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話の終わり の商品レビュー

4.1

14件のお客様レビュー

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2023/02/01

思い出話が語られるだけで大きな展開はないので、途中ちょっと飽きかけたけど、繊細な表現の数々が面白くて最後まで読めた。文章を楽しめる作品。

Posted byブクログ

2022/01/27

 この本はかなりいい。他人が書いたとりとめもない日記を延々読んでいるような気分。物事の捉え方とか言葉の選び方の点で自分と重なるところが多くて、十秒に一回くらい禿同した。眠れない夜とかに永遠に読みたい感じ。 --- p.16  そのとき彼と何を話したのかは覚えていない。もっともあ...

 この本はかなりいい。他人が書いたとりとめもない日記を延々読んでいるような気分。物事の捉え方とか言葉の選び方の点で自分と重なるところが多くて、十秒に一回くらい禿同した。眠れない夜とかに永遠に読みたい感じ。 --- p.16  そのとき彼と何を話したのかは覚えていない。もっともあの頃の私は、初対面に近い人に会うと、いろいろな雑念に気を取られて話の内容はまるで記憶に残らなかった。話しているあいだ自分の服や髪が変でないかと気になったし、立ち方や歩き方、首と頭の角度、足の位置までもが気になった。(中略)そういったことを考えるので手いっぱいで、相手の言ったことは、それに返事をするあいだは覚えているが、それ以上は考えないので、あとまで記憶に残らなかった。 ---  と、途中までは思っていたのだけれど。途中までは。  主人公は30代半ばの女性。教え子で12歳年下の大学生と出逢ってすぐ互いに惹かれ合い、その日のうちに恋人関係になる。しかしこの女性なかなかの情緒不安定。一緒に過ごしているときは彼を鬱陶しく感じてぞんざいに扱い、離れていれば会いたくてたまらなくなって彼の姿を探し求めて闇雲に街を彷徨う。一人で文章を書いたり読書したりして過ごすのが好きな彼女と、社交的で友人が多い彼。いつしかすれ違いが続くようになり、彼女が旅に出たことをきっかけに二人の関係は終焉を迎える。ここまではよくある話。 --- p.25  まだ何ひとつ始まっていなかったあの時間こそが、ある意味では最良の時だったのかもしれない。二本めのビールを開けたとき、私たちは秋の終わりから冬にかけて起こったその後のすべての出来事もいっしょに開けてしまった。けれどもまだ二本めを開けずに座っていたあの島のような時間には、幸福だけが二人の目の前にあって、二本めを開けないかぎり、それは始まらずにいつまでもそこにあった。 ---  この本の醍醐味はその後、一人になった彼女が異常なまでの彼への執着を見せる展開。職場へ押しかけ、行きつけのスーパーで待ち伏せをし、パーティに誘い、彼が新たな恋人と住む家へ夜中に偵察に行き、あたかもそれが自分の使命であるかのごとく執拗に付け回す。友人たちとは疎遠になり、孤独を深め完全なるストーカーと化した彼女の奇行の数々が、感情を排除したフラットな語り口で淡々と語られるのが非常に不気味でシュール。え、なんか変なことしてます私?っていうテンション。  ひとつ解せない、というか逆にそれもそれで男女関係の「リアル」なのかもしれないなあと感じたのは、彼女のストーカー行為の数々に気付きながらも彼がこれっぽっちも嫌がっていない点。新しい恋人が居ながら思わせぶりな態度を続け、まだ一筋の希望があるような素振りを見せ続ける。待ち伏せしていた彼女の車に普通に乗るし、車内で肩は抱くし、家に入るし、家に入れる。うーん、ここまで奇々怪界なラブストーリー、読んだことがない、、、  作品の終盤、ある程度諦めがつき冷静さを取り戻してきたように見える彼女が語る「書くこと」の意味付けにはとても共感した。ある種の自浄作用のような。その紙の上に怒りとか虚しさとか苦しみとかそういう負の感情を全て置いてくるつもりで書くのだけれど、書いているうちに精神がどんどんマイナスな方向に行ってしまって、結局本末転倒ということも多々ある。書くと残るしね。時間が風化してくれることも文字にしてしまうとずっと消えないからいいのか悪いのかわからない。それでも書く。そうするしかないから。 --- p.226  まず最初に怒りがあり、ついで悲しみが膨らんでいき、あまりに悲しみが大きくなると一部だけでも書き留められないかと考える。そして気持ちなり記憶なりを正確に書き留めることができると、しばしば胸の中に穏やかな気分が広がった。書くときには細心の注意を払う必要があった。うんと丁寧に書くのでなければ、悲しみをその中に移すことができなかった。私は激しさと用心深さを同時に備えて書いた。書いていると、身内に力がみなぎってきた。一パラグラフ、また一パラグラフと前のめりになって書くうちに、自分はいまとても価値あるものを書いているのだという気がしてきた。だが書くのをやめて頭を上げると力の感覚は消え、つい今しがた書いたものに何の価値も感じられなくなった。 ---  起こったことも感じたこともひとつも漏らさずにとにかく全部書く、という執念と狂気を感じた作品だった。眠れない夜とかに永遠に読みたくはないわ。

Posted byブクログ

2019/02/16

初リディア・デイヴィスが長編。しまった。短編集から読んでおけばよかった。最初の方で語り手が読んでいる、英国在住で英語で書いている日本人作家って、カズオ・イシグロではないよね。イシグロは英国人だし、作風も違うし、架空の作家かな。彼と出会うことを期待し続ける語り手は、何か山崎まさよし...

初リディア・デイヴィスが長編。しまった。短編集から読んでおけばよかった。最初の方で語り手が読んでいる、英国在住で英語で書いている日本人作家って、カズオ・イシグロではないよね。イシグロは英国人だし、作風も違うし、架空の作家かな。彼と出会うことを期待し続ける語り手は、何か山崎まさよしの歌みたい。恋愛について語るより、小説を書くことについて語る方が興味深かった。こんなに苦い恋の話は初めて。お金にだらしない男ってやだな。『ゴーン・ガール』の夫を思い出す。

Posted byブクログ

2016/05/29

5/28 読了。 三十五歳の女性大学講師が、十二年下の男子大学生と付き合いだす。二人の関係ははじめから食い違っていた。傷付くのは嫌だが若い男に対する所有権は主張したい女と、年上の女と付き合う恩恵を受けつつも対等に扱われたいと望む男は、ついに修復不能な倦怠に達する。それでも男への所...

5/28 読了。 三十五歳の女性大学講師が、十二年下の男子大学生と付き合いだす。二人の関係ははじめから食い違っていた。傷付くのは嫌だが若い男に対する所有権は主張したい女と、年上の女と付き合う恩恵を受けつつも対等に扱われたいと望む男は、ついに修復不能な倦怠に達する。それでも男への所有欲を断ち切れない女はストーカーまがいの行動にまで出るが、やがて男が同世代の女と結婚したことを知る。 という歳の差恋愛を扱った小説なのだが、構成は独特。完全に恋が終了した時点から過去を振り返り、<話の終わり>はどこにあるのかと思索をめぐらせる女の視点で書かれた断章に、それを小説に仕立てる作業の最中らしい女性作家の視点で書かれた断章がランダムに挟まってくる。女性作家は不本意な翻訳の仕事を受けながら小説を書いており、執筆中から批判的な読者である夫の意見に悩まされている。恋愛小説の主人公の女と、女性作家が同一人物なのかは明示されていないのだが、夫の拒否反応を見るに彼女の過去の恋愛に材を採った小説ではあるらしい。 となると今度は、女性作家と著者のリディア・デイヴィスは同一人物か、という疑問が湧いてくる。著者はフランス文学の研究者で翻訳の仕事のかたわら小説も書いている女性作家で、確かに作中の女性作家と重ねてしまいたくなる。だが、もし仮にこの三人が全て一人の女性の経験から生み出されたキャラクターであるとしても、細部の曖昧になった記憶を探り、もはや遠い人物のように感じられる過去の自分の感情を想起し、「書く」という作業に還元していくうちに、同定は難しくなっていくだろう。それは、終わってしまった恋の物語における本当の<話の終わり>を明確に指し示すことぐらい、不可能なことなのだ。

Posted byブクログ

2015/11/23

大学の教員であり、翻訳者の女性が年下の学生と恋人同士となるも、数ヶ月ほどで捨てられてしまう、ありきたりで面白みのない話だ。 が、何年経っても、彼への執着を断ち切れない彼女は、このことを小説を書こうと試みる。彼女の愛情、未練、後悔、恨みなどの揺れ動く想いが延々と詳細に描出されていく...

大学の教員であり、翻訳者の女性が年下の学生と恋人同士となるも、数ヶ月ほどで捨てられてしまう、ありきたりで面白みのない話だ。 が、何年経っても、彼への執着を断ち切れない彼女は、このことを小説を書こうと試みる。彼女の愛情、未練、後悔、恨みなどの揺れ動く想いが延々と詳細に描出されていく。 特に別れを告げられたあとの、何も手につかず、ストーカー的な行き過ぎた行動をとってしまう辺りが痛々しい。 ありきたりで面白みのない話を、女性の主観的な内面描写でここまで書けるのは、素晴らしい。

Posted byブクログ

2013/08/16

女性が十二年下の男性と恋に落ち、それが朽ちて"次"に進むため自ら"終わり"を定義していかねばならない、そう思い立ち女性が"終わり"を綴っていく、それがこの本である。 情緒的にならないよう、メモを手繰り寄せながら、何度も何...

女性が十二年下の男性と恋に落ち、それが朽ちて"次"に進むため自ら"終わり"を定義していかねばならない、そう思い立ち女性が"終わり"を綴っていく、それがこの本である。 情緒的にならないよう、メモを手繰り寄せながら、何度も何度も反芻しながら、様々な手段を用いて物語は進んでいく。 物語では、私と私を見ている私が介在し、それらのもつ鮮明と模糊の落差たちによって制御され、時にだるさを覚えるが、それでも緻密さに対する姿勢が手に取るようにわかるし、それを可能とさせない言葉の不自由さ(または解れ)が新しい歪んだ世界観を作っていると、どきどきする(解れの矛盾をひとつひとつ砕いていく作業もまた魅力的であったといえる)。 ───女性が書き起こそうとするたび、綴った文字、少なくとも女性の中ではひたむきに書いたはずの言葉たちはすれ違いを起こし、緻密さは解れを起こす。 そして女性は、私ではない何かが書いているのではないか、私の中にいる何かが(もちろん私を見ている私ではなく、無意識にさまよっている何かが)いるのではないかと思い始める。 それらはひとつじゃなく、様々な部分からずれはじめ、色々な解れがレイヤー化され、(女性がそう思ったかはわからないが、あくまで憶測では)複雑な世界観を生み出したのちに気づくのだろう───様々なメモなど選択肢による言葉は、その言葉の不自由さをもって明確な"( 私の )終わり"に近づくんではないかと─── 女性が置く言葉は、女性が見て感じたことでしか形成されないのだとすれば、二次的な"終わり"でしかなく、女性自身の終わりには近づかないだろう。 そして小説にすることによる障害、言葉の不自由さをもって、解れによって初めて女性は女性の"終わり"を迎え、最後女性は女性の中で気付き(おそらく)、儀式的な何か(本の中だと紅茶であった)で幕を閉じる。 だとすれば、この解れってなんなのだろう。 読んでるうちに錯覚という眩暈という、とてもフィクションとは思えない実体を持った小説に、ただ、何者なんだ…、と感服しました。 打ち込んでるこれもまた、解れが起きているんだろうと思うだけ、私もまた頭をかき乱される。

Posted byブクログ

2013/06/06

一人の中年女性の愛の始まりから終わりまでを描いた本。女性の独白と女性が書いている小説が混ざって、奇妙な読み心地を生み出している。

Posted byブクログ

2012/04/30

30代半ばの翻訳家であり、大学教師でもある主人公「私」と学生の年下男性との恋が始まって終わるまでの顛末を「私」が、恋が終わって何年も経ってから記憶を呼び覚ましながら小説に書く小説。 「私」がひどく自意識過剰で最後の方ではストーカーみたいになってしまうのだけど、その感情の揺れが感...

30代半ばの翻訳家であり、大学教師でもある主人公「私」と学生の年下男性との恋が始まって終わるまでの顛末を「私」が、恋が終わって何年も経ってから記憶を呼び覚ましながら小説に書く小説。 「私」がひどく自意識過剰で最後の方ではストーカーみたいになってしまうのだけど、その感情の揺れが感情的ではなく淡々と書かれるので逆に凄みがある。 文章自体も極度に説明的で、慣れるまでは奇妙な感じだったんだけど、だんだんと心地よいリズム感にはまって魅力的に感じた。 面白かったのだけど、なぜだか周辺的なことが気になってしまって、入り込みにくい部分もあった。ガソリンスタンドの仕事を「下等で屈辱的な仕事」と読んでしまうあたりとか、年中パーティばっかりやっているようなインテリで洗練されたライフスタイルとか。僕自身のリア充コンプレックスが強すぎるせいなんだろうけど。 あと、終始私と彼の話なんだけど、不思議と「彼」が若い、という以外にほとんど特徴がない。顔立ちやキャラクターにも説明的な記述はあるんだけど、一般的な学生のステレオタイプなイメージの域を出ない。そのせいで逆に小説全体が「私」で埋め尽くされているような鬱陶しさがある。悪い意味じゃなくて、怖いくらいのエネルギーを感じる、てこと。

Posted byブクログ

2012/02/11

前半、だいぶたたないと「私」が多いことに気づけなくて苦悩した! 繊細でちまちましたことを気にする主人公は大好きなタイプだけれど、場面がいったりきたりする形式についていけず、つかれた。

Posted byブクログ

2011/09/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

小説を読んで「酔う」という感覚を味わったのはこれが初めて。気持ち悪いし不快感さえあったけど、途中で終えたら余計にそれが残りそうで、一気に読み終えた。 以下本作の印象と好きな部分の引用。 忘れようにも、思い出せない。人を失うということ、その事実が自分の内面に巻き起こす果てしない思考、問いかけの繰り返しと混乱。冷静な筆致とは裏腹に時系列も人称もごちゃ混ぜで支離滅裂で、だからこそそれがものすごくリアル。メモや日記、当時書いていた書きかけの小説、そういったものから記憶をたどりながら綴られる、「私」の「彼」を巡る記憶の旅。 「彼女とのことを、どうしても書かずにいられなかったと友人は言った。彼女と直接話すことはできなかった、会ってもどうせ聞いてくれないに決まっていた、だから他人の目に触れるような形でそのことを書いた。彼女の目にも触れればいいと思った、そうすれば彼女はその言葉に影響されるだけでなく、それが公になることで余計に影響を受けるはずだから。たとえ彼女が影響を受けなかったとしても、そのことを世間に知らしめたというだけで、彼の意図に反して短命に終わってしまったその恋愛を、言葉という息の長いものに変換できたというだけで満足なのだ、と彼は言った。」

Posted byブクログ