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鴎外の恋人 の商品レビュー

3.6

5件のお客様レビュー

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2011/09/25

図書館より。 著者の方の熱意や力量の伝わってくる力作であると感じました。 ノンフィクションなので仕方ないこととはいえ、取材からの考察部分が長いので少し中だるみしてしまったかなという印象もあります。 とはいえ舞姫は自伝的な小説だと思っていたので、そこから思い描いていた森鴎外の...

図書館より。 著者の方の熱意や力量の伝わってくる力作であると感じました。 ノンフィクションなので仕方ないこととはいえ、取材からの考察部分が長いので少し中だるみしてしまったかなという印象もあります。 とはいえ舞姫は自伝的な小説だと思っていたので、そこから思い描いていた森鴎外の人物像とはまた違う人物像が浮かび上がってきていろいろな発見の多い一冊でもありました。

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2011/10/06

先日読んだ「鴎外の恋」に続いてエリス探求本。どちらも「本の雑誌」で風野春樹さんが紹介してくれていた。風野さんの評通り、エリス探しに関しては六草さんに軍配が上がるだろう。 いくつかの点で今野説には無理があるように思った。今野さんは、アンナ・ベルタ・ルイーゼ・ヴィーゲルトという女性...

先日読んだ「鴎外の恋」に続いてエリス探求本。どちらも「本の雑誌」で風野春樹さんが紹介してくれていた。風野さんの評通り、エリス探しに関しては六草さんに軍配が上がるだろう。 いくつかの点で今野説には無理があるように思った。今野さんは、アンナ・ベルタ・ルイーゼ・ヴィーゲルトという女性がエリスだとしている。鴎外の遺品にあった刺繍用のモノグラム型金の一部の模様が、その頭文字を表してるというのだが、うーん、その写真を見る限り、何とでも読めそうな感じ。 今野さんは、当時ベルリンに実際にその名前の女性がいたことを突き止め、お孫さんにも会っているのだが、彼女が「エリス」だとすると、来日時15歳という年齢がどうにも引っかかる。一等船室の料金が払えるほど豊かだった父が、15の一人娘をたった一人で異国も異国、極東の島国へ送り出すだろうか。何よりも弱いのはじゃあなぜ乗船名簿には「エリーゼ・ヴィーゲルト」とあるのか、という点だろう。今野さんはこれは鴎外とルイーゼとの間で使われていた愛称だとしているが、それを乗船名簿に書くものだろうか。やっぱりこれが本名と考えるのが自然ではないか。 風野さんの評では、主に後半で述べられている、鴎外の漢詩の読み解きや、エリスが来日してから帰国するまでの関係者の動きについてが読みどころだとあった。確かに、特に漢詩についてはまったく知らなかったことも色々あり、興味深かった。ただ、実際の関係者の記録(日記や手記)と見分けにくい形で、著者の想像が書かれており、混乱するし、強引な感じもするのがたいそう残念。 全体に「鴎外好き」向きだ。私は「舞姫好き」なので、その意味でも六草本に肩入れしたい。六草本では、「舞姫」の舞台となったベルリンの街についても多くの記述がされていて、そこが良かった。それにしてもわからないのは「何を思って鴎外は『舞姫』を書いたのか」ということ。なるほど、と思う説を見たことがない。謎だ。

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2011/05/05

ドイツから帰国する鴎外を追いかけてきた恋人の存在について、今まで分からないことが多かった。処女作「舞姫」の謎を解き明かすNHKドキュメントは、著者の丁寧かつ直観力により、著者流の解明がなされていく。 これが真実・・なのどうかはさておき、鴎外と恋人の置かれた時代背景、帰国した鴎外を...

ドイツから帰国する鴎外を追いかけてきた恋人の存在について、今まで分からないことが多かった。処女作「舞姫」の謎を解き明かすNHKドキュメントは、著者の丁寧かつ直観力により、著者流の解明がなされていく。 これが真実・・なのどうかはさておき、鴎外と恋人の置かれた時代背景、帰国した鴎外をめぐる周囲の環境、ことに家族との軋轢の中で、築地のホテルに滞在した恋人との別離に至る物語と、「舞姫」著作の心理を深く綴っていく力量は納得。 鴎外が終生身近に置いていた「刺繍をするためモノグラム」。 この中に潜む森林太郎(MとR)、そして恋人の名の頭文字が謎をとくカギであった。 人は語らずとも「モノ」は、二人だけの記憶をとどめる秘密の照明なのだ。モノをめぐる「価値」について深く想いをめぐらせた。

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2011/02/23

森鷗外といえば、医者で「雁」「舞姫」を書いた人という程度の知識しかなかったが、本当に優秀な人だったんだな、というのが第一の感想。 しかも、なんだかエリート。 そんな人にこんな情熱的な恋の話があったと知り驚いたのと、その恋に破れた後の行動、新婚早々に別れた恋人への贖罪の小説「舞姫...

森鷗外といえば、医者で「雁」「舞姫」を書いた人という程度の知識しかなかったが、本当に優秀な人だったんだな、というのが第一の感想。 しかも、なんだかエリート。 そんな人にこんな情熱的な恋の話があったと知り驚いたのと、その恋に破れた後の行動、新婚早々に別れた恋人への贖罪の小説「舞姫」を書く、子どもにその恋人の名にちなんだ名前をつける、悔恨と慙愧をもって漢詩をつくるなどなど、何と一途な、人間臭い人だったのかと感じ入ってしまった。 自分の死の直前に、彼女との手紙を燃やさせたり、彼女が作った刺繍のための型金を生涯大切にしたりと、あたかもドイツ留学後の人生は、彼女との思い出に生きたかのようだ。

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2011/01/10

読み終わってしばらく興奮状態が続いた。 120年前『舞姫』のモデルと目される女性が、鷗外を追って来日したという事件があった。妹の記録には「誰も誰も大切に思ってい居るお兄様にさしたる障もなく済んだのは家中の喜びでした」と書かれていて、事件をなんとか収めた安堵感がうかがえる。 『...

読み終わってしばらく興奮状態が続いた。 120年前『舞姫』のモデルと目される女性が、鷗外を追って来日したという事件があった。妹の記録には「誰も誰も大切に思ってい居るお兄様にさしたる障もなく済んだのは家中の喜びでした」と書かれていて、事件をなんとか収めた安堵感がうかがえる。 『舞姫』は、(国)仕事を取るか(個人)愛を取るかという選択の極みで前者を選択した物語と理解されるので、エリスの処遇をめぐって大田豊太郎が取った優柔不断な態度は、許し難い、不実なものとの印象が強く残る。それなのになぜ鷗外はこの作品を書いたのか、長く腑に落ちなかった。 著者はNHKの番組制作に関わった人で、鷗外が残した刺繍の金型に目を向けて120年前の真実を掘り起こしていく。 『舞姫』のエリスと実際の鷗外の恋人とは境遇が全然違っていた。来日は真実の愛を貫くためであって「エリス」の独断ではなかった、など。 考証がしっかりしていて説得力がある。鷗外への評価ががらりと変わる1冊。

Posted byブクログ