スターリンの対日情報工作 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
情報の昭和史という観点から、ゾルゲ事件、ソ連クリヴィツキーの情報活動、トルストイの暗号解読、日本人スパイ「エコノミスト」の活動を追ったもの。文句なく面白い。この時代の日本軍・日本政府の防諜活動の拙劣さは、数多く述べられてきたところであるが、本書ではソ連の諜報活動の凄まじさ(独駐日大使や外相も真っ青)がよくわかる。日本の外交能力の低さ、情報取得能力の拙劣さは、戦後もさして変わっていないだろう。蚊帳の外に置かれた米中国交回復や大韓航空機撃墜事件における自衛隊の情報管理のお粗末さは「同盟漂流」にもあるところだ。
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●:引用 ●スターリンの対日工作をめぐっては、ゾルゲの諜報活動がもっともよく知られていて、厖大な研究が積み重ねられている。しかし、スターリンの側では、特に1941年6月の独ソ開戦直後に、日本がソ連への武力攻撃に踏み切るかどうかを判断するに際して、ゾルゲの情報だけに全面的に依存して...
●:引用 ●スターリンの対日工作をめぐっては、ゾルゲの諜報活動がもっともよく知られていて、厖大な研究が積み重ねられている。しかし、スターリンの側では、特に1941年6月の独ソ開戦直後に、日本がソ連への武力攻撃に踏み切るかどうかを判断するに際して、ゾルゲの情報だけに全面的に依存していたとは考えられない。(略)おそらくスターリンは、ゾルゲや「エコノミスト」などの複数の情報を慎重に比較検討した上で、極東ソ連軍の西方への移動を決断したのであろう。 ●それにしても、当時の日本の国家機密が、日独防共協定をめぐるベルリン駐在武官大島浩とナチ党の外交担当者であったリッペントロップとの秘密交渉の一切から始まって、対ソ戦争開始をさしあたり見送った1941年7月2日と9月6日の御前会議の議事にいたるまで、すべてソ連に、最終的にはスターリンに筒抜けであったことに、あらためて驚かされる。 ●当時の日本の情報管理が拙劣であったことも、同じように特筆大書されるべきであろう。当時、「防諜」ということが叫ばれ、街角のいたるところに、スパイは貴方のすぐそばにいるというようなことを書いたポスターが貼ってあったと記憶しているが、この「防諜」、すなわち国家の機密情報の管理をめぐって、当時の日本はいたるところ穴だらけであった。
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◆その1 (11月11日記述)◆ 「クリヴィツキー」という名前を見たらほおっておけないのが、逢坂剛症候群というか、逢坂剛ファンというか、そう、彼はその名もずばり『クリヴィツキー症候群』(1990年)という小説で、私たちの脳裏に旧ソ連のスパイのウオルター・ゲルマノヴィッチ・クリヴィ...
◆その1 (11月11日記述)◆ 「クリヴィツキー」という名前を見たらほおっておけないのが、逢坂剛症候群というか、逢坂剛ファンというか、そう、彼はその名もずばり『クリヴィツキー症候群』(1990年)という小説で、私たちの脳裏に旧ソ連のスパイのウオルター・ゲルマノヴィッチ・クリヴィツキーこと本名サミュエル・ギンスブルクのことを深く刻み込んだのですが、こうして律義に読んでいる本の引用本とか参考文献や出典やなんかまでさかのぼっての読書を実行して来て早や幾年月。 狭く深くもいいけれど、広く浅くじゃないこういう広く深くへの志向が、はたしてどこまで凡人の力量で出来るものやら心細いかぎりですが、すでに帆は張られ風に乗って走り始めたのだから、もうあとは地の果てまで行くしかないでしょう。 スパイといえば、遅れて来た映画・ドラマ愛好家として007ジェームズ・ボンドか0011ナポレオン・ソロしか知らない私ですが、いくらなんでもリヒャルト・ゾルゲの名前は思い浮かばないはずはなく、それもそのはずで篠田正浩監督の映画『スパイ・ゾルゲ』(2003年)は、なんとわが愛する上川隆也が仰天の特高役で出演しているものですから、もう何度見たかわかりません。 それに、関与というか共謀して死刑になった尾崎秀実の異母弟である尾崎秀樹は、私が敬愛してほとんどの著作を読んでいる作家・評論家ですが、『ゾルゲ事件 尾崎秀実の理想と挫折』(中公文庫)、『生きているユダ ゾルゲ事件 その戦後への証言』(角川文庫)、『上海 1930年』(岩波新書)など、この事件についてはやはりひとかたならない力の入れようです。 ◆その2 (11月15日記述)◆ 本書は、その著書『日独伊三国同盟の研究』(1975年)や、編著の『昭和史の軍部と政治』全5巻(1983年)などで著名な、わが国におけるこの方面の先駆的研究者にして重鎮の三宅正樹教授が、一般向けに書かれた『スターリン、ヒットラーと日ソ独伊連合構想』(2007年、朝日選書)の後さらによりコンパクトなかたちで、でも、いささかもインパクトを失わない精密さで、第二次世界大戦時のソ連による日本への情報介入のパノラマを鮮明に描かれたもので、けっして新書といっても侮れない読み応えがある本です。 ゾルゲもクリヴィツキーも鮮やかに登場しますが、もうひとり謎の日本人スパイ=エコノミストと呼ばれる人物のほうが大いに気になるところで興味津々ですが、考えてみればスパイという存在、まだまだ影が薄くなったということはなく、そういえばつい先日もアンナ・チャップマンというアメリカでソ連の美人スパイが逮捕されて国外追放になったというお話がありましたっけ。
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ゾルゲ、クリヴィツキなどのソ連の対日情報工作を分析し、スターリンの対日政策にそれが如何に影響したかを検証する。 ゾルゲに対するスターリンの評価の低さというのに意外さとその背景を読んだとき妙な納得を覚えた。 また、ソヴィエトが欲しかった情報とはなにかという指摘は、示唆的だった...
ゾルゲ、クリヴィツキなどのソ連の対日情報工作を分析し、スターリンの対日政策にそれが如何に影響したかを検証する。 ゾルゲに対するスターリンの評価の低さというのに意外さとその背景を読んだとき妙な納得を覚えた。 また、ソヴィエトが欲しかった情報とはなにかという指摘は、示唆的だった。
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トロツキーの最後はメキシコ。コミンテルンにやられた。 クリヴィツキーは、トロツキー同様、ユダヤ人であったが特にレーニンがソ連の死は意見を握っていた時代には、トロツキーをはじめとする多くのユダヤ人が共産党政権に協力していた。 大島とリッペントロップの極秘交渉はすべてソ連政府、スター...
トロツキーの最後はメキシコ。コミンテルンにやられた。 クリヴィツキーは、トロツキー同様、ユダヤ人であったが特にレーニンがソ連の死は意見を握っていた時代には、トロツキーをはじめとする多くのユダヤ人が共産党政権に協力していた。 大島とリッペントロップの極秘交渉はすべてソ連政府、スターリンに筒抜けであった。そこにはクリヴィツキー機関の暗躍があった。これだけの成果をあげたクリヴィツキーであったが、スターリンを裏切って亡命し、自分の知り得たスターリンの行動をすべて亡命先のアメリカで暴露したら生かしておけないということになった。 ゾルゲはソ連に見放された。
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