生きようよ の商品レビュー
自分の心がささくれだっているな、と思うなら、細谷さんの本を読むといい。私たち人間にとって何がいちばん大事だったかを思い出させてくれるからだ。◆細谷亮太さんは、一九四八年生まれ、東北大学医学部を卒業後、聖路加国際病院に勤務。現在は、同病院副院長、および小児総合医療センター長。専門は...
自分の心がささくれだっているな、と思うなら、細谷さんの本を読むといい。私たち人間にとって何がいちばん大事だったかを思い出させてくれるからだ。◆細谷亮太さんは、一九四八年生まれ、東北大学医学部を卒業後、聖路加国際病院に勤務。現在は、同病院副院長、および小児総合医療センター長。専門は、一般小児科のほか、小児がん、小児のターミナルケア。エッセイを多数上梓しているほか、俳人としても活躍(巻末のプロフィールより)。◆細谷さんは言う。「死が避けられないものと感じて生きることは、充実した『いのち』を生きていくために大切なことだと感じます。死を前にしてさえ、思いやり、やさしさを忘れなかった子供たちを思い出すたびに、ぼくはきちんと生きなければならないと感じます」(「死」を忘れないで生きる)。死を思うことなく過ごす日常は、いつのまにか私たちをイライラさせ、不平不満でいっぱいにする。しかし、「死」を思えば、私たちはともかくも、今日も生きている。それは「有り難い」ことなのだ。◆映画「大丈夫。小児科医・細谷亮太のコトバ―」(伊勢真一監督)を、昨年の湯布院記録映画祭で観た。細谷さんの俳句をちりばめて作られているその映画にあるのは、TVのドキュメンタリーのように、効果を狙った筋書に当てはめられたものではなく、細谷さんと小児がんの子供たちの、ありのままの日々。YouTube で予告編が観られる。(K) 紫雲国語塾通信〈紫のゆかり〉2013年11月号掲載
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お年寄りが死ぬのは仕方ない、でも子どもは「死んじゃいけない人」。小児癌の医師として、たくさんの子どもを看取ってきた著者のエッセイ。大変読み易いので、子どもにも勧められる。亡くなった患者のエピソード、自伝、身辺雑記からなっている。 町医者として地元の尊敬を集めていた父と、夫を支え、...
お年寄りが死ぬのは仕方ない、でも子どもは「死んじゃいけない人」。小児癌の医師として、たくさんの子どもを看取ってきた著者のエッセイ。大変読み易いので、子どもにも勧められる。亡くなった患者のエピソード、自伝、身辺雑記からなっている。 町医者として地元の尊敬を集めていた父と、夫を支え、患者にも気を配り、子育ても上手かった母のもとすくすくと育ち、自然に囲まれ、遊びも勉強も人並み以上だった、と知ると、貧乏育ちでコンプレックスの多い私のような人間は「ケッ」と思ってしまいそうになるが、父が死んだらたいそうな借金があったとか、自身も友達に騙されて家を倍の値段で買うはめになった、とか、本当に育ちがよく、人を疑うことが嫌いな人柄がわかると、だんだん尊敬の念が沸いてくる。友達に騙され、借金したら、普通は我が身の不幸を嘆き、人間不信に陥るものだが、この人は騙すより騙される人間でありたい、借金は仕事を増やして返し、増やした仕事が新たな世界を広げてくれたと感謝している。 このタフネスは、どこから来るかというと、やはり、ゆったりとした深い愛情を持って育てられたから、というところに帰る。 自分の育ちは変えられないが、幼い人、若い人に対しては、著者の父母や著者自身のようにあらねば、と反省。
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