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馬を買いに来た男 の商品レビュー

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2011/02/25

 アロー戦争に必要な荷馬4000頭余りを調達するため、幕末の日本に降り立ったイギリス陸軍将校エドワード・バーリングトン・ド・フォンブランク。本書は彼の手記から、その8ヶ月ほどとなる日本滞在を部分訳したものである。  近代以前の日本馬と言えば、西洋の軍用種はもとより中国のものと比...

 アロー戦争に必要な荷馬4000頭余りを調達するため、幕末の日本に降り立ったイギリス陸軍将校エドワード・バーリングトン・ド・フォンブランク。本書は彼の手記から、その8ヶ月ほどとなる日本滞在を部分訳したものである。  近代以前の日本馬と言えば、西洋の軍用種はもとより中国のものと比べても質が劣っていたというのが定説だ。またかのナポレオン3世によるアラブ馬贈呈エピソードが示すように、馬匹改良への努力も皆無ではないにしろ、少なかったとされる。実際本書内でも、筆者は日本馬の体躯の小ささを指摘する。そのため、個人的には、補給線の長大さという現実的問題からの出来事とはいえ、日本から馬を調達しようという試みがあったという事実は新鮮であった。さらに筆者は日本の荷鞍のできの良さに言及し、「日本馬は重い荷物を運ぶのに適している」と言い切ってもいるのだ。もっともこの荷鞍は、肝心の中国大陸では使われなかったようなのだが。  そのほか、生麦事や和宮のお輿入れ行列との遭遇、桜田門外の変など日本史に残る大事件との遭遇についても筆者は筆をふるっており、当時の外国人達の受け取り方がなかなか面白い。また多くの幕府役人との折衝や馬の買い付けを通して、日本人の民族性への鋭い観察を行っている。日本の古い美術品へは西洋の一級品と並ぶ評価を下しているし、瀬戸内海の美しさには特に力を入れて語る。とりわけ日本好きでも、日本嫌いでもない外国人によるこうした記録は、案外珍しい者なのかもしれない。幕末の世相を知る史料としても、なかなか興味は尽きないものである。  

Posted byブクログ