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頭脳の散歩 の商品レビュー

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8件のお客様レビュー

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2018/11/25

文字・活字文化推進機構という財団のお膳立てによるらしい田中眞紀子と外山滋比古の対談が3本収録されている。副題「デジタル教科書はいらない」というのはきっとこの財団が当時のこうした動きに反対してつけたのだろうな。だって、話している二人は言葉や学びの大切さを述べてこそいるが、決してデジ...

文字・活字文化推進機構という財団のお膳立てによるらしい田中眞紀子と外山滋比古の対談が3本収録されている。副題「デジタル教科書はいらない」というのはきっとこの財団が当時のこうした動きに反対してつけたのだろうな。だって、話している二人は言葉や学びの大切さを述べてこそいるが、決してデジタル教科書を否定してはいないもの。デジタル一辺倒になることへの危惧を語りはするが、デジタルなものを用いることの効用も述べている。むしろこの本は「デジタル教科書なんかいらない」という人たちへの警鐘になっているのでは。 外山氏の発言は何かと「なるほどぉ」と思わされる。たとえば、日本語は「論理的に、筋道を立てて物事を考えるのがうまくありません。たとえば文章を書くときにも、日本人はセンテンスを中心にして書いています。これでは外国には通じないわけです。パラグラフを中心にして文章を書くということは、明治以来、なおうまくありません。段落、パラグラフというものを考えたのは文部省が最初で、明治の20年代に段落というものを教えたのです。けれども、百年経った今なお私たちには段落というものの感覚がよくわからない」と(p.38)。確かに英文読解など、パラグラフ云々ってよく言われたもんなあ。俳句や短歌のように抒情を示すことはできるが、論理的なものを表すのにはあまり向かないというか、これまた外山氏が言っているのだけど、文章が文科的に寄り過ぎているというのも一因だろう。理科系の人にはいまいち扱いづらいものになっているし、それを破るような人も(外山氏によれば寺田寅彦など)あまりいない。それはやはり起承転結で表す日本の文章の特徴とも関係しているのだろう。英語などの主語の次に述語が来て、目的語が来るという並びを考えるとその違いが理解できるような気がする。とにかく今までの自分の本の読み方を一考することができる本。これって外山氏の名著『思考の整理学』など読むともっと理解できるものだろうか。 対する田中眞紀子の話もなかなか。この対談の組み合わせができたのは、田中氏の子どもがお茶の水女子大の付属校に通っていたときの校長が外山氏だったという縁かららしいが、互する話をしていると思う。中勘助や芥川、三島の『お嬢さん』『花ざかりの森』を愛するといった発言もだけど、端々から豊かな教養や経験の持ち主だという感じが漂う。とんでも発言の人という感じだけど、それらも真意が届かずいいように喧伝されてしまったからではないかと、この本を読むかぎりではそう感じた。

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2015/06/14

まず、タイトルがよくない。少なくとも、副題の「デジタル教科書はいらない」は取った方がいい。 田中眞紀子の何気ない自己PRが鼻に付くところもあるが、あんがい、まっとうで世間のイメージとは違うところもあるのに驚かされた。改めて、週刊誌の記事だけに踊らされてはいけないと強くかんじた。...

まず、タイトルがよくない。少なくとも、副題の「デジタル教科書はいらない」は取った方がいい。 田中眞紀子の何気ない自己PRが鼻に付くところもあるが、あんがい、まっとうで世間のイメージとは違うところもあるのに驚かされた。改めて、週刊誌の記事だけに踊らされてはいけないと強くかんじた。 なかなかいい話もしているので、一読して損はない。

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2012/11/10

図書館の書棚にあったのを、ぱらぱらと。田中真紀子の熱い語りが、伝わってきた。しかし、それは伝えるべきところがあり、なんとなく伝わり、気になって借りてきた。読んだ。そこには、自分が知っている田中真紀子ではない、田中がいた。まさに、今まで自分がメディアに踊らされていた、メディア報道に...

図書館の書棚にあったのを、ぱらぱらと。田中真紀子の熱い語りが、伝わってきた。しかし、それは伝えるべきところがあり、なんとなく伝わり、気になって借りてきた。読んだ。そこには、自分が知っている田中真紀子ではない、田中がいた。まさに、今まで自分がメディアに踊らされていた、メディア報道に操作されていたことを改めて知った。田中真紀子との距離が縮まった気がした。外山滋比古 、この対談からも、もの静かだが、鋭い主張、考えは十分に伝わってくる。多くの著作、思考することは何であるか?基本はぶれずに、平易な言葉で例を示して、伝える言葉は、常人ではなかなかできないだろう。と感心した。生来の学者であるイメージがあったが、本書を読むと、どうやらそうではなく勉学に渇望していたようである。さて、本書のテーマ、教育論とも、読書論とも、また、文化論とも取れた。二人の視点が重なり合うところが、教科書ということだったと解釈している。人間の脳はデジタル、しかし、思考はアナログだ。

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2012/05/26

高校時代の古文の先生で音読をとても大切にされている方がいました、高校1年の1学期こ頃は、授業の半分以上は音読に割いていたのでよく覚えています。当時は高校生にもなって音読をするのは小学生に戻ったみたいで違和感を覚えていましたが、読書の基本は音読であると、この本に書かれていて、はたと...

高校時代の古文の先生で音読をとても大切にされている方がいました、高校1年の1学期こ頃は、授業の半分以上は音読に割いていたのでよく覚えています。当時は高校生にもなって音読をするのは小学生に戻ったみたいで違和感を覚えていましたが、読書の基本は音読であると、この本に書かれていて、はたと気づきました。 似たような内容の本を何冊も速読するメリットはこの10年で私自身経験してきましたが、その読み方だけでなく難しい内容を苦労しながら読む大切さに気付かされました。 私は紙の教科書、紙の辞書にアンダーラインを引きながら勉強してきた時代なので、「デジタル教科書はいらない」という考え方もわかりますが、果たして今後の世代でもそれは受け入れられるのでしょうか、と少し疑問に思いました。 以下は気になったポイントです。 ・読むことの始まりは世界的にも音読である、黙読というのはずっと後でなければ現れない、音読が相当進歩したところで、声を出さなくても意味が取れるようになる(p13) ・精神的なものに触れている点では、黙読よりも音読のほうが基本的、黙読はどちらかというと不自然で暗号を黙読しているのと似ている、現代は音読から黙読への切り替えが不十分である(p15) ・難しい本を読むと、わからないことを意識してわかろうと努力している間に、想像力とか直感、空想とか判断力というものが自然に生まれる、易しい本をさっと読むよりは、難しい本をつっかえながら読む方が価値がある(p25) ・バイリンガルになると、ものを考える力とか創造する力が衰える傾向にある(p34) ・デジタル機器は速さと簡便さが売りである、想像力を働かせることや思考を巡らせることとは相反する(p72) ・多読する人は年を取ってから不活発になりがちなので、むしろ読書を抑えて自分の考えの出るのを待つ必要がある(p82) ・易しすぎたり面白すぎるよりは、むしろとっつきにくい、愛想の悪い本というのが長い目で見れば読者にとっては役に立つ(p98) 2012年5月26日作成

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2011/09/28

デジタルで便利になるがいい面ばかりではない。 便利になって失うものとして想像力や思考力がつかないのでは? とのこと。 繊細な表現のある日本語もだんだんと表面的な言葉だけになっていく懸念もある。 対談にあった「携帯電話やテレビ、パソコンとばかり向き合う生活をしていると感覚的な表...

デジタルで便利になるがいい面ばかりではない。 便利になって失うものとして想像力や思考力がつかないのでは? とのこと。 繊細な表現のある日本語もだんだんと表面的な言葉だけになっていく懸念もある。 対談にあった「携帯電話やテレビ、パソコンとばかり向き合う生活をしていると感覚的な表現だけで全てを済ませてしまうようになる傾向がある」には納得出来る。

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2011/02/08

「五体の散歩は頭脳の散歩」…足だけでなく、手・目・耳・口もお散歩せよ。 「愛想の悪い本に出会いなさい」…努力したのに読み切れなかった本が、読み切れた時! 「日本人に必要な演劇的な発想」…音読大事。

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2014/02/15

デジタル教科書は要らないかどうかは不明だが、読書を本ですることは重要。 とにかく本を読んでも知識だけじゃダメだから経験に変える。 日本の素読は哲学的。 わからないものを勉強するだけでなく書いてみる。 実利的なことだけを追って勉強していても仕方がない。世間と全然関係ないことを勉強す...

デジタル教科書は要らないかどうかは不明だが、読書を本ですることは重要。 とにかく本を読んでも知識だけじゃダメだから経験に変える。 日本の素読は哲学的。 わからないものを勉強するだけでなく書いてみる。 実利的なことだけを追って勉強していても仕方がない。世間と全然関係ないことを勉強することによって得るものがある。 人生なんてそんなもの。外山先生が凄いのは大学での勉強を当時敵国言語だった英文科にしたこと。 文化人類学は戦後アメリカが生んだ一番良い文系学問。 国会図書館が勉強するには一番良い。 哲学はだいたい黙思から出てきた。一人で考えることが重要。

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2010/11/15

国民読書年記念講演会での田中眞紀子さんと外山滋比古さんの対談とその後の取材内容で構成されている一冊。サブタイトルに「デジタル教科書はいらない」とあり、導入により「先生と生徒の間を大きく隔てる」「想像力や思考力をめぐらすことには貢献しない」と言われているが、本質はデジタル教科書云々...

国民読書年記念講演会での田中眞紀子さんと外山滋比古さんの対談とその後の取材内容で構成されている一冊。サブタイトルに「デジタル教科書はいらない」とあり、導入により「先生と生徒の間を大きく隔てる」「想像力や思考力をめぐらすことには貢献しない」と言われているが、本質はデジタル教科書云々よりも現代の教育方法自体に警鐘を鳴らされているように感じた。本書で指摘されている問題を今後にどう活かし、どう解決していくべきか、考えさせられる良書でした。

Posted byブクログ