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渡邊二郎著作集(第5巻) の商品レビュー

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2018/01/08

『内面性の現象学』(東京大学出版会、1978年)のほか、著者のフッサールに関する論考を収録しています。 『内面性の現象学』や論文「『危機』と『イデーンⅠ』を結ぶもの」では、フッサール現象学の方法論である「現象学的還元」の思想が詳細にして明晰に考察されています。著者はフィンク以来...

『内面性の現象学』(東京大学出版会、1978年)のほか、著者のフッサールに関する論考を収録しています。 『内面性の現象学』や論文「『危機』と『イデーンⅠ』を結ぶもの」では、フッサール現象学の方法論である「現象学的還元」の思想が詳細にして明晰に考察されています。著者はフィンク以来の「現象学的還元」についての研究成果を踏まえつつ、フッサールの思索の歩みのなかで還元がどのように変化したのかを追いかけるとともに、そうした変化を通じて一貫している本質的な意義を明らかにしています。また、心理学と現象学との関係についてのフッサールの錯綜した議論も、ていねいに解き明かされています。 さらに『内面性の現象学』では、こうした現象学的還元の詳細な研究に基づいて、事実学から本質学へ、そして現象学へと進められていくフッサールの方法論的な思索の進展が、実証諸学から存在論へ、そして基礎的存在論へと進められていくハイデガーの思索の歩みと並べられることで、両者の思想の密接なつながりが明らかにされています。 また論文「フレーゲ『算術の基礎』とフッサール『算術の哲学』」では、従来心理主義の立場を脱していなかったためにフレーゲによる手痛い批判を受けたとされてきたフッサールの『算術の哲学』について立ち入った考察がなされており、単なる心理主義ということばでは片づけることのできない、後年のフッサール現象学へとつながる思想の萌芽が見いだされています。

Posted byブクログ