初めて台湾語をパソコンに喋らせた男 の商品レビュー
筆者の田村志津江さんはノンフィクション作家で、台湾映画の日本への紹介もしてきた人だ。しかし、ぼくはそんな経歴は知らず、この本のタイトルになんとなく引かれて買ってしまった。そもそもぼくはいわゆる共通語以外の中国の方言にはあまり興味がない。そのエネルギーはむしろ、ドイツ語やフランス語...
筆者の田村志津江さんはノンフィクション作家で、台湾映画の日本への紹介もしてきた人だ。しかし、ぼくはそんな経歴は知らず、この本のタイトルになんとなく引かれて買ってしまった。そもそもぼくはいわゆる共通語以外の中国の方言にはあまり興味がない。そのエネルギーはむしろ、ドイツ語やフランス語、韓国語の方へ行ってしまった。だのに、この台湾語復権の物語に引かれたのは、考えて見れば不思議なことだ。田村さんはぼくより5つ年上で、台南で生まれている。その彼女がこの、台湾語をパソコンに喋らせた男アロンと出会ったのは、今から10年ほど前、『非情城市』が話題になったころだ。(残念ながらぼくはこの映画をまだ見ていない)この映画は、戦後の混乱期を背景にした台湾人家族の物語で、その中には、47年の国民党による台湾人大量虐殺事件、2・28事件が出てくる。それはアロンに言わせれば、国民党のその後の40年にわたる戒厳令の出発点であるし、きわめて組織的なものであったのに、映画は、それを混乱期の出来事のように描いているという。アロンは根っからの台湾人として、国民党統治下で弾圧されてきた台湾語を守り、それを音声化するために、コンピューターを学び、妻をおいてアメリカにまで留学する。それはやがて実を結ぶのだが、本書は、台南を生まれ故郷にもつ田村さんとアロンとの友情の物語であり、アロンが台湾語をパソコンにしゃべらそうとした格闘の物語である。
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このライターの方の生い立ちや、今までの台湾体験談、二人の会話も興味深いながら、台湾語(自身のルーツ)に目覚め、言葉を残していこうとする人がいるという驚き。これは日本人にはなかなか分かりにくい心情であるが、言葉というのはそれほど多いな力を持つものだし、その取り組みは素晴らしいと思う。台湾語の漢字もまだなく、それを今から作っていこうとするのは何百年とかかる。しかし取り組んでいこうとする台湾人を応援したい。 技能をこういう使い方をするというのが、まさに本当に活かせる使い方なんだと感じた。
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