群衆と権力 新装版(下) の商品レビュー
タイトルからヒトラー批判の書かなと思い読み始め、確かにその一面もあるが、広く権力および群衆批判の書である。なんとも訳文が読みづらいが、読み進めていくと、著者の広範な知識と多様な視点に圧倒される。エピローグにおいて、冷戦下の危機に対する警鐘を鳴らしている部分もあり、もし、カネッティ...
タイトルからヒトラー批判の書かなと思い読み始め、確かにその一面もあるが、広く権力および群衆批判の書である。なんとも訳文が読みづらいが、読み進めていくと、著者の広範な知識と多様な視点に圧倒される。エピローグにおいて、冷戦下の危機に対する警鐘を鳴らしている部分もあり、もし、カネッティが生きていて、続編を書くとしたら、数多くの権力者とあらゆる群衆が取り上げられていたであろう。人類の性を感じる。
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[ 内容 ] <上> あらゆる群衆と権力の位相・相貌を鮮烈なイメージにまとめ、支配のダイナミズムを究明する。 上巻は、群衆、群れと宗教、歴史における群衆、生きのこる者、ほか。 <下> 驚くべき学識と大胆な詩的想像力によって、あらゆる群衆と権力の位相・相貌を鮮烈なイメージにまとめ、支配のダイナミズムを究明する。 [ 目次 ] <上> <下> [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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ノーベル文学賞を受賞したエリアス・カネッティのライフワークとなる著作『群衆と権力』の下巻。 下巻では"命令"の考察からはじまり、カネッティの哲学でも重要なキーワードとなる"変身"も登場します。 『群衆と権力』という主題から、どうしても眉間に皺を寄せて読もうとしてしまいますが、各国の伝説や物語、歴史を楽しむゆとりがあってもいいかも。 実際、変身の項で紹介されているグルジア地方に伝わる魔法使いの親方と弟子の物語はエキサイティングな騙し合いのサスペンスといった味わい。インドのトゥグルク朝で栄華をきわめたムハンマド・トゥグルクのエピソードも、歴史を知らない自分にとって興味深く刺激的でした。 もちろん、カネッティが『群衆と権力』の問題を現代の直面する最も大きな危険と見なしていることは間違いありません。政治的なスローガンの投げ合いでしのぎを削っているのは日本だけでなく世界的な現象だと思いますが、その深層に本書は新たな光を当ててくれると思います。
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