは北海道に旅行しなかったら出会えない種類の本でしたね。 和人の父とアイヌの母の間に生まれた著者のシクルシイ(和名・和気市夫)氏は、幼少時から天才として知られ、その才能に目をつけた当時満鉄副総裁の松岡に英才教育を施されることになります。11歳で満鉄傘下のハルピン学院に入学、13歳でロックフェラー財団傘下の在北京・燕京大学に入ったというから、すさまじい。一度見聞きしたことは忘れない天才だけあって、細部まで鮮やかな回想は、まるで小説でも読むような面白さです。 シクルシイ氏によれば、松岡洋右は軍部の暴走を憂い、海外の同士とともに世界平和を理想として私的スパイを養成し、日本軍の暴虐行為を調べて報告させていたとのこと。今まで知らなかったけど、松岡はアメリカ育ちで、フリーメイソンに所属していたなんて話も出てきます。「大東亜共栄圏」を唱え、国際連盟の席を蹴った松岡にそんな側面があったとは。とはいえ、ほんとにそんなきれいごとだけで松岡はスパイを養成しようとしたのか、シクルシイ氏の戦中戦後の活動も、もうひとつ裏がありそうな気がするのだけど、そのあたりはうまくはぐらかしてるような気がしないでもない書きぶりです。もうすこし突っ込んだ歴史家の解説がほしいところ。 しかし、スパイとして育てられ活動した経験だけでなく、前半部の、コタンに生まれ、和人たちの中でアイヌとして差別され続けた少年時代のパートも非常に興味深い。逆境の中で生きぬいていくのだという覚悟が、ほんとに幼い子どもの頃から備わっていたことが、この人の強靭さの基になったのだろうと思わされます。松岡洋右の英才教育は成功しなかったことも多かったそうですが、アイヌの少年であることから周囲の不満も出にくいということで、シクルシイさん本人は「要するに自分は満鉄に売られたのだ」と言っていたらしい。アイヌに対する差別がどのようなものだったかが、この本を読んで、ようやく実感をともなって少しだけ理解できるようになった気がします。
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