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畜産市長の「口蹄疫」130日の闘い の商品レビュー

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2011/08/23

『畜産市長の異名を持つ宮崎県西都市の橋田和実市長が口蹄疫という見えない敵と向き合った真実の記録。』マスメディアでは決して流れることのなかった『真実』がここにあります。 2010年に宮崎で猖獗を極めた口蹄疫と家畜の殺処分に関わった人たちや畜産農家の人たちの悲痛な声がこの本の中いっ...

『畜産市長の異名を持つ宮崎県西都市の橋田和実市長が口蹄疫という見えない敵と向き合った真実の記録。』マスメディアでは決して流れることのなかった『真実』がここにあります。 2010年に宮崎で猖獗を極めた口蹄疫と家畜の殺処分に関わった人たちや畜産農家の人たちの悲痛な声がこの本の中いっぱいに書かれていて、何回か僕は読んでいる手がさすがに止まりました。 以前、僕は口蹄疫で牛の殺処分に関わった農家の人の声を僕が運営しているブログの方にあるサイトから記事を丸々引っ張ってきて掲載しましたが。この本の最初に収録されている牛や豚に殺処分をしている現場の写真や、死んだ牛を重機を使って一匹一匹と埋める写真が掲載されてあって、ものすごく生々しいです。 これが現場の事実なのですが、テレビなどでまずこういったことは報道されません。ある農家の1人が「生き地獄とはこのことだ」と慟哭の声を上げていたのが悲痛でございました。今はこの方はどうしているのか、想像もつきません。 マスメディアではもうほとんど放送されない口蹄疫の問題ですが、現地では深い爪あとをいまだに残ったままで、その傷はいまだにいえていないんだということを痛感させるものでした。真実を知りたい方はどうぞ。

Posted byブクログ

2010/12/16

実際に宮崎で殺処分に関わった獣医師としてレビューさせていただきます。 はっきり言って、学術書としての価値は皆無です。ところどころ科学的な論考が見られますがデータの引用方法など不適切な箇所が多いです。また、著者の主張も二転三転して論をなしていません。「県を含めて初動体制が遅れた」...

実際に宮崎で殺処分に関わった獣医師としてレビューさせていただきます。 はっきり言って、学術書としての価値は皆無です。ところどころ科学的な論考が見られますがデータの引用方法など不適切な箇所が多いです。また、著者の主張も二転三転して論をなしていません。「県を含めて初動体制が遅れた」「畜産関係者が一丸となって協力して取り組む問題」といった次の章で厳しい対策をとった県を批判したり、「口蹄疫の症状を早期に見分けることは困難」といった直後に「なぜ3月の時点で発見できなかったのか」と言いだしたりなど、どっちだよ、とツッコミたくなることも多数。 ただし、当時の現場の雰囲気を限りなく忠実に表現していることは評価できる。クルーが近づけなかったこともあり報道されることはない殺処分の現場の様子を正確に記述しており、記録集としての価値は高い。 「現場の感覚」をうかがい知る貴重な資料となりうる。 注目したいのは、著者の視点。 本書から、畜産市長である著者の当時の視点は「口蹄疫の早期殲滅」にあるように見えて、実は「農家・住民の安心の確保」であったことがうかがい知れる。これは国や県といった行政サイドの目的と大きく乖離する。 口蹄疫の防疫に関しては、家畜伝染病予防法に定められいる。また本書の巻末に収録されているような各自治体が作成した対応マニュアルによって進められる。 これらは伝染病学的に如何に効果的に口蹄疫を殲滅するかについて方策を取り決めたものであるが、口蹄疫が発生したことによって農家に生じた経済的損失への補償はほとんど盛り込まれていないし、また家族同然の家畜を処分した農家の心のケアといったものにも触れていない。 また本書では、今回の発生を2000年に発生した口蹄疫と対比する箇所が多くみられる。著者は「10年前はうまく解決できたのに、なぜ今回は上手くいかなかったのか」という疑問を投げかけ、国及び県の対応が遅れたことで感染が拡大した、と批判している。 だが、ここで忘れてはならないのは、畜産界だけの問題で解決した2000年の事例に対し、今回の発生は、非畜産関係者を含めた宮崎県全体の問題になっていたということだ。畜産界だけの問題ならば、先に示したような 1)伝染病学的な問題 2)家畜の経済保障的な問題 3)農家の安心の確保上の問題 の3点を中心に対策を進められる。 しかし、県全体の問題に発生した今回は 4)地域社会上の問題 も解決しなくてはならなくなった。 残念ながら、本書の著者は1)~3)の問題にしか目に入っていない。 また、主導権を発動させようとした農林水産省の担当者も1)、2)のみで3)に対する問題意識は希薄であったように思える。 今回、意思決定をする立場にあった者でこれら4点をすべて踏まえることができていたのは東国原 宮崎県知事くらいであろう。 日本の獣医・畜産界には疫学者が少ない、とよく言われる。今回の口蹄疫の事例から振り返ると、家畜伝染病発生によって生じる上記1)~4)の問題構造を冷静に分析して対策を進める者がいないためであろう。 国や県が本気で立てた対策がなぜ現地で受け入れられなかったのか、また口蹄疫を含めた今後の家畜伝染病対策を如何に効果的に行うかを考える上で、本書に記された記録は重要や役割を果たすと考える。

Posted byブクログ