1,800円以上の注文で送料無料

カンディード の商品レビュー

3.6

20件のお客様レビュー

  1. 5つ

    2

  2. 4つ

    6

  3. 3つ

    9

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2021/01/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ヴォルテール(本名:フランソワ=マリ・アルエ,1694-1778)の哲学コントが6篇はいっている。どれも傑作である。 「ミクロメガス」は身長38kmのシリウス星人が土星人と一緒に地球にやってきて、そこに住む微生物(人類)と自然科学や霊魂について語るという話です。 「この世は成り行き任せ」はペルシャが舞台で、人間社会は悪と善の混合物であるという話、「ザディーグまたは運命」はカルデア人ザディーグが身に具えた美徳ゆえに数々の不幸を招く話です。恋人を助けてケガをし、宰相となって賢い政治をすれば王妃に慕われ、王から暗殺されそうになるなど、万事がこんな感じです。最後は天使に会い、「善を生まない悪はない」とさとされます。 「メムノン」は賢者になろうした男の話、決心したその日に女性に騙され、片目をつぶされ、大金をすります。 「スカルマンタドの旅物語」は世界中を旅して、人類の悪逆な所行をみた男の話、最後はアフリカの海賊にさらわれ、奴隷になります。 最後の「カンディード」は、ドイツの田舎、ウェストファリアで純朴に暮らしていた召使いの青年が、令嬢キュネゴンドを愛したため、屋敷から放り出され、ブルガリア軍に入り、戦争を生き残り、オランダにいき、リスボンで大地震にあい、南米に旅立ち、いろいろあって、ペルーのエルドラードに入り、当地の完璧な幸福に飽いて、また、フランス・イギリス・ヴェネチアと旅をつづけます。その間に人類の悪と愚かさをさんざん体験します。さいごにコンスタンチノーブルで醜く変わり果てたキュネゴンドと再会します。結局、この世の悪から身を守るには、労働をするしかないという結論になります。全編を通じて、ヨーロッパ人の悪を指摘しています。異端者をすぐに死なないように壮麗にとろ火で火刑にしたりするのは、その最たるものだと思う。ヴォルテールは信じていたライプニッツの最善説(この世界は現にある状態が最も善であるという予定調和にもとづいた学説)を、「カンディード」では批判し、結局、幸福は自分の労働でつくりだすしかないのだといっています。中国についても「理」や「天」の考え方が少しでてきて、ヨーロッパよりましだけど、人間社会だから、悪はあるという立場です(ザディーグ)。日本の「踏み絵」についてもでてきます。

Posted byブクログ

2011/12/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

3月11日の大震災以降、この本が新聞や雑誌で取り上げられることがあった。フランスの啓蒙思想家がリスボンを襲った1755年の震災を契機に考え方を変え世の中は何のために存在し、何が正しいのか逡巡し本書ができたからだ。 ヨーロッパを脱出し、ついに南米の原住民のところまで行くと何かの本に書いてあったのでとても興味を持った。なにせ私は震災以降、文明の意味を求めてアマゾンインディオの探検記ばかりよみふけっているからである。 さてこの本であるが人を疑うことを知らなないカンディードが楽園のような故郷を素敵な夫人の手に接吻をしたために屋敷をおわれ、行く先々でとんでもない苦労をうけるという話である。苦労をうけながらそれも神の見えざる手によって今そのときは不幸に思えても実は最善の結果をもたらすという形而上学者の説をくりかえし吟味しながら話は展開する。 本当に これでもか これでもかと 苦労すれば 苦労から抜け出し歓待され、またどん底に落ちるという話である。これが仏教なら無常のひとことですせてしまうのだが・・・。 ライプニッツや百科全書派 ミルトンなど 様々な知識人のものの見方が 引用されるが、いつの時代だって「何が正しいのか?」という苦闘があったことがよくわかる。 最後に 畑を耕すのが善といったまるでトルストイのような境地にたっする。こういう壮大なほら話はレトリックがあじわえないと真に楽しむのは難しい。典故を楽しむという習慣は昔は普通であったこともよくわかる。 権力ではなく生活に至上の価値をおくこの本こそ今の日本人が読むべき本と言える。

Posted byブクログ

2011/05/26

 フランスの代表的啓蒙思想家ヴォルテールの代表作のひとつです。当時の世相を前提にした風刺や哲学的な含意も豊富に盛り込まれているのでしょうが、そのあたり、残念ながら、私の知識では十分に判読はできませんでした。ただ、思ったより読みやすかったですね。SF小説や長大な冒険譚のようでもあり...

 フランスの代表的啓蒙思想家ヴォルテールの代表作のひとつです。当時の世相を前提にした風刺や哲学的な含意も豊富に盛り込まれているのでしょうが、そのあたり、残念ながら、私の知識では十分に判読はできませんでした。ただ、思ったより読みやすかったですね。SF小説や長大な冒険譚のようでもありました。

Posted byブクログ

2010/08/13

オペラ『キャンディード』を観る前に、原作であるヴォルテールの『カンディード』を読み終わりました。 ウェストファリア地方の男爵家で、男爵の縁者である純朴な若者カンディードは、男爵家の息子や娘とともにでバングロスという哲学者から「すべては善である」という最善説を子供の頃から教えられ...

オペラ『キャンディード』を観る前に、原作であるヴォルテールの『カンディード』を読み終わりました。 ウェストファリア地方の男爵家で、男爵の縁者である純朴な若者カンディードは、男爵家の息子や娘とともにでバングロスという哲学者から「すべては善である」という最善説を子供の頃から教えられ、男爵家一族とともに幸せに暮らしていた。しかし、男爵家の美しい娘キュネゴンドと、ふとしたきっかけでキスをしてしまい、それを男爵に見つかり、男爵家から追放されてしまう。 幸せな生活から一変、無一文で追放されたカンディードは、さまざまな国を渡り歩きながら、世間にはびこる不幸や悪を目の当たりにしていき、子供の頃から教えられた最善説に疑問を持ち始めていた。 またキュネゴンドも、過去の幸せな生活から一変、生きるために様々な男達の間を渡りあるいていた。 そんな二人が再会を果たし、最後には、小さな土地を自分たちの手で畑を耕すことに幸せを見いだす。 話の中では、バングロスの唱える最善説に対して、マルチンはどんなに金や名誉を持っている人物でも自分を不幸であると思っているという議論をたたかわせ、そんな中で、カンディードは、人生は自分の手で切り開いていかないといけないことに気づかされる。本当の幸せとはどういうものかと考えさせられる話でした。

Posted byブクログ

2011/06/23

天然の人が、善意で懸命に努力しても、うまくいくとは限らない。 利用されたり誤解されたり。 でも「真面目に働くのがいい」という結論に到達したのは正解だと思う。 与えられた条件下から最大値の幸福を抽出する生き方。 キュネゴンド嬢も美貌はなくしても、勤勉な働き手になったんだもんね。 そ...

天然の人が、善意で懸命に努力しても、うまくいくとは限らない。 利用されたり誤解されたり。 でも「真面目に働くのがいい」という結論に到達したのは正解だと思う。 与えられた条件下から最大値の幸福を抽出する生き方。 キュネゴンド嬢も美貌はなくしても、勤勉な働き手になったんだもんね。 それはとても価値のあることだ。

Posted byブクログ

2010/05/27

性善説に基ずく荒唐無稽な物語。サドの「悪徳の栄え」と「千夜一夜物語」を足して割って予定調和で味付けしたような、、いろいろと面白かった。 「‥労働はわたしたちから三つの大きな不幸、つまり退屈と不品行と貧乏を遠ざけてくれますからね」とトルコ人は答えた。そして、唐突にカンディードは言...

性善説に基ずく荒唐無稽な物語。サドの「悪徳の栄え」と「千夜一夜物語」を足して割って予定調和で味付けしたような、、いろいろと面白かった。 「‥労働はわたしたちから三つの大きな不幸、つまり退屈と不品行と貧乏を遠ざけてくれますからね」とトルコ人は答えた。そして、唐突にカンディードは言う。「ぼくはまた、ぼくたちの庭を耕さなければならないことも知っています」最後は労働讃歌で終わります。

Posted byブクログ

2010/05/06

内容(「BOOK」データベースより) 人を疑うことを知らぬ純真な若者カンディード。楽園のような故郷を追放され、苦難と災厄に満ちた社会へ放り出された彼がついに見つけた真理とは…。当時の社会・思想への痛烈な批判を、主人公の過酷な運命に託した啓蒙思想の巨人ヴォルテール(169...

内容(「BOOK」データベースより) 人を疑うことを知らぬ純真な若者カンディード。楽園のような故郷を追放され、苦難と災厄に満ちた社会へ放り出された彼がついに見つけた真理とは…。当時の社会・思想への痛烈な批判を、主人公の過酷な運命に託した啓蒙思想の巨人ヴォルテール(1694‐1778)の代表作。作者の世界観の変遷を跡づける5篇のコントを併収。新訳。 目次 ミクロメガス―哲学的物語 この世は成り行き任せ―バブーク自ら記した幻覚 ザディーグまたは運命―東洋の物語 メムノン―または人間の知恵 スカルマンタドの旅物語―彼自身による手稿 カンディードまたは最善説(オプティミスム)

Posted byブクログ

2010/02/03

楽観的な態度を意味するのではなく、「すべては善である」という哲学上の立場の「最善説」を指しており宮廷生活の空しさに気づいている描写が印象深かった。

Posted byブクログ

2012/02/18

 ルソーと共にフランス革命を推進してきたヴォルテール(1694-1778)が、主人公カンディードの運命に託して、当時の政治・社会・思想(特にライプニッツの予定調和説)を批判した諷刺小説。カンディードは様々な困難に出会い、幾たびか破局に陥りながらも屈せず、働く喜びを次第に体得してゆ...

 ルソーと共にフランス革命を推進してきたヴォルテール(1694-1778)が、主人公カンディードの運命に託して、当時の政治・社会・思想(特にライプニッツの予定調和説)を批判した諷刺小説。カンディードは様々な困難に出会い、幾たびか破局に陥りながらも屈せず、働く喜びを次第に体得してゆく。作品を貫く気品と機智と明晰さはフランス文学のよき伝統を感じさせる。

Posted byブクログ

2009/10/04

この波乱万丈な展開も全て「予定調和」。これを読んでから私も色んなことを都合よく予定調和ですますようになってしまいました。

Posted byブクログ