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女哲学者テレーズ の商品レビュー

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2020/05/09

リベルタン文学とフランス革命 ―『女哲学者テレーズ』を通して― 関谷 一彦 18世紀フランスのリベルタン小説:『哲学者テレーズ』 関谷 一彦

Posted byブクログ

2012/04/03
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※このレビューにはネタバレを含みます

少し読んだ後に時間が経過してしまったので、うる覚えの中での記述。 キリスト教では性も禁欲たれと推奨される。しかし何故神は禁欲を求めるのか?性という生命に共通の存在を、どうして汚らわしいものであるかのように扱うのか。この作品ではそのような問いを掲げ、禁欲的な考え方に真っ向から反対して根の入った一撃を加える。 神は無駄なものを一切生み出さないのであれば、自然は肯定されるべきであろう。従って、自然を抑圧する行為である禁欲は、神の冒涜である。性もまた神の創造による賜物であって、性とはつまり肯定されなければならないものである。 あからさまな性描写=告白という形で物語は記述されて展開されていく。 単なるポルノではなく、痛烈な政治批判でもあり、また宗教的ロジックに汲みしながらもキリスト教に対しては一貫して批判的なのは誰が読んでも明らかである。なおこの小説自体からは分からないことであるが、当時実際にあった事件を大胆に取り込んで物語を展開しており(解説参照)、センセーショナルな性格も帯びている。 最終的には神は我々が祈ったから何かをするというような、人間の道具ではないために、祈りや何もかもは一切不要であり、我々は「自然」を相手に生きて行くしかない、社会的な調和を乱さない程度に性なりなんなりを楽しめば良いという結論を打ち出す。当時大ヒットしたらしいが、(研究の結果ある程度の検討はつけられているも絶対的には)作者は不明である。 17世紀の作品なので、「自然」という概念がもてはやされた時期である。しかしホッブズ/ロック/ルソーのような政治思想だけを参照していたのでは分からないような「自然」の扱いがここには描かれており、読んでいて非常に興味深かった。

Posted byブクログ