絵はがきにされた少年 の商品レビュー
自分の無知さ加減に恥じ入らざるを得ない。一方、ボランティアはそれをしようとした時点で優越感や満足感という差別化意識が生じるというけど、そういう自分をどのようなスタンスへもって行けばいいのか、それもまた難問だ。
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文庫化されたのでそちらを買おうか迷いつつ結局再び単行本で読み直してしまった…昔1度読んだ時よりも、いろいろまた感じ方が違うかなと思い。 以前読んだ時は救いようのない環境に哀しみしか残らなかった印象でしたが、いやいやいや…これはそういう内容ではなかったのだなと。 「お前は自分の事...
文庫化されたのでそちらを買おうか迷いつつ結局再び単行本で読み直してしまった…昔1度読んだ時よりも、いろいろまた感じ方が違うかなと思い。 以前読んだ時は救いようのない環境に哀しみしか残らなかった印象でしたが、いやいやいや…これはそういう内容ではなかったのだなと。 「お前は自分の事しか考えていない」に打ちのめされる思いでした。紛争や貧困に苦しむ環境を第三者が手を差し伸べるというよく見る公式は、普通に社会生活を送って居ても似たような場面に出くわすことがあります。弱者は強者の価値観によって作られるものなのだなと…他者を本当の意味で寄り添って救うという事が、いかに烏滸がましくて、とても難しい事なのだなと。 無関心で居ることがどれ程残酷なんだろうと。 やはり文庫版も購入して、書架に置いておきたいと思います。大事な事がここにはたくさん書かれています。
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貧しいアフリカの子どもをメディアで見ると、つい募金したくなる。その心理を、著者は事実を知らない故と言う。戦後の日本に、貧しくて可愛そうだと救援物資がバラ撒かれていたら、今のような発展があっただろうか。 無知は恐ろしい。 アフリカ諸国について書かれた本は少ないが、本書は著者が現地...
貧しいアフリカの子どもをメディアで見ると、つい募金したくなる。その心理を、著者は事実を知らない故と言う。戦後の日本に、貧しくて可愛そうだと救援物資がバラ撒かれていたら、今のような発展があっただろうか。 無知は恐ろしい。 アフリカ諸国について書かれた本は少ないが、本書は著者が現地で実際に体験したこと、現地の人々にインタビューしたことをもとに書かれたノンフィクションなので、貴重だと思う。 とは言え本書も2005年に書かれたものなので、今はまた事情が異なるかもしれない。何事も情報を鵜呑みにせず、きちんと精査して判断し、行動することが大切だと思った。 それにしても、アフリカはなんと未知なのだろう。
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「助けるということは無償のようでいて、実は助けられる側に暗に何らかの見返りを求めている。援助には目に見えない依存関係が隠れている。誰かがごく自然に「アフリカを救わなくては」と考えた途端に、その人はアフリカを完全に対等な相手とはみなさなくなる。」 アフリカに携わる者として、耳の痛...
「助けるということは無償のようでいて、実は助けられる側に暗に何らかの見返りを求めている。援助には目に見えない依存関係が隠れている。誰かがごく自然に「アフリカを救わなくては」と考えた途端に、その人はアフリカを完全に対等な相手とはみなさなくなる。」 アフリカに携わる者として、耳の痛い言葉でした。読後、何度も何度も反芻しています。 とはいえ、自分がアフリカに関わりを持ちたいと思うようになったのは「助けたい」気持ちが先行していたのは疑いようもない事実。現地に住んでみて、実際に目にした貧困。そんな中、想像していたよりはかなり楽しそうに、私よりもはるかに幸せそうに暮らしていた人たち。 それを目にしてもなお、解釈することを拒んで、「自分のために」助けたいと言い続けている自分が、とてもナイーヴな人間に思えました。 もう少し、じっくり、身の振りを考えよう。
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アフリカで新聞記者の特派員だった著者による、アフリカ考察。主に現地人と入植者の確執や人種差別問題などを、現地人や白人系アフリカ人にインタビューしながらノンフィクションにしたもの。特に南アフリカは本当に複雑な問題を抱えているな、と改めて暗い気持ちになった。 1994年のルワンダの大...
アフリカで新聞記者の特派員だった著者による、アフリカ考察。主に現地人と入植者の確執や人種差別問題などを、現地人や白人系アフリカ人にインタビューしながらノンフィクションにしたもの。特に南アフリカは本当に複雑な問題を抱えているな、と改めて暗い気持ちになった。 1994年のルワンダの大虐殺のことも書いてある。一番興味深かったのは、キューバ革命で英雄になったチェ・ゲバラがアフリカ各地で革命を起こそうとしていたというところ。彼がキューバで成功した後、アフリカも変えようとしたが、現地人がイマイチ乗り気にならず、計画はあきらめて失意のうちに南米に戻ったというのを初めて知った。また、援助されることに対するアフリカ人の意識も、なるほどと思いながら読んだ。 学ぶことが多いが、正直なところ、読んでいて気持ちが良いとは言えない一冊。
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著者は、毎日新聞記者のジャーナリスト。本書は、1995~2001年のヨハネスブルグ特派員時代の取材をもとにしたノンフィクション短編11篇が収められ、2005年の開高健ノンフィクション賞を受賞している。 取り上げられたテーマは、表題作の、子供の頃に英国人によって撮影された写真が絵は...
著者は、毎日新聞記者のジャーナリスト。本書は、1995~2001年のヨハネスブルグ特派員時代の取材をもとにしたノンフィクション短編11篇が収められ、2005年の開高健ノンフィクション賞を受賞している。 取り上げられたテーマは、表題作の、子供の頃に英国人によって撮影された写真が絵はがきとして売られているのを見つけたレソトの教師、ピュリツァー賞受賞作品「ハゲワシと少女」を撮影した後自殺した南ア生まれの欧州人カメラマン、自分の妻が遭遇したカー・ジャック事件や日常的に発生する婦女暴行事件を引き起こす南アの黒人たち、アンゴラでダイヤモンド取引に係るカブリート(黒人と白人の混血)、コンゴでアフリカ革命を志したチェ・ゲバラと同時代に生きたルワンダの王族、ルワンダのツチ族とフツ族の争いの中で生き続けてきたフツ族の老人など、サブサハラの国々に生きる様々な人々である。 そして、メディアの多くは、そうした人々に、「ここにも一つのアフリカの悲劇がある」、「民族の不幸は終わらない」、「虐げられた者たちの叫びが、そこにあった」というような、わかりやすい“見出し”を付けたがるが、著者は、「やっかいなのは、はっきりと言い切れないことに、意味づけを求める人が結構いることだ。・・・だが、私はわからないことは胸につかえたままでいいではないか、と、思う方だ。現実を現実として放っておく方だ。答などないにしても、いずれは、それに一歩近づくときが来る、と思うからだ」と語り、ありきたりの一般論によって安直な結論を提示しようとはしておらず、そのスタンスに共感を覚える。 最後のフロンティアとして注目されるアフリカ、特にサブサハラについて、現在の表面上の姿は固より、整理された歴史でだけでは到底わからない側面を描いた、優れたノンフィクション作品と思う。 (2015年10月了)
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アフリカってアフリカとしてまとめて考えてしまいがちだったけど、少しだけそれぞれの国の形を浮かび上がらせてくれた。 旅行記と違って、実際に暮らして職業として取材した内容なのでしっかりしてる。何より、土地を歴史を文化を人の感性を理解しようという意志がしっかり伝わってくる。 文章は...
アフリカってアフリカとしてまとめて考えてしまいがちだったけど、少しだけそれぞれの国の形を浮かび上がらせてくれた。 旅行記と違って、実際に暮らして職業として取材した内容なのでしっかりしてる。何より、土地を歴史を文化を人の感性を理解しようという意志がしっかり伝わってくる。 文章はとりとめない気がしないでもないが、わかりやすいテーマ性やメッセージ性を付与するのが好きじゃないと文中で述べているので、まあ恣意的なんでしょう。 多くの不幸は無知と偏見から生まれる。つまりは無関心。納得。
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毎日新聞の記者である藤原氏による、アフリカを題材にしたエッセイ11編が収められている。 僕等はつい、アフリカという地域を一括りに考えてしまいがちだが、国や民族によってかなり気質の違いがあるようだ。実はゲバラが主導したコンゴ革命も、コンゴ人の意識があまりにも低いので、ルワンダ人が...
毎日新聞の記者である藤原氏による、アフリカを題材にしたエッセイ11編が収められている。 僕等はつい、アフリカという地域を一括りに考えてしまいがちだが、国や民族によってかなり気質の違いがあるようだ。実はゲバラが主導したコンゴ革命も、コンゴ人の意識があまりにも低いので、ルワンダ人が活躍したらしい。 そのルワンダの中でも王族を中心としたツチ族と、民衆を中心としたフツ族が対立し、悲惨な内戦を繰り返している。民族間の違いについて、地元の人はあまり多くを語らないが、きっと何か歴史的な背景があるのだろう。 本書では貧しい国や地域に対しての、援助の在り方にも触れている。受け取る側にも尊厳があり、まずは相手を知る事が重要なのだそうだ。 マスコミに切り取られた断片のような報道を鵜呑みにせず、自分なりの方法で調べ理解する事が大切なのだと思った。
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ハゲワシの前でうずくまる少女の写真を撮ったフォトジャーナリストの自殺の背景や、アフリカ南部の国々を歩いた著者の、とても興味深い一冊でした。
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第3回開高健ノンフィクション大賞受賞作。アフリカ駐在記者の筆者による本作。知識として知らない事象も多く、また、「アフリカの国」というものに対して何も知らない上に、なんとなく画一的なイメージをもってしまっている先進国の私に、ひとつの示唆を与えてくれるような内容。文章は読みやすく、読...
第3回開高健ノンフィクション大賞受賞作。アフリカ駐在記者の筆者による本作。知識として知らない事象も多く、また、「アフリカの国」というものに対して何も知らない上に、なんとなく画一的なイメージをもってしまっている先進国の私に、ひとつの示唆を与えてくれるような内容。文章は読みやすく、読んで何か残るという意味では◎。ルワンダ虐殺なんてつい最近のことなのに内容すらろくに知らかった自分が恥ずかしい。 著者もかいてあるように、タイトルもひとつのモデルケース。 「絵はがきにされた」少年(今は老人)は、決して被害者意識などなく、前向きに絵はがきになったことを喜んでいた。 慄然と存在する人種差別や貧困の複雑な実態に対し、先進国のマスコミに主導される勝手な先入観は、表面的な解釈のための自己満足でしかない。 ・・・ということを等身大の体験を通して伝えています。 >以下本文より引用 漠然と無数の人々への援助を考えるよりも、救うべき相手をまず知ることから始めなければならない。先進国の首脳会議などの会場を取り囲み、「貧困解消、貧富の格差の是正」を叫ぶ若者たちがいる。こうしたエネルギーを見ていると、一年でいいからアフリカに行って自分の暮らしを打ち立ててみたらいいと思う。一人のアフリカ人でもいい。自分が親しくなったたった一人でいい。貧しさから人を救い出す、人を向上させるということがどれほどのことで、どれほど自分自身を傷つけることなのか、きっとわかるはずだ。一人を終えたら二人、三人といけばいい。一般論を語るのはその後でいい。いや、経験してみれば、きっと、多くを語らなくなる。
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