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西郷信綱著作集(第1巻) の商品レビュー

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2024/01/24

『古事記の世界』(1967年、岩波新書)、『古事記研究』(2002年、未来社)の二著のほか、『古事記注釈』(全8巻、ちくま学芸文庫)の解説の一部が収録されています。 著者は『古事記』という作品を、どこまでも「神話」としてあつかうというスタンスをとっています。こうした姿勢は、著者...

『古事記の世界』(1967年、岩波新書)、『古事記研究』(2002年、未来社)の二著のほか、『古事記注釈』(全8巻、ちくま学芸文庫)の解説の一部が収録されています。 著者は『古事記』という作品を、どこまでも「神話」としてあつかうというスタンスをとっています。こうした姿勢は、著者の『古事記の世界』とならんで長く読み継がれている上田正昭の『日本神話』(岩波新書)と対照的です。上田は歴史学者としての立場から、記紀神話が『古事記』および『日本書紀』が古代の政治状況のなかでどのようにして編纂されていったのかということを解明しています。他方著者は、「古事記がそれの結集された時代のいわば現代文学、現代文化である点を忘れてはならない」と述べており、古代の人びとが神話を通して表現している内容そのものを、あくまで作品に内在的な立場から解き明かすことをめざしています。 こうした著者の姿勢は、津田左右吉による「神代史」という概念に対する批判にも読みとることができるように思います。津田は、記紀神話があくまで史実とは異なることを認めつつも、歴史学的な見かたを延長するかたちで、記紀神話の叙述を把握しようとしていました。しかし著者は、とりわけヤマトタケルについての考察を通して、神々の位置づけられる無時間的な神話の世界と、人間たちの営みによって紡がれていく歴史的な世界を区別し、さらに両者のあいだに英雄時代を置くことで、『古事記』三巻のそれぞれの特徴づけをおこなっています。

Posted byブクログ