般若心経物語 の商品レビュー
般若心経における空と色との関係、宇宙と人間との関係を数学の「実像」、「写像」、「像」を使って解き明かした作品。 空と色との間に「写像」という関数を設定することによって、個々の捉える現実が異なることを説明した部分には、納得がいった。 詩や文学作品からの引用が多すぎるようにも感じ...
般若心経における空と色との関係、宇宙と人間との関係を数学の「実像」、「写像」、「像」を使って解き明かした作品。 空と色との間に「写像」という関数を設定することによって、個々の捉える現実が異なることを説明した部分には、納得がいった。 詩や文学作品からの引用が多すぎるようにも感じられたが、能の演目にもあるという「天鼓」のエピソードとその後の解説はとても心に残った。以下、解説の文を一部、抜粋引用する。~ 「仁という言葉があります。思いやり、慈しみという意味を持ちますが、人偏にニと書くということは、二人の人の間に流れるものがそういうものでありたいということでしょうか。 親子、兄弟、師弟、親友、恋人、夫婦。 二人にしか鳴らせない鼓があることが、生きてあることの喜びの源であり、生きてあることの証しであります。 天鼓の物語はそういった根源的な人間の世界、愛しみ、哀しみを含め、二人にしか奏でることのできないものの深さを我々に伝えているのかも知れません。 二人というのは大勢の人間社会の中にあって、その基本をなすものでもあります。そしてそこで二人にしか鳴らすことができないものが生まれたとしたら、それはお互いにお互いを合掌する仏様たちとも言えましょう。」 この一文に出会っただけでもこの本を読んだ価値があると思った。引用が多いにも関わらず、オリジナルな視点を持った般若心経の解説として本書は人におすすめできる一冊だと思う。
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