バウドリーノ(下) の商品レビュー
「薔薇の名前」よりも周辺知識なしでも読みやすく、大人のためのファンタジーとして楽しめます。けどもちろん、背景について知っていたほうが、より面白いことは言うまでもありません。ラストの運び(主人公バウドリーノの扱い方、ちょっとした伏線など)が秀逸。
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仲間(?)との東方への旅。フリードリヒの死や聖杯グラダーレの謎。そしてちょっとばかりのラブストーリー。そして見事なオチ。バウドリーノはもういないけど、彼以上に嘘つきなエーコがいましたw
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知識人・エーコが紡ぎ出す破天荒なピカレスク・ロマン。次々に迫り来るエピソードの羅列に押し潰されそうになる。上巻は皇帝の養子となったバウドリーノの成長を中心に、下巻はバウドリーノと仲間たちの冒険を軸に、それぞれ豊かで伸びのあるストーリーが展開していく。 初めてのエーコだったが、...
知識人・エーコが紡ぎ出す破天荒なピカレスク・ロマン。次々に迫り来るエピソードの羅列に押し潰されそうになる。上巻は皇帝の養子となったバウドリーノの成長を中心に、下巻はバウドリーノと仲間たちの冒険を軸に、それぞれ豊かで伸びのあるストーリーが展開していく。 初めてのエーコだったが、イメージしたような難解さはない。成長、冒険、陰謀、恋愛、そして密室──雑多でいろんな要素から形成されている作品なので、ツボに入ればこの上なく楽しい読書時間になるだろう。そこに史実や伝説を絡ませ、もう少し知識があればもっと楽しめるのに、と思わせるエーコの技量には感服するが、悲しいかなミステリではない。というよりも、ひとつのサブジャンルに限定できるほど単純なストーリーではないというのが正直な感想。途中でキャパを超えてしまったので、こちら側から眺め見るしかなかったのが残念であり悔しいところ。 中盤はダレたが後半で盛り返した。密室の解釈にミステリらしさを感じ、着地点もなるほどと思える感覚が心地いい。ラストへのアプローチも巧い。長い物語だったがそういう形に落ち着くのかと感慨に浸ってしまった。ここへ来てようやく自分と作品との歩幅が合ったような感じ。しかし時代を遡れば遡るほど、人の考えが潔くてかっこいいなあ。
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バウドリーノの成長に沿って知識から得た価値観が、既成の宗教や哲学を超えていきます。 知識が無くても楽しめました。
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イカしたほら吹き野郎が、東の果てのそのまた果てにあるって言う伝説の神の国を求めるながいながーい旅のお話。 そもそも旅に出るまでが意外と長くって、素敵なほらを吹きまくって、成り上がって、だらだらとどうでもいいような討論を繰り返しつつ、旅に出るのか出ないのか…的なくだりが割と続いた...
イカしたほら吹き野郎が、東の果てのそのまた果てにあるって言う伝説の神の国を求めるながいながーい旅のお話。 そもそも旅に出るまでが意外と長くって、素敵なほらを吹きまくって、成り上がって、だらだらとどうでもいいような討論を繰り返しつつ、旅に出るのか出ないのか…的なくだりが割と続いたりする。歴史的なあれこれも交えて割と退屈なくだりもあったりする。 でも一度12人のゆかいな仲間たちとの大冒険が始まってしまえば、もうそこからは、驚きと興奮の数々が次から次へと訪れるっていう至福の時間が約束される。 幻想的な国々と異国的感性の人々、ポップでキュートな怪物たち、あの子とのメロドラマ、嘘で固めた宝物、そして、愛するべきものを守るための最後の闘い…。 んで、このまま冒険押しで終わるかと思いきや、カラクリまみれの密室殺人の謎が解き明かされる衝撃のラストへと展開してく。 つまり、歴史小説、青春小説、冒険小説、推理小説が、語り方を変えつつ、時間と空間をうまく飛び越えながら、横断的に成立してる。しかもそのどれもが、バウドリーノという一人のほら吹き野郎の愛とか友情とかにまつわる内面的なあれこれと密接に結びつきながら、一つの大きな流れを作ってて、伝記文学として華麗すぎるほど素晴らしくまとまってる。人の一生には、歴史も青春も冒険も、推理ですら欠かせないわけですな。 とにかく、下巻に入ったらあっという間。最高ですじゃ。
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歴史を語る上巻に比べると、ファンタジーな冒険譚へと趣を変える下巻。 一つ目の怪物や珍妙な部族のオンパレードなど、荒唐無稽な展開は普通にワクワクして読めてしまうのだ。 そんな冒険小説の合間を縫って、神学に係る蘊蓄や論争が差し挟まれるのはやはりエーコの作品っぽくはあるのだが。 ...
歴史を語る上巻に比べると、ファンタジーな冒険譚へと趣を変える下巻。 一つ目の怪物や珍妙な部族のオンパレードなど、荒唐無稽な展開は普通にワクワクして読めてしまうのだ。 そんな冒険小説の合間を縫って、神学に係る蘊蓄や論争が差し挟まれるのはやはりエーコの作品っぽくはあるのだが。 終盤では皇帝の死を巡る謎解きが。なるほど、ミステリーとも紹介されていたのはこの所為なのか。
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下巻は、東方(東の果て)にあるという伝説のキリスト教国「司祭ヨハネの王国」を目指して旅に出た、主人公・バウドリーノと友人たち(かなり個性的な友人たち)の冒険譚になっている。 怪物と戦い、石の川を渡り、一本足の人間が道案内をしてくれるなど、かなり法螺が入った陽気なストーリーだが、...
下巻は、東方(東の果て)にあるという伝説のキリスト教国「司祭ヨハネの王国」を目指して旅に出た、主人公・バウドリーノと友人たち(かなり個性的な友人たち)の冒険譚になっている。 怪物と戦い、石の川を渡り、一本足の人間が道案内をしてくれるなど、かなり法螺が入った陽気なストーリーだが、何にもまして素敵なのは、バウドリーノが助祭ヨハネの王国で出会った、異教徒・ヒュパティア族の女性・ヒュパティアと、彼女が語る「神」を超える真理という世界観だと思う。 (ヒュパティアの語る世界観は、なんだかとても仏教的な気がする) バウドリーノやその友人たちの野心や(かなり空想的な)夢、ロンバルディア同盟の都市と神聖ローマ皇帝の戦い、ビザンティン帝国の内紛など、気忙しい話が続いた後に出てくるヒュパティアの静謐さはとても魅力的で美しい。 そして、この本のなんとも切ないところが、白フン族の侵入による助祭ヨハネの王国の崩壊から始まる最後のくだりで、ヒュパティアとの別れ、目標を失ったバウドリーノ一行の仲違い、バウドリーノの養父・神聖ローマ皇帝 フリードリヒ1世の最後にまつわる謎解きまで読み進んだ頃には、法螺話の陽気さはかけらもなくなり、薄く張りつめたひんやりした思いだけが残る。
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文句なしに面白い! イタリアの農民の息子として生まれたバウドリーノが、ひょんなことから神聖ローマ皇帝フリードリヒの養子となるところから、生涯にわたる冒険にのりだした!という感じ。でも、その冒険は徹底的に「文系」な冒険。 中世のエキゾチックなオリエンタリズムへの憧れにあふれた冒険活...
文句なしに面白い! イタリアの農民の息子として生まれたバウドリーノが、ひょんなことから神聖ローマ皇帝フリードリヒの養子となるところから、生涯にわたる冒険にのりだした!という感じ。でも、その冒険は徹底的に「文系」な冒険。 中世のエキゾチックなオリエンタリズムへの憧れにあふれた冒険活劇。なんとなくシンドバッドとかほらふき男爵を読んでる感覚で、純粋に物語として面白かった。きっとこの人は中世のこと考えてるといろいろと妄想が膨らんで楽しいんだろうな。 実在の歴史家を通して語られる空想の物語、という構成からして歴史の虚構性、みたいなテーマもあるんだろうけど、小難しい事は脇に置いて、楽しみとしての小説を堪能できる。
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第3回、第4回十字軍あたりを背景に、遍歴、冒険、宗教問答、密室トリック、怪物譚、そして言うならば愛を織り込んで、めくるめくエーコの世界。
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一応史実に沿って話が進んでいた上巻から雰囲気は一転、下巻にはいりある密室殺人を契機に「司祭ヨハネの王国」への旅が始まってからは一気にファンタジーの世界へ。 バジリスク、砂礫の流れる川、一本足の人間、頭なし人間、犬頭人、といった自然の驚異や異形の生物たちが次から次へと現れるバウドリ...
一応史実に沿って話が進んでいた上巻から雰囲気は一転、下巻にはいりある密室殺人を契機に「司祭ヨハネの王国」への旅が始まってからは一気にファンタジーの世界へ。 バジリスク、砂礫の流れる川、一本足の人間、頭なし人間、犬頭人、といった自然の驚異や異形の生物たちが次から次へと現れるバウドリーノ一行の奇想天外な旅が愉しすぎる。 ”嘘つきが語る嘘まみれの半生”をエーコが語る、という虚構と現実のあわいが曖昧になるかのような趣向も素晴らしい。 終盤の密室殺人の多重解決にも大満足 ♪
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