1,800円以上の注文で送料無料

悪魔に食われろ青尾蠅 の商品レビュー

3.3

10件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    4

  3. 3つ

    5

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2020/12/23

早すぎた傑作、幻の名作であるこの本が文庫化されたときは狂喜した。精神病院から退院したハープシコード奏者のエレンは夫の待つ家に帰り演奏活動の再開を目指す。しかしおかしなことが彼女の周りで起き彼女を不安に陥れていく。封印されていた過去が悪夢とともに甦える。バーディンはヒッチコックがマ...

早すぎた傑作、幻の名作であるこの本が文庫化されたときは狂喜した。精神病院から退院したハープシコード奏者のエレンは夫の待つ家に帰り演奏活動の再開を目指す。しかしおかしなことが彼女の周りで起き彼女を不安に陥れていく。封印されていた過去が悪夢とともに甦える。バーディンはヒッチコックがマークしていたと言われる作家である。ジョルジュフランジュの映画のような怖さを持ち、出版された1940年代には複雑すぎた、今なら受け入れられる狂気と現実の狭間をスリリングに描いている。

Posted byブクログ

2020/11/22

本書の解説およびネタバレや他の方の感想も読ませてもらって…自分がこんな薄い本をこんなにも読みにくいと思ったのはなぜだろうと思ってしまった。 たしかに時代的には「早すぎた傑作」なのかもしれないが、全てが判明していくのが最終章だからか、判明してみれば(今から見れば)よくあるネタだから...

本書の解説およびネタバレや他の方の感想も読ませてもらって…自分がこんな薄い本をこんなにも読みにくいと思ったのはなぜだろうと思ってしまった。 たしかに時代的には「早すぎた傑作」なのかもしれないが、全てが判明していくのが最終章だからか、判明してみれば(今から見れば)よくあるネタだからか……個人的には辛い読書だった(笑。止めればいいんだけど「何が傑作なんだろう?」という興味でひたすら読み進んできた(亀のごとくジリジリと)。 たしかにネルが登場してからの展開は非常に魅力的でまさに「悪夢」のようだが、私の理解力がついていけなかった。解説にあるような伏線にも気づけなかったし(汗。

Posted byブクログ

2017/10/08

Twitterでタイトルを知って気になったので、 絶版につき古本を購入して読了。 三人称で叙述されるが、もし一人称だったら 「信頼できない語り手」ジャンルにカテゴライズされるであろう小説。 原著の刊行は1948年。 戦争の傷跡と、 人口に膾炙したフロイトの精神分析(夢判断)など...

Twitterでタイトルを知って気になったので、 絶版につき古本を購入して読了。 三人称で叙述されるが、もし一人称だったら 「信頼できない語り手」ジャンルにカテゴライズされるであろう小説。 原著の刊行は1948年。 戦争の傷跡と、 人口に膾炙したフロイトの精神分析(夢判断)などの影響で勃興した 文芸の一ジャンル「ニューロティック(神経症的)スリラー」もの。 ハープシコード(チェンバロ)奏者エレンは精神病院を退院し、 迎えにきた夫と共に帰宅したが、 楽器の鍵が見つからないやら何やら、しっくり来ない。 夫の姉の家を訪問すると、後から現れた客は昔の知り合い、 但し、二度と会いたくない、会うはずがなかった男で……。 表題は、 カントリーミュージック歌手である、この男ジムが得意とするナンバー "Devil Take the Blue-Tail Fly"。 エレンは自分がかつて「青尾蝿」に扮し、 ジムの歌に合わせてステージで踊ったことを思い出す。 しかし、蘇った記憶はそればかりでなく……。 普通の人が一時的に調子を崩して回復したというより、 親のせいで元々精神状態の不安定だった女の子が そのまま大人になり、落ち着いていた時期もあったけれど、 心はずっと壊れたままだった――と解釈するのが妥当か。 安定していたのは夫の愛を信じていたからであり、 青尾蝿がブンブン飛び回るようになったのは 夫が不貞を働いたと察したから……なのだろう。 くわばらクワバラ(笑)。

Posted byブクログ

2013/04/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

精神病院に入院して二年。ようやく退院が許されたハープシコード奏者のエレンは、夫の待つ家に帰り、演奏活動の再開を目指す。だが楽器の鍵の紛失に始まる奇怪な混乱が身辺で相次ぎ、彼女を徐々に不安に陥れていく。エレンを嘲笑うがごとく日々増大する違和感は、ある再会を契機に決定的なものとなる。

Posted byブクログ

2011/11/09

以前翔泳社から単行本が出たとき、タイトルと表紙にひかれてジュンク堂で座り読みしたのだが、二三十ページで挫折。文庫になってるのを知り、購入して再挑戦した。 ページをめくるほどに不穏な気配はつのり、瘴気が立ちこめてくる。怖いもの見たさで最後まで読んでしまって、悪い夢を見るんじゃない...

以前翔泳社から単行本が出たとき、タイトルと表紙にひかれてジュンク堂で座り読みしたのだが、二三十ページで挫折。文庫になってるのを知り、購入して再挑戦した。 ページをめくるほどに不穏な気配はつのり、瘴気が立ちこめてくる。怖いもの見たさで最後まで読んでしまって、悪い夢を見るんじゃないかとちょっと真剣に心配になった。 執筆当時はともかく今となってはさほど珍しい仕掛けではないし、分類すればサイコスリラーということになるんだろうが、そういうものにおさまらない凄みがある。怖ろしかった…。

Posted byブクログ

2011/05/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ニューロティック・スリラーというジャンルやそうです。 ヒロインの幻覚か妄想か、果たして現実がおかしいのか。 読んでいる側が翻弄されます。参った。

Posted byブクログ

2011/06/09

時系列がバラバラな上に、精神を病んだ主人公の女性の言葉を信じていいのか、幻覚か現実か分からず、終盤まで惑わされました。 非常に後味の悪い結末ですが、それまでの違和感を収束させる真相と、精神疾患の描写は迫力があります。 暗く陰鬱な雰囲気が素敵なサスペンスです。

Posted byブクログ

2011/03/06

この作品が書かれた当時(1940年代)はこのようなニューロティック・スリラーが流行っていたらしい。 精神病院からようやく退院したハープシコード奏者のエレン。愛する夫の待つ家に帰り演奏活動の再開を目指すが、奇妙な違和感が日々強くなり… エレンの視点で物語が語られていく。過去と現在が...

この作品が書かれた当時(1940年代)はこのようなニューロティック・スリラーが流行っていたらしい。 精神病院からようやく退院したハープシコード奏者のエレン。愛する夫の待つ家に帰り演奏活動の再開を目指すが、奇妙な違和感が日々強くなり… エレンの視点で物語が語られていく。過去と現在が混在している上に、見るからに”信頼できない語り手”なので何が現実で何が妄想なのか戸惑う。中盤、シュールレアリズムのような幻想的な描写が少々読みづらかったが、ラストでエレンの感じていた違和感の正体が判明してなるほどと思った。確かに早すぎた傑作と言えるかもしれない。

Posted byブクログ

2011/01/28

退院日の朝、精神病院のベッドで目覚めたエレンは純粋な喜びを感じていた。これで愛する夫のもとに帰れる。 退院後、優れたハープシコード奏者であったエレンは、演奏活動を再開する。 しかし、音楽も、夫との生活も、以前とはすべてが微妙に違っていた。 不安に怯えるエレンの前に、ひとりの男が現...

退院日の朝、精神病院のベッドで目覚めたエレンは純粋な喜びを感じていた。これで愛する夫のもとに帰れる。 退院後、優れたハープシコード奏者であったエレンは、演奏活動を再開する。 しかし、音楽も、夫との生活も、以前とはすべてが微妙に違っていた。 不安に怯えるエレンの前に、ひとりの男が現れる。 かつて自分が殺したかもしれない男ジミー。 本当にエレンはジミーを殺したのか?今までの違和感は何なのか? その謎の答えは中盤に邪悪な存在として登場するが、真実は包括的に用意されている。 これこそが著者の目的であり、50年の時を経て復権を果たすほどの高評価のゆえんだろう。 そして、それはあまりに残酷で容赦がない。 サイコミステリというよりはホラーに近い。 著者のバーディンは裕福な家に生まれたが、父親が死んだことで一家は窮することになったとか。 バーディンは苦労を余儀なくされるが、中でも一番の不幸は、母親が偏執狂分裂症を発症したことだろう。 本書にみられるエレンの様子や心情の克明な描写は、母親の観察から得られたものだ。 この著者の背景が本書をより一層救いのないものにしている。

Posted byブクログ

2011/07/17

精神病院を退院したハープシーコード走者のエレンは、帰宅した家で、自分を待っていた夫に、違和感を感じる。 それがやがて…。 という訳で、怖いです。 今読むとよくあるネタなんだけど、それが本当に見事に料理されてます。さりげないシチュエーションが、何気ない一文が、恐怖を煽ります。 そ...

精神病院を退院したハープシーコード走者のエレンは、帰宅した家で、自分を待っていた夫に、違和感を感じる。 それがやがて…。 という訳で、怖いです。 今読むとよくあるネタなんだけど、それが本当に見事に料理されてます。さりげないシチュエーションが、何気ない一文が、恐怖を煽ります。 そして何より怖いのが、治療と芸術的才能の二者択一。 自分は芸術家じゃないけど、それでも絵を描きながら正気を失っていく方を選ぶでしょうねえ。 なのでエレンが失ったものに愕然とする気持ちが痛いほど分かって、これも怖かったです。

Posted byブクログ