シュルレアリスム簡約辞典 の商品レビュー
シュールレアリスムという20世紀前半の美術と詩などの表現にかかわる「運動」の参加型「辞典」。シュールレアリスムの美術と言語が「編集」方針があるのかないのか外部のものにはっきりとは判らないが、纏められている。■フランスの詩人エリュアールの「自由ーーー人間の色」「蝿についての考察」な...
シュールレアリスムという20世紀前半の美術と詩などの表現にかかわる「運動」の参加型「辞典」。シュールレアリスムの美術と言語が「編集」方針があるのかないのか外部のものにはっきりとは判らないが、纏められている。■フランスの詩人エリュアールの「自由ーーー人間の色」「蝿についての考察」など、辞典という表記より、表現のサンプルとしての辞典。言語表現に工夫や、一捻りしてみたい時などに、参照すると、言語の表現世界が広く深く可能性を提示してくれるものになるだろう。言葉の遊戯が、様々にされていて、非情に面白い。■但し、アンブローズ・ビアスの「悪魔の辞典」やラ・ロシュフコーの「箴言集」、芥川龍之介の「人生はマッチに似てゐる。重大に扱ふには莫迦々々しい。重大に扱はなければ危険である。」「正義は武器に似たものである。武器には金を出しさへすれば、敵にも味方にも買はれるであらう。」を収める「侏儒の言葉」などの箴言集とは大きく異なり、言語の遊戯集として眺めるのが本書に対する正鵠を得た見方であるだろう。というのも、理論の当否とは別に、シュールレアリスムの表現は、ブルトンが述べていたように精神の革命であり、それは夢のオートマティズムによってなされるという論理と対立物の統一、もしくは、無関連なもの同居によって、「人間」の新たな発見に合ったからである。そこには、箴言といった思想の明言とは違った表現にならざるを得ないことにある。■ともあれ、表現としての言葉に、関心を持つなら、紐解いてみる価値は十分にある。言葉の遊戯を通じての感受性の開拓、再編などに関心があれば格好の材料になる辞典である。■これも加えて貰いたかったのがマルクスの言葉。「人間の本質とは、個々の個人の内部に宿る抽象体なのではない。それは、その現実の在り方においては、社会的諸関係の総体なのである」(『新編輯版 ドイツ・イデオロギー』岩波文庫 廣松渉編訳 237頁)
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