エネルギー(上) の商品レビュー
おそらく三井物産をモデルとして、日本の総合商社マンが中東諸国やサハリンで石油開発に関わる話です。金融や石油関係の専門用語が頻出するので、下巻の用語解説を見ながら読むことをお勧めします。 総合商社ではカントリーリスクをつねに考慮しながらビジネスを展開する必要があり、時には、一国のリ...
おそらく三井物産をモデルとして、日本の総合商社マンが中東諸国やサハリンで石油開発に関わる話です。金融や石油関係の専門用語が頻出するので、下巻の用語解説を見ながら読むことをお勧めします。 総合商社ではカントリーリスクをつねに考慮しながらビジネスを展開する必要があり、時には、一国のリーダーとの交渉の席に着くことさえあります。本書は、総合商社、とりわけ、エネルギー系商社を知ることができる良書であると思います。 以下に面白かった点を記録しておきます。 ①日本の航空会社は燃料価格のボラティリティを回避するために、金融機関が指南するスワップや先物取引を行っている。金融機関はアドバイス料として、取引料を航空会社から得ている。 ②石油公団(すでに解散されている)が湯水のごとく資金を使うことができたのは、石特会計と呼ばれる特別会計に豊富な財源を持っているからである。一般会計とは異なり、国会の審議や財務省の査定もないために、各省庁が独自の裁量権で資金を融通することができる。 ③総合商社は将来得られる輸出代金を担保として資金を貸し出すという「オイルスキーム」を使用することがある。 ④石油燃料を輸送するためのタンクを投資銀行が保有することがある。これは、顧客から預かった現物を担保にして、取引額を増やすためである。 ⑤従来、LNGの販売はCIFと呼ばれる方式で行われていた。これは、売主が輸送リスクを負担し、受け入れ基地まで責任を持つことである。対して、近年の主流となっているのが、FOBベースである。これは、買い手が自前のLNG船を用意して、商品の引渡しを行うものである。前者と比較して、後者の取引は商社の中間マージンが減るため、多くの日本の電力会社は自前のLNG船を保有している。 ⑥2度のオイルショックを経て、日本は石油依存度を下げるエネルギー政策を推進してきた。このため、日本領海を航行する内航船の生産が減少しており、国内の石油需要が逼迫した時には、供給が滞ってしまう。 ⑦日本は世界最大のLNG消費国であり、千代田工業と日揮がLNGプラント生産の7〜8割のシェアを占めている。 ⑧イラク原油は他の産油国と同様に、公式販売価格で売買されている。従って、どれだけの量を購入するかで入札できるか否かが決定する。 ⑨日本のユーザーは、長年、20年から25年にわたって必ず一定量を買い取るという「テイクオアペイ」という条件でLNGを購入してきた。巨額の初期投資が必要となるLNGプロジェクトを可能にするために、考え出されたものである。日本国内で電力市場は独占化しているため、割高でLNGを購入しても消費者に電気料金として転嫁することができた。
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サハリン、中東でのエネルギー調達に奔走する商社マンと官僚。日々変わる国際情勢の荒波に揉まれながらも社益・国益の為に世界各地を飛び回る熱い男たちの物語。
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専門用語がバンバン出てきて、読み流す部分が多い。金融・商社・エネルギー業界の雰囲気は十分すぎるほど伝わってくる。が、登場人物の心の機微は感じ取れない。我慢しながら読み続けたが、下巻は読まないつもり。
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サハリン2のお話。 まだまだ、中巻・下巻に続きますが、エネルギー業界の臨場感あるストーリーに引き込まれてます。
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黒木亮の本ということで上下巻を購入。上巻の終わり際に来ているが中巻があることが判明。 早いとこ買いに行こう。 内容は数年前のエネルギービジネスについて臨場感満載に記載されている。 途中だるい箇所もあるが、興味深い箇所が多く面白く読んでいる。
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エネルギー / 黒木亮 / (上巻 )2009/6、(下巻)2009/10(10/14) この本のきっかけ:以前雑誌で筆者の紹介があり気になっていた+職場でこの本の話題になった+現職に関連する本を検索している中、実務に直接役立つわけではないが、興味持った。 丁度原油価格が...
エネルギー / 黒木亮 / (上巻 )2009/6、(下巻)2009/10(10/14) この本のきっかけ:以前雑誌で筆者の紹介があり気になっていた+職場でこの本の話題になった+現職に関連する本を検索している中、実務に直接役立つわけではないが、興味持った。 丁度原油価格が100ドル超手前で除々に上昇していった頃だったので、この業界が熱気にあふれているのが良く分かった。 著者の観察力は鋭い。普段何気なくやっている仕事、しかも社内向けの仕事が、描写されていると、どこの会社も似たようなものかなと、普段幻滅気味の社内向けの仕事が、少しは理解・納得できるようになった。 また、仕事のスタイル等かっこいい。小生はこんなかっこいい仕事をしているのか、と感じた。それが、毎日のモチベーションにもなっている。 実務に役立つ・復習にもなる描写があった、また巻末の解説もうれしい。 主人公のように、単に仕事をすることだけでなく、今ある状態に対して自分の意見をキチンと言えるようになりたい。 四人組事件、内藤正久 Legal stabilization ロシアの法体系は複雑でPSAと矛盾する法律が多数あり、その改正が必要。 独占禁止法は、民間企業の石油・ガス施設を政府が定めた価格で第三者に使用させる権限を政府に与え、ガス供給法では、政府が定めた価格で民間のガスパイプライン会社が輸送するガスを第三者に強制的に売る権限を政府に与えている。 こうした法律矛盾は50近くある。 プロジェクト遂行のための購入するし機材はロシアのVATが免除される取り決めにも関わらず、サハリン州政府当局は課税している。 オイルスキーム 商社がSPCに出資して、JBICと市中で協融し、SPCからイランに転貸する。資金使途はプロジェクト資金。 FA選定 プロポーざる(提案書) リテイナー・フィー(月ぎめ報酬)とファイナンス完了時のサクセス・フィー(成功報酬)の組み合わせが一般的、特定の出来事(例、生産開始)が起こったときに一定額を払うマイルストーン・フィーを入れるところもある。 エクエーター原則 南北にバランスの取れた開発のための世界標準を目指すという意味をこめて。 金融機関が環境NGOにがんがんやられて、こりゃもうかなわwんということで結んだ終戦協定みたいなもの、過去CITIがやられて、南米の天然ガス・パイプラインプロジェクトへの融資を撤回した経緯あり。 プリゴロドノエ:日露戦争の古戦場 PSA:売上の6%がロイヤルティ(地下資源使用料)としてロシア政府に支払われ、それ以外は投資金額が全額回収され、年率17.5%のIRRを達成してはじめて、ロシア政府とスポンサーに利益が配分される。 インザマネー:オプション行使すれば利益が出る状態。 バイバック:生産開始後の一定期間で開発作業に投下した資金、資金の金利、一定率の投資利潤を生産された原油で回収。、原油生産が目標に達したない場合、ペナルティー、コスト尾オーバーランは認められない。回収が終わるか、回収す期間が終わると、役割終了。 LNGヘッジ取引:数ヶ月先の受け渡しでLNGをスポット購入し、その価格が、受け渡し月のヘンリーハブ価格 x 0.8というふうになった場合、購入代金を確定するため、NYMEXで先物を買う。 スポット取引が増えているから、ヘッジのいろいろなニーズが出てくる。 テイクオアペイ:巨額な投資を必要とするLNGプロジェクトを可能にするために考え出された契約。 輸送中のボイルオフが減少して、積み荷量が減るという欠点があり、仕向け値が限定。欧州、米州、極東の三極構造だった。が、LNG船の性能向上により、ボイルオフ問題改善。仕向け値変更条項がいらられるようになった。コモディティー化。 益出し:行使される可能性の高いぷションを打って、高額なオプション料をもらうこと。
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※このレビューにはネタバレを含みます
上中下合わせて1,300ページほどの長編であったが、二日で読み切ってしまうくらい面白かった。 今の仕事に関係していることも多く、背景がしっかり描写されていたので、読書というよりも勉強になったと思う。 主に商社に勤務する主人公がメインであったので、もし商社に就職していたら、今はどんな仕事をしていただろうとか、エネルギーや外交に関わる公務員ならばどうだっただろうなど、色々なことを考えてしまった。 翻って今の自分を見ると、大した仕事はしておらず、就職前のモチベーションがどこかに行ってしまいそうになったこともあった。だがよく考えれば、まだ就職して半年も経たない新入社員、出来ることは本当に限られている。焦らずゆっくり、しっかり仕事をしていけば、今作に扱われているような大きなプロジェクトに携わる日が来る。気がする
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黒木さんの小説は細部まで徹底的に描写される。シンガポールでもロンドンでもパレルモでも。街並みや街路のたたずまいだけでなく主人公たちが大事な河井をかわすレストラン、バー、ホテルまで。改めて取材に行ったのかもしれないが、商社マンとして訪れた街のレストランをここまで描きこんでいるとした...
黒木さんの小説は細部まで徹底的に描写される。シンガポールでもロンドンでもパレルモでも。街並みや街路のたたずまいだけでなく主人公たちが大事な河井をかわすレストラン、バー、ホテルまで。改めて取材に行ったのかもしれないが、商社マンとして訪れた街のレストランをここまで描きこんでいるとしたら、相当な執着心だ。 そこまでこだわる黒木さんだから、ストーリーも徹底的に面白い。エネルギーやファイナンスにまつわる専門的な話も出てくるが、一定のリズムで読み進めさせてくれる。環境NGOのプレゼンテーションですらも見てきたように克明に描き出す熱意はどこから生まれてくるのだろう。物語は商社マン二人とエネルギーデリバティブディーラーが織りなす10年にも渡る群像劇。3人は決して予定調和的に交わることはない。 2006年、シェル石油や三井物産が進めていた石油・LNGプロジェクト「サハリン2」は、ロシアプーチン政権の圧力に屈し、ガスプロムに株式の過半数を譲渡することに合意した。 同じ2006年、国際石油開発はイランへの制裁姿勢を強める米国の要求を受け入れ、アザデガン油田の参加権益の65%とオペレータシップをイラン企業に譲渡した。 個々の報道はそれだけ見ていれば日本のエネルギー調達が断たれたたかのような悲観的な印象を受ける。しかしそれぞれに背景があり、重ねられてきた交渉史があり、時代に応じた思惑の変化がある。結局のところサハリン2のLNGは日本に輸出されており、原発が止まった日本のエネルギーはLNGが支えている訳で、商社マンたちが重ねてきた歴史は決して無駄ではなかったことがわかる。
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日経ビジネスオンライン上で2006年4月より2年がかりで連載された。今でもバックナンバーが有るのでなんと買わなくても読めたらしい。 1997年から2007年にかけてのサハリン2の天然ガス開発、イランのアザデガン油田開発と撤退、中航油シンガポールの陳久霖事件の3つの物語がそれぞれ独...
日経ビジネスオンライン上で2006年4月より2年がかりで連載された。今でもバックナンバーが有るのでなんと買わなくても読めたらしい。 1997年から2007年にかけてのサハリン2の天然ガス開発、イランのアザデガン油田開発と撤退、中航油シンガポールの陳久霖事件の3つの物語がそれぞれ独立して話がすすむが総体としてこの間のエネルギー資源の姿を表している。幕間にアメリカのイラク侵攻、911、プーチンとガスプロムなど実話が絡み、フィクションか実際のモデルがあったのかわからない。 サハリン2は現在稼働を始めており、アザデガンからはアメリカの制裁を受け日本は撤退し中国が権益を獲得。そして服役を終えた陳久霖は復活したらしい。 この話は07年までだがその後、08年の原油高騰からのリーマンショック、同時期にバイオエタノールが脚光を浴び穀物価格が高騰、直近のヨーロッパのフィードインタリフによる太陽光発電の増加と福島原発事故、そしてシェールガス革命と現実の物語は続いている。 計1300ページとボリュームたっぷりで中身も濃い。
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イランの油田開発をめぐるトーニチ(モデル:トーメン)と通産省の動き、サハリンLNGプロジェクトをめぐる五井商事(モデル:三菱商事)の動きを元にした小説。上巻は入札までの段階である。 生々しく書かれており、臨場感が非常にある。
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