「悲しき熱帯」の記憶 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
構造主義の祖といえばレヴィストロース、日本でレビィストロースに近い学者といえが川田順造という具合に頭の引き出しにいれていた。 その川田先生がレヴィストロースの名声を高めた「悲しき熱帯」の舞台となったブラジルアマゾンを翻訳であり文化人類学者の本人が訪ねて書いた本ということで読んでみた。 アマゾンのインディオの歴史、日本との関わり合い、アフリカとの比較など興味深い知識が多く披露される。 ただアマゾンのインディオが今後どうあるべきかはやはり難しい問題で問題があるとするにとどまる。いやとどまっていはいないが解決策は見いだせない。 現在 産業文明の行方が見えない状況でインディオの生き方は鏡のように文明社会を照射している。 どのような立場の人であっても読んでよい本。特にヨーロッパ大航海時代のポルトガルの勃興と凋落との関係でブラジル史を鳥瞰する視点は秀逸。 ただ論文ではなくエッセイなので やや物足りないか。それが気がるに読める点につながっており良さでもあるが。
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レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』があまりに面白く、もうすこし知りたいなと思って、訳者の方の本も読んでみることにしました。前半のブラジル旅行記はかえって師匠の偉大さを思わせるばかりであまり感心しなかったのだけど、いちばん最後の「私にとってのブラジル」は非常に面白かった。西アフリカ...
レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』があまりに面白く、もうすこし知りたいなと思って、訳者の方の本も読んでみることにしました。前半のブラジル旅行記はかえって師匠の偉大さを思わせるばかりであまり感心しなかったのだけど、いちばん最後の「私にとってのブラジル」は非常に面白かった。西アフリカを専門とする著者が、西洋‐ブラジル‐西アフリカ‐日本をつなぎながら、奴隷交易をばねとした異なる近代の形成を論じた部分、歴史を必要とする社会と必要としない社会の考察、「開発」への人類学者への関わりなど、レヴィ=ストロースの問題意識を現代にあらためてつなぐかたちで深みのある議論を提起している。
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