新版 古寺巡礼奈良(6) の商品レビュー
コンパクトだが、豊富なカラー図版で主要な建築や寺宝を網羅し、室生寺の歴史、文化財、室生寺を扱う文学等概略をバランスよく掲載。室生寺拝観に当たって有益だった。 巻頭エッセイは歌人河野裕子。本書刊行の年の2月と3月に室生寺を訪れた時のことを記す。この年の8月、本書の刊行前に亡くなった...
コンパクトだが、豊富なカラー図版で主要な建築や寺宝を網羅し、室生寺の歴史、文化財、室生寺を扱う文学等概略をバランスよく掲載。室生寺拝観に当たって有益だった。 巻頭エッセイは歌人河野裕子。本書刊行の年の2月と3月に室生寺を訪れた時のことを記す。この年の8月、本書の刊行前に亡くなった。再発した乳がんの化学療法中、2月は夫君とともに、その10日後やむにやまれぬ思いに突き動かされて1人で「ただただ祈るためだけに」再訪した。その10年前(台風で損壊した五重塔の修復後)にも訪れたことがある。その時々で受ける印象は異なる。「人間には生涯にただ一度という出会いというものがあり」最後の訪問が正にそれで、「この寺に来ることはもうできず水音の室生川の橋ふり向かず渡る」という思いが染み渡る。 ほかに、室生寺座主網代智等師による生命にまつわるメッセージ、逵日出典「室生寺の歴史」、千田稔「霊地室生」、蔵田敏明「室生寺文学散歩」、真鍋俊照「室生寺と宝珠」、井上一稔「室生寺金堂本尊像の由来」、松田敏行(五重塔の修復に監督として従事)「室生寺五重塔 その技と美」、白幡洋三郎「優美な聖域 室生寺境内の花と木」、巻末に年表、年中行事、逸聞(室生の四大門)、各種地図を収載。
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