食の職 の商品レビュー
迫川尚子『食の職 小さなお店ベルクの発想』を読む。 新宿東口のビヤ&カフェ、ベルク本の第二弾。 迫川はフォトグラファーであり、ベルクの副店長である。 自身も認めているように本書の白眉は 「2章 職人さんと「味」でつながる~3大職人の仕事術」である。 迫川は三人の職人にインタビュ...
迫川尚子『食の職 小さなお店ベルクの発想』を読む。 新宿東口のビヤ&カフェ、ベルク本の第二弾。 迫川はフォトグラファーであり、ベルクの副店長である。 自身も認めているように本書の白眉は 「2章 職人さんと「味」でつながる~3大職人の仕事術」である。 迫川は三人の職人にインタビューを試みる。 コーヒー職人、久野富雄。 ソーセージ職人、河野仲友。 パン職人、高橋康弘。 いずれも迫川が探し求め、出会った職人であり、 ベルクの味を創り出す戦友である。 久野、河野、高橋に共通するのは職人の「狂気」である。 現代ビジネス社会の神話である効率性、利益だけにこだわらぬ 矜持と技術である。 客に自分が信じた味を安全に届けるためには、 誰もが支配されている資本主義のルールから いっとき外れることもいとわない。 無論、利がなければ商売として成立しないし、継続もできない。 けれど、まず、己の仕事はなにゆえ存在を許されるのか、 なにを追究することが自分のためであると同時に 世のためになるのか、 三人は背骨のような思考・行動から決して逃げることがない。 僕たち生活者が ただただ安価な品物、サービスだけを追い求めていけば、 こうした職人たちの生きる道はさらに狭くなる。 うまくて、気分がよくて、 なおかつ決して高くはない品物、サービスを 自分が選択し購入し評価することが そうした職人たちの仕事を具体的に支持することになる。 小さく縮んでいくだけの社会には夢がない。 ときには身体をストレッチして 筋を伸ばし、血行を良くするように、 日々の小さな行動から自分の暮らしを縮ませぬ 創意工夫をしてみたい。 迫川の書は三人の職人のインタビューを核に そうした行動への呼びかけとヒントに満ちている。 小さな個人店ベルクが、この時代になぜ元気に満ちていて、 15坪の店に日々1,500人の客を集めるのか。 その秘密の一端を読み解くことができる。 (文中敬称略)
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