生き方としての宅老所 起業する若者たち の商品レビュー
井戸端げんきの伊藤さんの名前を見て、借りてきた。ブリコブックレットの一冊め。ブリコ、なつかしいな~。 「はじめに」で、三好春樹が、この本に出てくる若い人たちのことをこう書いている。 ▼印象的なのは、彼らが「福祉」や「介護」の世界のコトバを使わないことだ。(p.5) 4人の話は...
井戸端げんきの伊藤さんの名前を見て、借りてきた。ブリコブックレットの一冊め。ブリコ、なつかしいな~。 「はじめに」で、三好春樹が、この本に出てくる若い人たちのことをこう書いている。 ▼印象的なのは、彼らが「福祉」や「介護」の世界のコトバを使わないことだ。(p.5) 4人の話は、どれもほんとにおもしろかった。 介護の仕事の場で浮きまくっていたという、こてっちゃん家の高橋さん。あるおばあちゃんが倒れてから一回も生の魚を使ったお寿司を食べてない、食べたいと言うので、婦長に言ったら「絶対にダメ」、理事長に直談判してOKは出たが、家族が「そんな無駄な出費はできない」。自分が休みの日に、スーパーでパックのお寿司を自分の弁当と称して買っていって、おばあちゃんに食べてもらった。 ▼たかだかスーパーのお寿司すら満足に食えない。お年寄りの食べたいという気持ちも引きだしていないし、食べたいという望みも実現していない。逆にやっちゃいけないことばかり。理由はそれがルールだから。でも、そんなルールっていったい何なんでしょうね。お年寄りの小さな夢のひとつもかなえられないで、俺、介護やっていますなんて、とても言えないと思いました。(p.19) 「こんな人は受け入れられません」とヨソの施設で断られた人を、4人の宅老所はそれぞれ「誰が来てもいい」と受け入れてきた。「こんな人」もごちゃごちゃいるのが世の中だ、と言うは易しで、「こんな人」の受け入れに苦労も悩みも大きい。「なんでこんな人を連れてくるの」と他の人から言われもし、どうしていいのかと迷う。そこも率直に書かれている。 羊ヶ丘の里の菅原さんは、スタッフのモチベーションをあげるためにこそ「うちだからできるんだよ」とは言ってきたが、「実際にはどこだってやればできることなんだと思っていました」という。 ▼やることをきちんとやっていれば、あとは多少ルーズなことがあってもいいのかなって思います。…いろいろルールを決めて縛っていくのは簡単ですが、この仕事についてはそれはいい結果を生まないように思います。最低限のルールだけわきまえていてもらえば、あとは自由にやってもらうほうがいい結果が出るのが介護だと思います。(pp.75-76) 玄玄の藤渕さんが書く、ミズノさんの話がよかった。深い認知症のあるミズノさんは、夕方家に送っていくとご主人をつねる。 ▼ご主人は「こいつ、ものが言えんじゃろう。ものが言えんけん、これでしゃべりよんよ」と言うんです。そして、つねるのをなかなかやめようとしないミズノさんを、ご主人は抱きしめるんです。「こうやったら、こいつ、やめるけん」と、やさしく笑いながら。すごいなと思いました。(p.50) ブリコ、また読もうかな~と思った。
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