黒 の商品レビュー
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サド・ホーソン・夢野久作 夢野久作はまだあんまり新しくないのかな、とおもうような四角に入った怪奇小説という面持ち。もっと土臭さがでてきた、匂いがにおってくるというのが真骨頂だとおもうのだけどこういうのもかけるんだなあって改めて感心した。”いわゆる”っていうのもきちんとかけないとあそこまではいけないのかな。 サドはファクスランジュ嬢の話。なんというか音楽で言えばサザンやビーズみたいにあまりわきにぶれないというか、毎回毎回同じようなことをやっている人というのがあるけれどサドもそうだな~とおもう。読むたびこの安心感というか。偏執狂的に同じような堕ちる女の人、美徳の不幸、うつくしさのあはれ、みたいなものを何度も何度も練り直すように書いている。そして収集癖。御伽噺的、教訓めいた起承転結がこの話はあるのであまりそういうったことを感じられないかもだけど、このようにサドは難しくも素っ頓狂でもないのだ。 ホーソン 黒のベール。これはものすごく良かった!ある日急に黒のベールを自分の顔にかける牧師の話。それを怖がる人の心も、牧師の主張も、黒のベールでわけへだたれていて、黒はどんどん迫ってくる。心理実験みたいでおもしろいというか、この「ぐんぐん」という感じ。これはホラーだとおもうけれどそれ以上に敬虔な気持ちにもなるし、もっと自分や人に対する発見があってつまり黒のベールはそういうものなのだ。
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ホーソーン「牧師の黒のベール」 村人皆に慕われる心優しい牧師が、ある日突然黒いベールで顔を覆うようになる。 誰もが黒いベールを不審がり、恐れる中、以前と変わらぬ優しさと敬虔さをもつ牧師。 いくら黒いベールを取るよう頼んでも、牧師は悲しげな微笑を浮かべるばかり。 たった一枚のベー...
ホーソーン「牧師の黒のベール」 村人皆に慕われる心優しい牧師が、ある日突然黒いベールで顔を覆うようになる。 誰もが黒いベールを不審がり、恐れる中、以前と変わらぬ優しさと敬虔さをもつ牧師。 いくら黒いベールを取るよう頼んでも、牧師は悲しげな微笑を浮かべるばかり。 たった一枚のベールによって映し出される、人間の秘められた心の内。 夢野久作「けむりを吐かぬ煙突」 新聞記者をする傍ら、上流家庭の秘密を握り恐喝することを副業としている男。 未亡人・南堂侯爵夫人の邸宅の煙突が一度もけむりを吐いたことのないのを怪しみ、 彼女の素行や行動に探りを入れていくが… サド「ファクスランジュ」 心身ともに麗しいファクスランジュ嬢。アメリカに莫大な資産を持つというフランロ男爵との 結婚が決まり、幼少から想い合っていた親戚筋のゴエ氏と泣く泣く別れ、夫婦でアメリカへ赴くことになるが… 「恋の罪」に収録されていた短編だと云えば……あとは…分かるな…? 「牧師の黒のベール」が印象に残った。自ら闇の際に身を置いた牧師と、それに対する周囲の反応がね… 「けむりを吐かぬ煙突」は、安心の久作節。謎があって、妖しげな雰囲気で、オチがでええええ。 「ファクスランジュ」は安心のサドクオリティ。美しくて人を疑うってことを知らないヒロインに、 いちいち泣き縋ってくるウザったい彼氏、ヒロインをほっぽって長々と演説を始める悪役さん。 たまらんね!
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ゾクッとするような黒い短編3作。ホーソーン『牧師の黒ベール』えもいわれぬ不気味な雰囲気と牧師の決然とした態度が今まで味わったことの無いようなギャップ。夢野久作『けむりを吐かぬ煙突』醜聞で金儲けをする新聞記者と陰惨な趣味を持つ未亡人の背徳的な雰囲気ぷんぷんな短編。徐々に緊張感が高まる傑作。サド『ファクスランジュ』中盤までどきどきしながら読んだけど、後半物足りなさを感じた。ファクスランジュ嬢が中途半端にいい子だから?恋人を袖にしてフランロに傾くまではまだしも、その後の展開に説得力がなく唐突な感じ。
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