冬の空にきらめく恋 の商品レビュー

アンソロジー(著者),ヘレン・ビアンチン(著者),ルーシーゴードン(著者),スーザンスティーヴンス(著者),柿原日出子(訳者),萩原ちさと(訳者)

2016/05/30

第1話　真夏のサンタクロース
ハーレクイン王道的ストーリー。別れた元彼の子を極秘に妊娠出産していた女性が運命の悪戯によって、彼と再会する。
―君は僕から父親になる権利を奪うつもりだったのか？
三年前の誤解とすれ違いで彼の許を去ったヒロインを彼は烈しく非難するが―。元彼の猛烈アタックが印象的だった。

第2話　サンタクロースにキスを
この作品は一押しの素晴らしい内容だった。第1話がハーレクイン王道と形容できるのに対し、こちらはむしろ毛並みの違う、異色ともいえる作品だと思う。
官能的情熱的描写もなく、ただ昔、別れた恋人たちがクリスマスに再会して愛を取り戻すという過程が暖かい筆致で描かれている。
ヒロインに一方的に別れを告げた元恋人には重大な秘密があった。実は彼は結婚の約束を前にして、大きな事故にあい、寝たきり状態になっていたのである。愛する女性を自分の人生に縛り付けるのは忍びず、彼は理由も告げず彼女前から去ったのだ。
再会した彼女が初めて知る別離の真実。
「二人の遙か頭上ではクリスマスの鐘が雪野原に響き渡っていた。再生の奇跡を祝いなさい、と呼びかけるように。（略）そう、これからはずっと、二人一緒にこうして歩いていくのだ」。愛を取り戻した恋人たちの姿が大きくクローズアップされ、静かな聖夜のシーンで物語りは幕を閉じる。これまで読んだハーレクインの中で、間違いなく最高の作品だと思った。

第3話　誘惑のイスタンブール
ある意味で、これも王道だろう。
弟を解放して欲しいと願う若いイギリス人女性が「スルタン」と呼ばれるほどのトルコ人の富裕な実業家の屋敷に訪れる。彼女は自分の身柄と引き替えに、弟の解放を願い出る。
何とスルタンは彼女を自分のハーレムに入れたのだった―。