功利主義論集 の商品レビュー
「セジウィックの論説」、「ベンサム」、「ヒューウェルの道徳哲学」、「功利主義」の4つの論考と2つの小論を収録する。「満足した豚よりも不満を抱えた人間の方がよく、満足した愚か者よりも不満を抱えたソクラテスの方がよい」という周知の質的快楽重視の議論を含む「功利主義」を中心として、ミル...
「セジウィックの論説」、「ベンサム」、「ヒューウェルの道徳哲学」、「功利主義」の4つの論考と2つの小論を収録する。「満足した豚よりも不満を抱えた人間の方がよく、満足した愚か者よりも不満を抱えたソクラテスの方がよい」という周知の質的快楽重視の議論を含む「功利主義」を中心として、ミルがベンサムとは異なる独自の功利主義論をどのように構築していったのかを示す論考集である。各論考とも、功利主義一般(特にベンサムのそれ)を批判する「直観主義」者に対する再批判を含んでいるが、ミルはその際にベンサムの立場をそのまま踏襲するのではなく、ベンサムの思想にも少なからず一面性が見受けられると批判したうえで、直観主義に対抗して功利主義の妥当性を主張する。ミルがいかにベンサムとは異なる立場を確立しようとしていたのかを見るうえでは、収録された論考の「ベンサム」が非常に参考になるだろう。
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