都市を区切る の商品レビュー
(*01) 専門誌、学会誌といった内容を持ち、およそ一般には向かない読み物であるが、具体的な研究成果の報告でもあり、面白く読めた。日本の中世都市史に関わる文献及び発掘調査を踏まえ、前半は「区切る」をテーマにした各地の都市の研究報告、中間に報告者を中心とした討議の記録、後半は地方毎...
(*01) 専門誌、学会誌といった内容を持ち、およそ一般には向かない読み物であるが、具体的な研究成果の報告でもあり、面白く読めた。日本の中世都市史に関わる文献及び発掘調査を踏まえ、前半は「区切る」をテーマにした各地の都市の研究報告、中間に報告者を中心とした討議の記録、後半は地方毎の発掘調査の最新動向を掲載している。部外者からすればこの分野の方法論もひとつひとつが勉強になるが、区切るという都市や集住の本質(*02)に迫るテーマにも意欲的に取り組まれている。 (*02) 結果として、普通は農村と対比される都市であり、あるいは定住的な集住に対しての移動的な集住状態である都市が想像されるが、両者を統合するような農村-都市像があぶり出されているように読んだ。都市化の前線としての区切りの遺構が、動的な境界の痕跡として現われるのが興味深い。宇都宮の参宮、小田原の惣構未然、鎌倉の道路側溝断面、加賀の掘溝と遺物、義満の北山開発、堺の環濠の編年、大和のムラ集住周辺における堀溝の遺構、博多の町割と方向性の変遷、丹後府中と橋立の曼荼羅図像の結界など、中世都市の多様とともに、農村を含めたダイナミックでいつも未完成な空間構成が読みとれる。
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