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群衆と権力 新装版(上) の商品レビュー

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2024/01/13
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わたしは、かつて存在したあらゆる種類の群衆を把握し考察したいと思った。すなわち、政治的群衆や宗教的群衆、現代の群衆や歴史上の群衆など、要するのあらゆる文化ーー原始文化より東洋・西洋の最高度に発展した文化にいたるーーに見出される群衆。 と、冒頭の日本の読者へ、でカネッティは語っている。上巻だけで400ページを超える大著なので想像はしていたが、それを上回るスケールで圧倒された。成立に35年もかけた本というのは著者との対話という覚悟も必要になる。 彼の原体験、すなわちブルガリア生まれのスペイン系ユダヤ人として生まれ、イギリス、オーストリア、スイス、ドイツで教育を受け、ヒトラーの登場でイギリスに移住したということが大いに影響しているのだろう。 社会学、文化人類学、政治学のジャンルなのかと思うが、彼の文体は文学的でもあり、心に残る。とりわけ群衆のシンボルがとてもユニークで印象的。 火、雨、海、河、森などなど。 たとえば、 火 同じもの、広がるもの伝染し開くことを知らぬ、突発的である、多様なものである、破壊的である。火から逃走するのを常としていた群衆は、今では日に極めて強烈に惹きつけられているのを感じている。 海 海は多様であり動いており、しかも緊密に結合している海の多様性とはその波のことである。海には声がある、海を一切を法要するが、決して満たされる事は無い。海はその情緒の点では確かに不安定である。それにもかかわらず、海には神秘性がある、海や国境をもたのし多くの民族や領土に分割されることもない。どこにおいても通用する1つの言語を有している。 地球に存在するものを群衆に例えているわけだが、ストンと理解してしまった。深い考察だなあ。 国ごとの歴史的な群衆の特性もおもしろい。イギリス人は海と密接であり、海は支配されるために存在する。同じ海でもオランダ人は堤防で自らを海から守った。ドイツ人は森と軍隊で語れるとのこと。フランス人は革命、イタリア人は難しい(苦笑)。そしてユダヤ人は理解困難。それらから歴史で起きたことを語る。 生きのこることの意味についての考察も示唆深い。洋の東西の支配者、独裁者の事例は現代にも通用するのではないか。 とても知的な刺激を受けた。下巻も楽しみにしたい。が、また400ページと向き合う体力がないので少し置いてから。苦笑

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2022/07/12

タイトルから社会学、政治学、組織論的なものを感じるが、文化人類学の分野が一番近いか。ヒトラー批判に部分を想定していたが、その点はあまり多くない。全体的な感想は下巻の読了後に。ドイツ語の緻密な翻訳ということもあって多少の読みづらさを感じる。

Posted byブクログ

2016/01/31

個々人が直接的な他者との接触を避ける唯一の方法的形態である〈群衆〉について。人が集まってできる群衆のさまざまな類型と特徴について述べている。

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2014/11/05
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※このレビューにはネタバレを含みます

[ 内容 ] <上> あらゆる群衆と権力の位相・相貌を鮮烈なイメージにまとめ、支配のダイナミズムを究明する。 上巻は、群衆、群れと宗教、歴史における群衆、生きのこる者、ほか。 <下> 驚くべき学識と大胆な詩的想像力によって、あらゆる群衆と権力の位相・相貌を鮮烈なイメージにまとめ、支配のダイナミズムを究明する。 [ 目次 ] <上> <下> [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]

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2013/08/07
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※このレビューにはネタバレを含みます

ノーベル文学賞を受賞したエリアス・カネッティのライフワークとなる労作。 群衆と権力の研究に20年以上も費しただけあって上下巻かなりの大部で手ごわいですが、文体は明晰で、難しい哲学用語など一切使われていません(一方、こちらもノーベル文学賞の候補となったヘルマン・ブロッホの『群衆の心理』は哲学の素養がない自分などには言葉が難解で、現在積読中・・・) ル・ボンは"群衆"という言葉をかなりルーズに使用していたのに対し、カネッティははじめに群衆の詳細な分類を試みます。たとえばデモに代表されるような"開いた群衆"やある教会に礼拝に集う"閉じた群衆"など。 群衆の問題に切り込むカネッティの方法としては、フロイトの精神分析に似ているように感じました。ある意味、詩的直観に導かれて群衆の本質をえぐっている部分があって、このあたりはカネッティじゃないとマネできないでしょう。たとえば、森・砂・風などの自然物も人にとっては群衆のシンボルとなることを指摘しています。 ドイツ語・英語・スペイン語など多くの言語に堪能だった著者だけあって、参照される文献も古今東西にわたっています。 上巻でもっとも印象に残ったエピソードは、19世紀末にイギリスの植民地とされたアフリカのツォサ族に起こった悲劇。 首長が「食料である家畜・穀物を破壊すれば、死んだ兵士たちがよみがえり白人たちを追っ払ってくれる」とお触れをだし、人々はこの命令に従います。結果として、人々は飢餓に苦しみ60,000人以上が死んでしまい、ツォサ族の人口はそれまでの半分以下に激減してしまいます。 首長は依然として生きながらえ、カネッティはこの"生き残るもの"に権力者の本質を見出しています。

Posted byブクログ